2017年3月19日日曜日

冴えない彼女の育てかた12巻 感想

冴えない彼女の育てかた 12 (ファンタジア文庫)
丸戸 史明
KADOKAWA (2017-03-18)
売り上げランキング: 6
冴えカノ12巻読了…。何というか一つの時代が終わったような気分。次巻のGirls Side3と本編13巻で冴えカノも完結ということだが、今回の12巻が実質的な最終巻と言っても過言ではないだろう。英梨々と詩羽先輩、そして恵。3人のヒロインとの関係性が今回で確定した。11巻読了後の予想とは全然違う展開で、恵の家庭環境なんて一切触れられず、恋愛的な一波乱もなかったけど、冴えカノという作品を綺麗に締めるには満足のいく出来だったのではないかと思う。2chの本スレではあらすじ公表時点から散々に叩かれ、発売から一日経過した現在でも否定的な書き込みが相次いでいるが、中盤からラストまでの展開とか流石と言える出来に仕上がっていると思う。

ちなみに11巻読了後に冴えカノ12巻の展望と加藤恵の謎に関する考察という記事を書いたが、「冴えない彼女の育てかた 12巻」で検索すると、GoogleでもYahoo!でも最初のページにヒットするという謎の反響具合で驚いている。結局、12巻の予想は何一つ当たっていなかったわけだけど。「あろうことかデート当日にドタキャンし、向かった場所は——病室だった」という前情報と意味深な表紙が公開されたときは、相当なシリアス展開になるんじゃないかと思ったけど、それも全然当たっていなかった。

病院に運ばれたのは紅坂朱音。脳梗塞という結構危ない病気で、命に別状はないものの右手が自由に動かせない状況。偶然か運命か、マルズからの連絡を受けた倫也は恵とのデートをドタキャンして病院に向かう。そこで脱退組である英梨々と詩羽先輩、さらに詩羽先輩の担当編集にして紅坂朱音の同期である町田さんと遭遇する。紅坂が倒れたことで、英梨々と詩羽先輩が製作するフィールズ・クロニクルは深刻な危機に直面していた。それは英梨々と詩羽先輩のマネジメントをしながら、マルズと交渉できる紅朱企画サイドの人物がいないことであった。

そこで倫也は無謀な決断をする。それは紅坂朱音の代役として、blessing softwareを脱退した二人の天才クリエイターと一年ぶりのチームを再結成することであった。二人の考えをよく知る倫也だからこそ、ギリギリのラインでマルズの要求から二人の作品を守ることに倫也は成功する。そして今回はプロデューサーとして見事に英梨々と詩羽先輩を導いていく。7巻における二人の脱退で胸を痛めた者として、この辺りはかなり胸の熱くなる展開。そして倫也とのチーム再結成に当たって、詩羽先輩と英梨々も一つの決断をした様子。

一方、フィールズ・クロニクルのサポートに回る代償として、倫也は新生blessing softwareを一時的に離れる決断をする。デートのドタキャンに加えて、一時的とはいえサークル活動を放棄したことで、倫也と恵の間には再び溝が生まれていた。英梨々と詩羽先輩、二人と再びゲーム製作ができることに喜びを隠せない倫也だが、懐かしさと同時に恵がいない寂しさも感じていた。四人で活動していた頃のblessing softwareを思い出す倫也。そして倫也は恵にメールを送る。今の心情を包み隠さず文章にして、倫也はフィールズ・クロニクルの仕事の合間を縫ってメールを送り続ける。

そしてメールの受信音が倫也の部屋の前から鳴る。部屋の前には廊下でメールを読む恵の姿が。かつてのサークル活動に思いを馳せていたのは倫也だけではなかった。blessing softwareの再結成を一番に夢見ていたのは恵だった。そこに遅れて現れた英梨々と詩羽先輩。この二人こそblessing softwareを一番大事に思っていたかもしれない。すれ違ってしまった歯車が再び噛み合い始める。そして英梨々と恵が抱き合う表紙のシーン。このシーンは一言では言い表せないけど、英梨々と恵だけのシーンではなくて、後ろにいる詩羽先輩と倫也も含めた四人のシーンであるということが重要。作品の集大成と呼ぶに相応しいシーンで、アニメ化したら絶対に泣くと思う。さらに美智留、出海、伊織の新メンバーも合流して、新旧メンバー全員で週末のゲーム製作合宿に突入。ここで物語が完結しても良いんじゃないかというくらいの大団円。そしてエピローグではついに倫也が恵に…。

ということで恵ルート確定。英梨々と詩羽先輩は倫也を諦めることを決断。「倫也が側にいると描けない」と言っていた英梨々は倫也の側でも描けるようになった。一年前にblessing softwareが解散したのは英梨々が原因だったけど、また再結成することができたのも英梨々の決断が鍵になったと思う。詩羽先輩が英梨々に何を話したのかはGirls Side3で補完されるんだろうけど、詩羽先輩が全てを悟って倫也を諦めるシーンはCLANNAD18話「逆転の秘策」を思い出した。いつも思うけど、失恋した女の子の方がルート確定した女の子より可愛く見えてくる。CLANNADの杏然り、WHITE ALBUM2の雪菜然り。Girls Side3は間違いなく泣ける出来に仕上がりそう。

2017年2月6日月曜日

中小企業診断士受験記録Part1

中小企業診断士の受験勉強を始めて半年以上が経過。1次試験7科目の内、企業経営理論、財務・会計、運営管理、経済学・経済政策の4科目まで一通り学習した。使用している教材はTACのスピードテキストとスピード問題集。中小企業診断士の受験勉強に関するブログ記事は多数あるが、ほぼ全てのブログがTACをオススメしているので間違いないだろう。スピードと冠する割には小さい文字で1科目300ページ以上の厚さなのが気に食わないところではあるが。
7科目の中でも重要なのが企業経営理論、財務・会計、運営管理の3科目である。2次試験は組織、マーケティング・流通、生産・技術、財務・会計の4科目から構成されており、上記3科目の内容に該当する。この3科目で一番好きなのは企業経営理論。企業経営理論は経営戦略、組織論、マーケティングから構成されるが、経営戦略に興味があるから中小企業診断士を目指していると言っても過言ではない。

中小企業診断士という資格に興味を持ったのは社会人2年目の秋頃だった。仕事に余裕が出てきて、何か資格でも取ろうかと考えたように記憶している。ただし、そもそも経営戦略に興味を持ったのは恐らく大学2年生の春頃になるのではないか。それは最初のフィールドワークで瀬戸田町のレモン生産について調査したときのことである。瀬戸内海には柑橘栽培に適した島がいくつもあるが、その中で何故か瀬戸田町はレモン栽培に特化した島であった。日本のレモン生産の半分は瀬戸田町が占めており、地理的な要因をはるかに上回る何らかの要因が働いていた。農家や農協への聞き取り調査で分かったことを当時は曖昧な表現で論文にまとめていたが、今思えばこれこそが経営戦略であろう。そして経営戦略とは企業の戦略であり、国家の戦略にも通じるところがある。近現代史における列強の戦略、現代の国際関係における国家の戦略なんかを常日頃から考えている歴史好き、地理好きには相性が良い。

ということで、経営戦略に関してはかなり自信有。昨年のゴールデンウィークに経営戦略全史という非常に厚い本を読んで、経営戦略論の歴史について一通り頭に入っていることも大きいかもしれない。マーケティングも結構好き。組織論は普通…。企業経営理論の勉強を終えて、10月から本格的に受験勉強を開始。まずは財務・会計から。受験生が最も苦手とする科目と聞いていたので戦々恐々としていたが、意外にも得意科目であることが判明。株取引に興味がある人は財務論は好きになるはず。ただし、会計は正直つまらない。財務・会計を3週間で片付けた一方、割と興味を持っていた運営管理に苦戦。商圏分析は完全に立地論で面白かったけど、他は覚える用語が多すぎて死ぬ。そして経済学・経済政策の勉強が本日完了。これも財務・会計と同じく3週間で終わった。何だろう、数字とか図表が出てくるタイプの科目が得意なのかもしれない。言い換えれば、暗記科目が苦手なのか。

残りは経営情報システム、経営法務、中小企業経営・中小企業政策の3科目。まずは中小企業経営・中小企業政策に着手する予定。何故かと言えば、一番興味を持てる科目だから。企業経営理論と同じくらいモチベーション高い。反対に経営情報システムと経営法務は心が折れそうで怖い。情報系と法律系は昔から苦手なんだよな…。ただし、この3科目は3月末を目標に終えたいところ。そして4月からは7科目の復習と1次試験の過去問に突入。7月初旬の1次試験模試を受けて、夏以降は2次試験の勉強に乗り出したい。2か月で3科目は詰め込み過ぎな気もするが、このスケジュールじゃないと2次試験に間に合わない気がする。

2017年1月28日土曜日

2016年アニメランキング

1位 この素晴らしい世界に祝福を!
異世界を舞台にしたコメディ作品。不慮の事故で死んだ佐藤和真は女神アクアから魔王討伐のために異世界への転生を持ちかけられる。アクアを道連れに冒険者として異世界に転生した和真であったが、アクアは運と知性が極端に低い駄目神で、和真は日々の生活費にも困窮する有様であった。やがてアークウィザードのめぐみん、クルセイダーのダクネスを仲間に加えた和真であったが、彼女たちもアクアに匹敵するトラブルメーカーで、和真の異世界生活は波乱に満ちたものとなっていく。

原作絵はクオリティ高いのにどうしてこうなった…という感じの残念な作画だが、作画崩壊が気にならないくらいダントツに面白い。最近急増している異世界系の作品の中では個人的に最高評価。ジャンルとしては異世界系だけど中身は日常系に近い。とにかく会話のテンポが良く、あっという間に全話視聴していた。これはキャラクター設定の賜物だろう。特にめぐみんのパートが素晴らしい。シリアス要素が皆無に等しいため、個人的な趣味からは結構離れているが、2016年では一番のヒット作。

2位 Re:ゼロから始める異世界生活
こちらも異世界ファンタジー。引きこもりの高校生ナツキスバルは突如として異世界に召喚され、命の危機をハーフエルフのエミリアに救われる。エミリアの物探しに協力するスバルであったが、何者かの襲撃によって2人は殺されてしまう。しかし、殺されたはずのスバルは生き返り、異世界に召喚された時点まで時間が巻き戻っていることに気付く。死に戻りというタイムリープ能力を得たスバルは度重なる死に直面しながら、エミリアを救うため運命に抗っていく。

恐らく2016年の覇権アニメ。初回の1時間で上手く視聴者の心を掴んだと思う。毎週続きの気になる終わり方をしていたのが良かった。ただし、タイムリープは同じ場面を繰り返すことで間延びしたストーリーになってしまうのが弱点。リゼロもロズワール邸の部分で少しダラダラしている印象を受けた。そして主人公スバルに全く好感を持てないのが個人的に残念だった。ネットで連日繰り広げられたエミリアとレムのヒロイン論争が個人的には一番楽しかったかも。ちなみに自分はエミリア派。

3位 響け!ユーフォニアム2
吹奏楽部を舞台にした青春作品。関西大会出場を勝ち取った北宇治高校吹奏楽部は夏休みも熱心に練習を重ねていた。しかし、去年退部した2年生の傘木希美が部への復帰を求めて姿を見せると、同じく2年生でオーボエの鎧塚みぞれが変調を来すようになる。副部長の田中あすかは関西大会を優先して希美を切り捨てるが、あすかの態度に疑問を抱いた久美子は問題の核心に迫ろうとする。

これぞ京都アニメーションというクオリティの高さが脚本でも作画でも発揮されていた。作画レベルはもしかすると氷菓を超えていたかもしれない。ここ女子校じゃなくて共学だよね…と感じるくらい女子同士の関係がフィーチャーされていたのは1期同様であったが、繊細でリアルな人間関係が描けていたと思う。だからこそ恋愛をテーマにした作品でなかったのが惜しい。麗奈とか絶対恋愛映えするのに。いや、麗奈は既に恋愛しているんだけど…。何かが違う。秒速5センチメートルやtrue tearsに並ぶ名作になっていたかもしれないと思うと、良作であっただけに残念。次の京都アニメーション作品に期待。

2016年12月10日土曜日

京都旅行記録

11月末日と12月初日、晩秋の京都に紅葉を見に行ってきた。1泊2日で初日は東山、2日目は長岡京を中心に周った。大学4年生のときも紅葉の時期に京都を訪れたが、前回は東山、嵐山、鞍馬を周った記憶がある。初日の東山は南禅寺、哲学の道、永観堂、真如堂、金戒光明寺という順番で前回のルートと完全に一致。哲学の道に野良猫が住み着いているところまで一致。ただし、紅葉のグレードは前回の方が高かった。見頃を一週間過ぎてしまった感じで、鮮やかな紅葉は僅かに残っているのみ。京都でも特に紅葉で有名な寺社が集中するのが東山だが、紅葉シーズンも終盤のためか予想より空いていた印象だった。


 
 
朝5時半起きで埼玉を出発したため、東山を見終わっても昼過ぎという時間帯。最近は朝まったりして昼過ぎから活動する旅行が多かったので、この時点で結構疲れてしまっていたが、時間も余っているので東福寺に向かう。前回は東福寺が一番豪華な紅葉だと思ったが、シーズンを若干過ぎたため今回の東福寺はやや微妙。さらに前日の睡眠時間が4時間ということもあり、ここで疲労がピークに達したため、一度ホテルに戻って休息する。

ホテルで一眠りして体力が若干回復。17時半から予約していた料理屋へ向かう。目当ては蕪蒸という京料理。色んな出汁と蕪と魚と他にも何かいろいろ入った汁物でなかなか美味しかった。そして一番楽しみにしていた清水寺のライトアップへ。高台寺のライトアップが予想以上に綺麗だったので、今回の清水寺も期待していたが、予想を裏切らない景観が待っていた。iPhoneの画質が夜になると極端に悪いので綺麗に撮れなかったが、実物は写真の100倍は綺麗。そして規模が他の寺とは比べ物にならない。清水寺に来たのは3回目だが、ライトアップすると規模がより大きく感じられる。京都の雑誌によく登場する清水寺の夜景がそのまま広がっていた。いずれまた訪れたい場所。


二日目は長岡京というマイナーなエリアへ。というのも京都で紅葉が見頃なのが長岡京しか残っていなかったため。散紅葉で有名な光明寺へ向かったが、かなりの田舎にも関わらず、臨時バスの混雑具合は京都の市街地を上回るレベルだった。今回初めて知った紅葉のスポットだが、散紅葉の参道は南禅寺や東福寺の有名な寺社にも負けないレベルで美しいと思う。「光明寺 散紅葉」で検索すると恐ろしく綺麗な写真がいくつも出てくる。日没のタイミングで夕日を背景にすれば絶景を拝めそう。




光明寺の近くの名もなき寺へ。 紅葉と柑橘。


再び京都の市街地に戻って北大路で昼食。鴨川を南下して下賀茂神社へ。下賀茂神社は京都で最も紅葉が遅いらしく、全く紅葉が始まっていない。


締めは京都駅近くに位置する東寺。有名な五重塔。京都旅行もこれでおしまい。

2016年11月23日水曜日

冴えカノ12巻の展望と加藤恵の謎に関する考察

11巻後半からの急展開で物語も佳境に入った感のある、冴えない彼女の育てかた。7巻で「加藤恵……もう一度、俺のメインヒロインになってくれ」と言った割には、英梨々に未練残してる感じだし、相変わらず詩羽先輩の信者だし、本当に倫也は恵をメインヒロインにする気があるのかと疑っていたが、これまで倫也と恵が積み重ねてきたものが11巻で一気に恋愛方面に結実した感じ。とりあえず、詩羽先輩や美智留には反応しない倫也が恵を相手にすると豹変することが分かった。完全に相思相愛で、シナリオ作成が関係を発展させる口実になっているし、もはやゲームつくらなくて良いんじゃないかというレベル。このまま誕生日デートに突入していたら、間違いなく恵エンドで終わっていたが…。

「……っ、……っ!」

「え?何だって?ごめん、よく聞こえないんだけど……」

「…………」

「な……ちょっと待って!誰、が……」

内容は全く不明だけど、やたらと不安を煽る電話。最初読んだときは恵から倫也への電話だと思っていたけど、倫也から恵への電話のようにも思えるし、他の人物からの電話の可能性もある。とりあえず何かのトラブルで誕生日のデートが中止、そこからシリアス展開という流れは間違いなさそう。最初に思い浮かんだのは倫也か恵が交通事故に遭ったんじゃないかというもの。電話をかけてきたのは英梨々で、倫也が事故に遭ったことを恵に知らせる内容とか。倫也記憶喪失からの英梨々を含めた三角関係展開とか、倫也が三年後に目覚めたとき恵は既に…とか。しかし、このシチュエーションは君が望む永遠のパロディだということが分かり、候補から消えた。内容まで交通事故で重ねてくるとは思えないし、何より展開が安直で雑すぎる。

そして、他に思い浮かんだのは英梨々関係。冴えない彼女の育てかた考察 タイトルのダブルミーニングと英梨々エンドの可能性冴えない彼女の育てかた考察 WHITE ALBUM2との比較からで書いたように、この作品は最終的に倫也、恵、英梨々の三角関係になるのではないかというのが持論である。7巻のシリアス展開は突き詰めると、倫也が英梨々と恵のどちらを選ぶのかという話なわけで…。結局のところ、倫也は英梨々に裏切られるんだけど。再び三角関係に突入するのであれば、11巻のラストは最後の分岐点だろう。11巻は何かと恵が英梨々を気にする描写が多かった。

「だって……今のわたしたち、ちょっと、彼女には見られたくないなって」

「だって、何だか、言い訳しにくくって……」

一泊二日の修復で仲直りを果たした恵と英梨々だが、今回の恵は何というか完全に抜け駆けだった。恵が英梨々に後ろめたいという気持ちを抱くのも当然だと思う。英梨々に知られてしまったのか、恵から英梨々に話したのか分からないが、英梨々に絡む問題で恵がデートに行けなくなってしまったという展開は有り得そう。ただし、この展開は間違いなく英梨々にヘイトが向かうのが難点。そもそも誕生日に恵が倫也とデートするくらいは英梨々も普通に許しそうな気がする。

英梨々関係で他に有り得るのは、英梨々が再び倒れて倫也が英梨々の元に向かうという展開。フィールズクロニクルの素材提出期限が9月末で死にそうになっているという話が出ていたので、時期的に英梨々が倒れるという展開は有り得ないこともない。ただし、この展開は6巻そのままだし、英梨々が相変わらず成長していないという話にもなりかねない。そして、この展開もやはり英梨々にヘイトが向かうのが難点。というか、キャラクター人気的に英梨々との三角関係に持ち込むのは現実的に難しいかもしれない。

そして最終的に行き着いたのは、作品の根幹にも関わる恵自身の問題という展開である。今までにない加藤恵という新しいタイプのヒロイン、その魅力を描くことが丸戸史明の本作における一番の目的だと思うが、どうして恵がこのようなキャラクターになったのかという点について、いわば作品の根幹といえる点については今まで明らかにされてこなかった。彼女が元々フラットな性格をしていて、付き合いが人並み外れて良く、容姿の割に目立たない人物なのだと言えばそれまでだが、それだけで説明できるキャラクターではないように思われるのだ。加藤恵はなぜ最初から付き合いが良かったのか、なぜサークル活動に没頭していったのか、なぜメインヒロインを目指したのか、なぜ倫也を好きになったのか。

加藤恵の謎を考えて思い至ったのは、彼女が家庭環境に何らかの問題を抱えているのではないかということだ。家庭環境は人格形成に重要な影響を及ぼす要素の一つである。特殊な家庭の事情が彼女の無個性という個性をつくりあげたのではないか。このように考えたのは恵の家族があまりにも彼女に対して無関心というか不干渉のように思えるからだ。週末になれば倫也の家に入り浸り、平気で外泊してくるにも関わらず恵を咎めるような気配がない。特に驚いたのは1巻で恵が家族旅行をすっぽかして倫也のためにメインヒロインを演じたシーンである。このとき恵は北海道に一週間の家族旅行に来ていたが、その旅行は結婚を予定する恵の姉が発案した最後の家族旅行であった。あまりにも家族の優先度が低いので、ひょっとして恵は家族と不仲なのかと疑ってしまうのも無理はない。実際に倫也も同じ発想に至っている。

玄関口で普通に母娘仲良く会話してた!家庭崩壊してなかった!(8巻 P.198)

8巻で恵の家に立ち寄るシーンの倫也。恵の家が家庭崩壊しているんじゃないかと冗談半分で少し疑っていた倫也が安心する場面。しかし、娘が朝帰りしてきたのに、しかも帰ってすぐまた出かけるというのに笑顔で見送る母親には違和感を覚える。このような母娘関係に至った背景は分からないが、恵は家族との間に何となく距離感があるように思える。恵が家庭環境に問題を抱えているとすると、先に述べた恵に関する謎も理解できてくる。11巻において倫也は、とてもとても共依存という単語が頭をよぎった、と恵を評しているが、まさにその通りなのだと思う。これまで倫也は恵を付き合いの良い女子だと思っていたが、その実態は果たして…。

「ところで加藤、お前さ、あの時どうして朝早くからにあんなとこにいたんだ?お前んちから全然遠いだろ?」

「さあ、もう覚えてないけど……」

8巻において最初に出会ったときのことを話す倫也と恵のシーン。この物語の始まりにして、最も重要な出会いのイベント。恵は覚えていないと軽く流したが、新聞配達の時間に自宅から離れた住宅街をオシャレして歩いているというのは、どう考えても特別な用事があったからだろう。それを覚えていないというのは嘘であり、恵があの時間にあの場所にいたのは何か大きな理由があったのではないか。その理由こそ加藤恵の謎を解き明かす重要な鍵となるのではないか。繰り返し登場している最初のシーンが物語の根幹につながる重要なフラグだったというのは実に丸戸史明らしいと思う。

2016年11月20日日曜日

冴えない彼女の育てかた11巻 感想

冴えない彼女の育てかた 11 (ファンタジア文庫)
丸戸 史明
KADOKAWA (2016-11-19)
売り上げランキング: 24

11巻の内容はいよいよ倫也がメインヒロイン叶巡璃ルートの執筆を始めるというもの。9巻で英梨々、10巻で詩羽先輩のシナリオが完成しているため、これは読み通りの展開。ただし、夏休みの間に美智留ルートと出海ルートが完成していたのには驚いた。何のドラマもなくシナリオが完成してるとか、これは英梨々もびっくりの負け組ヒロインぶり。第二部になってもメインヒロインには昇格できないことが明らかになった瞬間であった。ただし、出海はイラストで、美智留は音楽で才能を伸ばしており、彼女たちの急成長に倫也も驚きを隠せない。あとは倫也のシナリオ次第というところまで来た感じ。

しかし、倫也は肝心の叶巡璃ルートが書けずにいた。共通ルートから個別ルートに入るイベント番号:巡璃15は巡璃が主人公を意識するようになる最重要イベントであるが、シナリオライターとしての実力がついたことで、どの展開もイマイチだと感じてしまう倫也。まぁ、恵が倫也を意識するようになったシーンがそもそも作品内で描かれていないから、実体験を元にシナリオを作成している倫也に書けないのも無理はない。そして伊織や紅坂朱音にも相談した挙句、倫也が頼ったのはメインヒロイン張本人であった。

深夜いきなり恵に電話して協力を求める倫也も大概だと思うが、何だかんだ言いながら乗り気な恵も大概だと思う。個別ルートに分岐する前に共通ルートから見直すことになった二人であったが、これまでの出来事について倫也は恵から壮絶なダメ出しを食らう。

「そもそもこれ、主人公の造形に無理があるよね。こんな語りたがりで自分の主張を押しつけまくってウザい主人公、好きになる女の子なんていないんじゃないかな?」

「じゃ、じゃあ、どうすればいいのか、教えてくれないか……?」

「そうだなぁ……とりあえず、今までの主人公の行動とかセリフをチェックして、もうちょっと好感持てる主人公に直していかない?」

「こ、これまでの主人公……変えちゃうの?」

フラットでブラックな恵にタジタジになる倫也。最初のゲーム合宿に始まり、六天馬モールでのデートと、恵のダメ出しは止まるところを知らない。そして共通ルートの見直しをしていく中で、これまでの倫也について恵がどう思っていたかが明らかにされていく。倫也は去年の冬コミの時点で巡璃(恵)が少しくらいは主人公(自分)に好意を持っていたのではないかと持論を述べるが、恵は「あ~、それはないね。うん、この時点では絶対ない」と一刀両断。そして倫也の英梨々に対する気持ちを逆に問い詰めていく恵。まぁ、倫也は一度英梨々のことを選んでるし、恵が英梨々を必要以上に警戒するのも無理はない。ただし、共通シナリオのダメ出しを終えて、いよいよ個別ルートに分岐するところから、この巻の本番が始まる。どんな主人公なら良いのかと倫也に問いかけられた恵はこう答える。

「あ、でも、少しでいいから、嬉しいことや、ドキっとすること言ってくれたり、わたしを大切に思ってる気持ちを伝えてくれたら、それでいいかな?」

「ただ、ほんのちょっとだけ、足りなかったんだよ。下げて、下げて、下げた後の、たまに上げてくれる、一言が……」

「別に、告白なんていらない。ただ、ほんのちょっと、好きになるきっかけでいい。何気ない言葉が、欲しいの。え?そんなんで好きになっちゃうんだ……って、そんな言葉が、欲しいの」

この言葉がもはや告白じゃないかというレベル。ここから二人の間の空気感は劇的に変化する。恵に対する倫也の回答は、恵の顔が見たいというものであった。これ以降の倫也は本気モード。ヘタレ主人公の仮面を脱ぎ捨てた彼は、とても倫理くんとは呼べないくらい強引に恵に迫る。「なんか、顔、見たい」という倫也の要望に対して恵の回答は少し間が空く。初めこそ倫也の申し出をやんわりと拒絶したものの、いつもと違う雰囲気で迫ってくる倫也に対して、ついに恵は「……なんだかなぁ」という言葉とともに倫也の要望を受け入れる。スカイプの画面に映った恵の表情に倫也の意識は吸い寄せられた。彼女の表情は…。

このシーンは間違いなく冴えカノにおける一つのクライマックスだ。表紙の恵は倫也に顔が見たいと言われたシーンに間違いない。結局、恵は目立たない自分をメインヒロインとして特別に思ってくれた倫也のことを最初から意識していたのだろう。ただし、その気持ちを恋愛感情に変化させるきっかけがなかった。恵も言ってるように、ほんのちょっとだけ足りなかったのである。7巻における倫也と恵の和解シーンも一つの転機であったが、ついに11巻にして倫也の短くも核心を突いた言葉によって恵は完全に倫也を好きになってしまった。まぁ、倫也を本気にさせたのはそもそも恵の言葉がきっかけなので確信犯という感じではあるが。その後の二人はまるで今にも付き合いそうな雰囲気。公園のシーンとかキスするんじゃないかと思って冷や汗かいた。しかし、その後のスカイプのシーンでそれ以上の悶絶を味わわされることになった。

そしてエピローグ。倫也を意識するようになってしまった恵は深夜の本読みを中断したいと言い出す。この辺りが意外と初心な感じで、またしても悶絶する。恵の申し出を了承した倫也であったが、やはり今回の倫也は一筋縄ではいかない。9月23日は恵の誕生日。誕生日のお祝いを口実に倫也は恵をデートに誘う。どうにかフラットを装っていた恵もついに降伏してデレ始める。あれ、これ付き合うの確定した?「俺と黒猫は恋人になった」のシーン再来かと身構えたが、さらに予想の斜め上を行く展開に。9月23日の12時。待ち合わせ時間の少し前。雑音のせいでなかなか声が聞き取れない一本の電話によって、物語は起承転結の転を迎えたことが告げられた。

これは冴えカノ史上最も先が気になる終わり方…。まぁ、このまま恵と上手くいくっていうのは、筆者が丸戸史明なので有り得ないとは思っていたが。ヒロインが事故で死んじゃったりとか、病気で死んじゃったりとか、とにかく死んじゃったりとか、不吉なフラグが立っていたから恐ろしすぎる。流石に恵死亡はないと思うけど、恵に何かアクシデントがあってデートに行けなくなったというのが一番ありそうな展開か。恵本人に何かあったのか、恵の家族に何かあったのか、それとも親友の英梨々に…。ただし、英梨々は6巻で一度倒れているから、今回も英梨々関連というのは考えにくいところ。そもそも誰から誰への電話なのかもはっきりしていない。恵から倫也への電話というのはミスリードで、倫也から恵への電話、あるいは英梨々から恵への電話という可能性も有り得る。

2016年11月6日日曜日

東北電力の経営戦略を考える

ハーバード戦略教室
ハーバード戦略教室
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シンシア モンゴメリー
文藝春秋
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中小企業診断士の勉強をしていると、いずれは渡米してMBAに挑戦なんて夢が膨らんでくるが、冷静に考えて外国語で経営学を勉強するとか不可能に近い。MBA気分を味わうべく11月初頭の休日を費やして読んだのが、上記のハーバード戦略教室。実は2年前にも読んでいるのだが、今読んでみると2年前と考えることが結構変わってくるのが面白い。ハーバード・ビジネス・スクールの教授が書いているだけあってマイケル・ポーターの考えが随所に見られる点とか、そもそも戦略論ではなくリーダーシップ論について書いた本ではないかという疑問とか、お茶の水女子大学出身らしい翻訳家が内容を正しく理解していないという疑惑とか、以前より客観的にというか斜に構えて読んだような気がする。しかし、企業に存在意義を与えることこそ経営戦略であるという要旨は王道ではあるが不変の真理だと思う。

電力会社の存在意義は何か。簡潔に述べると、低廉かつ安定的な電力供給を行うことで地域の発展を支えること、という答えになるだろう。産業と生活に欠かせない電力供給を通じて地域が発展し、地域が発展することで電力会社は成長していくことができる。「東北の繁栄なくして当社の発展なし」というのは東北電力の社是である。しかし、電力産業が花形産業であったのは高度経済成長の時代からバブル崩壊までであった。電力需要は経済成長と極めて高い相関性を持つ。日本の経済成長は減速し、地方経済の停滞は特に著しい。現在の日本は人口減少時代に突入しており、産業革命に匹敵するイノベーションでも起こらない限り、かつてのような経済成長を目にすることは難しいだろう。

原子力発電所の停止、電力の小売全面自由化、送配電部門の法的分離も大きな問題であるが、東北電力が直面する最大の課題は東北経済の縮小に伴う電力需要の減少である。2050年までに東北電力管内の人口は3割程度減少することが見込まれている。電力需要の減少によって深刻な影響を受けるのが送配電事業である。インフラ事業は薄利多売が基本であり、設備形成に要する膨大なコストに対して獲得する利益はごく僅かなものである。発電事業は需要が減っても発電所を減らすことで対応できる。しかし、送配電事業は需要が減ったからと言って設備をそのまま減らせるわけではない。どのような山奥でも需要がある限り、送配電設備を形成して維持するのは電力会社の義務である。多少のコスト削減では3割の需要減少を賄うことはできない。

低廉な電力供給を続けるためには送配電設備を縮小していくことが避けられない。これは電力事業に限らず全てのインフラ事業において同様である。JRが不採算路線から撤退するように、電力会社も採算の合わない地域からは送配電設備を撤去せざるを得ない。しかし、人が住んでいる地域から電気を奪うことは現実的に不可能である。そこで電力会社は自治体と協力してコンパクトシティの実現に向けて動くことが必要となる。コンパクトシティは産業や生活に関わる諸機能を都市の中心部に集約することで、効率的な都市運営を図っていく考えである。人口減少が既定路線であるとすれば、いずれ行政も自らの存続を賭けてコンパクトシティの実現に向けて動き出す必要に迫られるのは目に見えている。深刻な人口減少に直面する東北電力は電力業界において、この問題に対する先陣を切る必要がある。深刻な危機に直面する東北電力だからこそ、コンパクトシティの実現によって送配電事業の効率性を一早く高められる可能性がある。

また、小売事業においてはガスや水道といった他のインフラ事業者と提携していくべきである。小売事業は送配電事業ほど深刻な危機に直面していないが、現状のままでは需要の減少によって効率性が低下していくのは避けられない。そこで同じような営業と料金の体系を持つガスや水道の事業者と提携して小売事業を統合する。範囲の経済を追求することで規模の縮小に対応していく。ガス事業や水道事業は自治体が営んでいることが多いため、上記のコンパクトシティ政策と合わせて自治体と協力していくことが望まれる。東京電力や関西電力は他電力管内への越境販売に積極的であるが、東北以外の地域に営業網を持たない東北電力が例えば首都圏などで直接小売事業に乗り出すのは間違いなく非効率であり、小売事業は旧来の管内に集中するべきだろう。

他電力管内において直接小売事業に乗り出すことには反対だが、一方で電力の越境販売は東北電力の成長に欠かせないとも考える。東北電力の強みは最大の電力消費地である関東に隣接した地方電力会社ということである。既に東北電力は東京ガスと提携して、北関東において高圧需要向けの電力販売に乗り出しているが、東京ガスとの提携はさらに深化させていくべきだろう。東北における需要の減少を関東への越境販売で補うことが東北電力の成長には欠かせない。東京ガスは関東において強固な営業網を有しており、電力自由化後のスイッチング件数においてトップを走る存在であることからも、関東において東京電力に対抗可能な唯一のインフラ企業であると考えている。

そして最後に電力会社の将来を左右するのが電源構成である。原子力発電に特化した関西電力は福島第一原子力発電所の事故が起きるまでは非常に競争力のある電力会社であったが、現在では原子力発電への依存度が低い中部電力にその地位が移っている。方向性は大まかに三通りあると考える。一つはLNG火力を中心とした電源構成であり、中部電力と東京電力が目指す道である。両社は燃料調達と火力発電所の新設事業を統合したJERAという合弁会社を設立しており、スケールメリットによってLNG火力の競争力を高めようとしている。一方、関西電力を中心とした西日本の電力会社は今後も原子力の維持を目指していくと思われる。事故を起こした沸騰水型ではなく、加圧水型の原子炉を採用しているため早期の再稼働が見込まれるためである。また、中部電力と東京電力がLNG火力においてスケールメリットを追求している以上、関西電力は消去法的に原子力を切り札に勝負を挑むしかない。

東北電力が選択すべきだと思う道はどちらでもない。LNG火力は今後も電源構成の中心であり、女川と東通の再稼働は目指していくべきだと思うが、特に注力すべきなのは再生可能エネルギーである。再生可能エネルギーと言っても急速に普及の進んだ太陽光発電ではない。太陽光を除いた水力、風力、地熱、バイオマスの四種類の電源である。再生可能エネルギーにLNG火力や原子力に対抗できる価格競争力はないが、政策的支援を受けて再生可能エネルギーは今後も成長が見込まれる電源だと考える。高コストで不安定な太陽光はこれ以上発展する見込みはないし、発展すべきでもないと思うが、他の再生可能エネルギーに関しては別の話である。東北は再生可能エネルギーの宝庫であり、再生可能エネルギーは規模の割に立地地域の経済を活性化させる効果が高い。電源開発そのものが雇用と消費を生み出すだけではなく、開発後も風力であれば風車が観光資源となり、バイオマスは林業の活性化につながる。再生可能エネルギーの買取価格は全国の電気料金に賦課されるため、東北で再生可能エネルギーを開発すれば開発するほど東北にお金が流れ込むことになる。一方で再生可能エネルギーは環境破壊につながる可能性もあり、電源開発においては地域との信頼関係構築が欠かせない。立地地域との調整能力を有する電力会社こそ再生可能エネルギーの開発においてメインプレイヤーとなりうる存在であり、その中で最も条件の良い位置にあるのが東北電力だと思う。東北の繁栄を存在意義とするのであれば、再生可能エネルギー開発そのものを東北経済の発展につなげていくべきではないか。そのときには東北電力は地域とともに未来をひらく存在となるだろう。