2014年12月28日日曜日

旧枢軸国の電気料金が高い理由

第二次世界大戦の戦勝国であるアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国に比べて、敗戦国であるドイツ、イタリア、日本の電気料金は高い。敗戦国の電気料金が高いことは偶然の産物ではない。そもそも枢軸国が軍事力の増強と植民地拡大に向かったのは、後発で帝国主義競争に加わったために僅かな植民地しか持っておらず、世界恐慌後のブロック経済化によって、資源と市場を失って経済的に行き詰ってしまったためである。打開策はイギリスやフランスのように広大な経済ブロックを獲得することである。そこで枢軸国は第二次世界大戦に突入した。ドイツは東欧とロシア、イタリアはバルカン半島と北アフリカ、日本は中国と東南アジアを獲得するべく、先発の列強に挑戦した。しかし、戦争の長期化によって持久力に乏しい枢軸国は敗れてしまった。

戦後、狭い国土に押し込められたドイツ、イタリア、日本は資源に恵まれず、海外から高い化石燃料を購入するしかなかった。一方、アメリカ、ロシア、中国は広大な国土を有し、豊富な化石燃料に恵まれている。アメリカは石炭資源が豊富で、近年はシェール革命によって天然ガスの産出量も多い資源大国になっている。ロシアは世界最大の天然ガス産出国であり、中国も世界最大の石炭産出国である。広い国土を有する国ほど資源に恵まれるのは自明の理である。

イギリスは現在の国土こそ小さいものの、大英帝国時代の名残で植民地だった地域を中心に海外に資源権益を多く有している。五大オイルメジャーのBPとロイヤルダッチシェルがイギリス企業であることからも、それは読み取れる。もし日本が中国と東南アジアへの影響力を保持していれば、満州の石炭、インドネシアの原油などの利権を現在まで引き継いでいたかもしれない。原油というと、サウジアラビアなどのOPEC諸国が権利を牛耳っているように思われるが、原油の採掘、運搬、販売には先進国の技術と資本が欠かせない。原油の利権は未だにアメリカ合衆国やイギリスの手の内にあるといっても過言ではない。

フランスは電源構成に占める原子力の割合が8割を超える原子力大国で、化石燃料の不足を補っている。戦勝国は軍事的優位性を確保する観点から原子力の必要性が国民に理解されているが、敗戦国である日本、ドイツ、イタリアは敗戦後に脱軍国の歴史を歩んできたために軍事力に対する意識が低く、原子力に対するアレルギーは強い。低コストな原子力発電を活用しようとするのは戦勝国で、敗戦国では脱原子力の動きが強い。イタリアは既に原子力発電所の稼働ゼロを達成し、ドイツも福島第一原子力発電所の事故を受けて原発ゼロ政策を打ち出した。日本は原子力発電所の再稼働に向けて動いているが、厳しい審査と安全対策に要するコストによって、かなりの数の原子力発電所が廃炉に追い込まれてしまうだろう。

化石燃料に乏しい、原子力の活用も難しい、このような状況に陥った旧枢軸国で人気が高いのが再生可能エネルギーである。ドイツはヨーロッパで最も再生可能エネルギーの普及に力を入れる国であり、風力発電を中心に再生可能エネルギーの導入に熱心である。日本も2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まり、太陽光発電が爆発的に普及するようになった。しかし、高コストな再生可能エネルギーの普及は電気料金の上昇につながる。再生可能エネルギー導入の裏側では、出力変動を調整するために既存の火力発電所が低い稼働率に追い込まれている。送配電設備の増強も必要で、いたずらに設備を増やしてコストの増加を招く結果につながっている。高い化石燃料に、高い再生可能エネルギー、さらに原子力利用の低下、この三重苦のような構造が高い電気料金につながっている。その起源は19世紀の帝国主義時代にまで遡るのである。

2014年12月27日土曜日

ニセコイ考察 約束の女の子の正体とアニメOPが暗示する千棘エンド

ニセコイ2期の2015年4月放送開始が決定したこともあり、原作を最新の152話まで読破し、ニセコイ1期を改めて見返してみた。1期後半のOPが意味深だったのでニセコイのラストを考察してみた。

ニセコイの後期OP(CLICKではなくSTEPの方)では、夜の森で楽が約束の女の子と邂逅するシーンがある。約束の女の子の正体には諸説ある。鍵持ち4人の内の誰か(千棘、小咲、万里花、羽)というのが一般的であるが、春の友達の風ちゃん(髪型が同じ)、未登場人物で既に亡くなっているという説もある。鍵持ち4人の内、千棘以外は約束の女の子である可能性が低い。楽は鍵を持つ約束の女の子から錠を貰ったが、小咲は男の子から鍵を貰っている。約束の女の子は髪が長く、標準語を話すが、万里花は幼少時は髪が短く、九州の方言を話している。羽は楽と小学校まで共に生活しており、約束の女の子との別れのシーンとは矛盾する。

直感的には約束の女の子は千棘、もしくは未登場人物で既に亡くなっているかのどちらかだと思う。風ちゃん説を否定する根拠は無いが、ただのサブキャラが約束の女の子でしたという展開は驚きはあるものの、これまでの作品の流れを無視する展開となってしまう。約束の女の子は千棘か、未登場人物か。可能性が高いのは未登場人物で既に亡くなっているという説である。原作90話で10年前の約束と関わりのある絵本を発見した楽達であるが、このとき10年前の記憶を持つ万里花だけが無表情で、過去を隠すような素振りを示している。万里花にとって10年前の真実は楽達に隠したいものであることが分かるが、何故隠そうとするのか。自分が約束の女の子ではないからという理由も考えられるが、万里花の表情からすると、シリアスな真実が隠れているのではないか。万里花は病弱で幼少時は入院生活を続けていた。万里花と約束の女の子の接点は恐らく病院であり、約束の女の子も万里花同様に入院していた可能性がある。楽と別れた後に、約束の女の子は病死したのではないか。約束の女の子は自分の死が近いことを楽に伝えなかったが、死後も自分のことを覚えていて欲しいと考えて楽に錠を渡した。

では、最終的に楽は誰を選ぶのか。メインヒロインは3人いるが、優遇されているのは千棘と小咲であり、実質的にはダブルヒロインの構造である。楽が好きなのは小咲であり、一方で千棘に惹かれ始めている描写もある。読者からの人気が高いのは小咲であり、千棘は人気投票で万里花にも敗れている。ただし、アニメOPでは約束の女の子に手を伸ばした楽が、植物の棘で手を刺してしまうシーンがある。これは約束の女の子を追い求める楽が、最後に手にするのが千棘であることの暗示ではないか。

2014年12月24日水曜日

地熱大国日本における地熱発電の可能性

少子高齢化と人口減少によって経済力が低下する今後の日本において、エネルギーは安価であることが第一に求められる。経済性に優れる電源として、原子力、石炭火力、ガス火力、水力、大型風力、地熱が挙げられるが、この中で今後開発が進むと予想されるのはガス火力、大型風力、地熱である。原子力は最も安価な電源であり、安全対策のコストを入れても経済性に優れている。しかし、当然のことながら政治的に今後の開発は難しい。政治的リスクを抱える原子力に手を出そうとする事業者も日本にはいないのではないか。

原子力の次に安価な電源は石炭火力である。燃料費の安い石炭火力は原子力の代替電源として、首都圏を中心に多くの開発計画が浮上している。しかし、二酸化炭素排出量が増加している日本は国際的に厳しい立場に置かれている。いずれ石炭火力の新増設にストップをかける政策が打ち出されるはずである。もしくは莫大な炭素税を課せられて、石炭火力は経済性を失うかもしれない。水力は経済性、エネルギーの安全保障、環境性というエネルギー3Eを満たす優れた電源だが、残念ながら開発適地が日本には残っていない。消去法によって、これからの日本において電源開発の中心となるのはガス火力、大型風力、地熱である。

特に地熱発電の開発が期待される。日本の地熱資源量はアメリカとインドネシアに次ぐ世界第3位であるためである。資源小国日本の数少ない資源の一つで、原子力発電所20機分に相当する2000万kWのポテンシャルを持つ。日本は資源小国と言われるが、明治から昭和にかけて日本の産業発展を支えたのは間違いなく水力発電である。水力に恵まれたおかげで日本は電化と電化による産業振興に成功した。地熱発電はその水力発電に並んで日本のベース電源となる可能性を秘めているが、これまで日本では開発が進まなかった。現在までに僅か50万kWしか開発されていない。地熱発電開発には国立公園・国定公園内における開発規制、温泉の枯渇を不安視する立地地域の反対という課題があるためである。

2010年代から環境省によって開発規制は緩和される傾向にあり、開発可能な地域は広がっている。問題は立地地域の反対である。地熱発電の立地地域の多くは温泉地を抱えている。北海道札幌市の定山渓温泉、群馬県草津町の草津温泉、鹿児島県霧島市の霧島温泉など温泉地の反対は根強い。地熱発電に利用する地熱貯留層と温泉の泉源は異なっており、さらに日本では汲み上げた熱水を地中に還元している。海外では地熱発電によって温泉が枯渇した例も見られるが、そのような事例は日本においては見られない。しかし、地下のことは分かっていないことが多く、リスクがゼロとは断言できないため、温泉地の反対は根強いものがある。温泉が枯渇すれば、温泉地の経済は崩壊してしまうため、温泉に少しでもリスクのある事業を地元が受け入れようとするわけがない。

しかし、立地地域の問題は早晩解決に向かうのではないかと思う。経済状況の深刻な山村地域にとって、地熱発電は経済振興の要となるためである。北海道上川町は大雪山国立公園と層雲峡温泉を抱えているが、地熱発電に前向きな姿勢を見せている。秋田県湯沢市、群馬県嬬恋村なども同様である。これらの自治体は既存の産業だけでは地域の衰退は免れられないと考えており、地熱発電を地域振興の柱の一つとして考えている。発電所は立地地域に雇用と固定資産税をもたらす他、地熱発電は副産物である余熱の利用も可能である。北海道の渡島半島東岸に位置する森町濁川地区では地熱発電所の余熱が施設園芸に利用され、温室で栽培されるトマトは地域第一の特産品となっている。アイスランドでは地熱発電によって汲み上げられた熱水が世界最大級の温泉ブルーラグーンを生み出しており、一大観光スポットとなっている。アイスランドの事例は特殊だが、地熱発電は開発プランによっては地域産業を活性化させることができる。地熱発電開発にはエネルギー問題と地域問題に対応する一石二鳥の効果がある。政府は太陽光発電より地熱発電の支援に力を入れるべきではないだろうか。

2014年12月13日土曜日

地理的視点から考えた東北エネルギー戦略

日本は人口減少の時代に突入したが、その最先端を突き進んでいるのが東北地方である。東北地方の人口ピークは1990年代で、2000年代から急速な人口減少が進んでいる。人口減少社会においてはコンパクトシティ化が欠かせない。コンパクトシティは都市機能の集約化によって、効率的な都市運営を行おうとする概念であり、道路、水道、公共施設といった行政が要する費用を最小限に抑えることができる。人口減少によって税収が減った分は支出の削減で補う必要があり、コンパクトシティ化によって人口減少が進む地域も存続していくことが可能になる。特に東北地方は除雪費用削減の観点からもコンパクトシティ化の効果が大きい。

全国の自治体の中では、LRTで有名な富山市がコンパクトシティ政策で先行している。LRTはLight Rail Transitの略称で、低床車両の路面電車のことである。公共交通機関としてはバスと鉄道の中間に位置する。その成否はともかく、富山市はLRTによって中心市街地の活性化を図っている。東北地方でも仙台市や青森市がコンパクトシティを政策目標として掲げている。仙台市の地下鉄東西線プロジェクトもコンパクトシティ政策に沿ったものであり、都心の公共交通機関を充実させることで郊外型の車社会に歯止めをかけようとするものである。

寒冷地である東北地方ではコンパクトシティ化と並行して、新たに地域熱供給システムを整備することで地域全体の光熱費削減が図れるかもしれない。デンマークの首都コペンハーゲンでは小規模の火力発電所が各地域に設置され、発電によって生じた熱水を配管を通じて地域の各建物に供給している。日本でも東京都心ではオフィスや商業施設などで地区レベルのコージェネレーションが行われているが、コペンハーゲンは普及率が100%に近いレベルまで達している。暖房や給湯など熱需要の大きい寒冷地において、この地域熱供給システムは経済性に優れている。東北電力の主要な火力発電所は仙台、八戸、秋田、酒田、いわき、新潟、上越と大きな都市に集中しているため、既存の火力発電所を拠点に地域熱供給システムを整備してはどうか。コンパクトシティ化が進めば、地域熱供給システムを整備するコストも最低限に抑えることが可能になる。

新潟と仙台の間には天然ガスのパイプラインが整備されており、パイプラインを通じて東北地方の主要都市は天然ガスにアクセスすることが可能である。東日本大震災で仙台のガス供給が停止したとき、被害の小さい新潟とパイプラインで接続されていたため早期復旧が可能であったことは記憶に新しい。また、ロシアと日本を結ぶパイプラインの建設が進めば、安価なロシア産の天然ガスにアクセスすることも将来的に可能となる。パイプラインの整備や地域熱供給システムの整備にはコストがかかるが、長期的には化石燃料コストの削減につながる。国、自治体、エネルギー業界が協力して、将来に向けた大事業を今から検討していく必要があるのではないか。

また、東北地方のような人口減少の著しい地域は公益事業を統合して効率化を図る必要もあるだろう。電力事業とガス事業であれば化石燃料の調達、電力事業と水道事業であればダムの運営などで協力できる部分は多い。また、電気、ガス、水道の契約は基本的にセットにしても問題ないと思われる。コールセンター、地域の事業所、検針、料金回収なども一本化することで事業者は効率化を図ることができる。上記のような効率化は人口減少の著しい東北地方が率先して行っていく必要がある。

2014年12月7日日曜日

仙台近郊サイクリング記録

仙台に住み始めてから近郊をサイクリングするようになった。仙台は都市と自然が近く、山にも海にも自転車で出かけることができる。晴れていれば仙台近郊をサイクリングするという旅行プランは良いかもしれない。

◆七ヶ浜(2014年7月)
最初に出かけたのは仙台の北東に位置する七ヶ浜。七ヶ浜は太平洋に面する半島であり、その名の通り七つの浜辺を有する。菖蒲田浜は仙台近郊では有数のビーチであり、サーファーが多い。東日本大震災の被害を受けて、沿岸の民家や林は流されてしまっていた。防波堤が建設中で、海岸は一部しか歩くことができなかったのが残念。実は菖蒲田浜の北に位置する高山と呼ばれるエリアは軽井沢と並ぶ日本三大外国人避暑地の一つで、外国人所有の別荘地が今も存在する。この日も白人の家族が小豆浜のビーチで日光浴をしていた。こんな海辺で暮らしてみたい。



◆仙台(2014年8月)
仙台市は中心の青葉区、北の泉区、南の太白区、沿岸の宮城野区と若林区から成るが、住んでいるのが泉区でいわゆる仙台の街からは少し離れているので、仙台にも出かけてみた。輪王寺は北仙台に位置する伊達家縁の寺で門前が雰囲気ある。定禅寺通はケヤキ並木で有名な杜の都のメインストリートで、彫像が飾られており、丸の内仲通りと少し雰囲気が似ている。冬はイルミネーションを行っているらしい。定禅寺通のケヤキ並木を眺めながら、メディアテークの図書館で本を読むのは至高。三居沢水力発電所は東北で最初に開発された水力発電所で、レンガ造りのためにレトロな雰囲気が感じられる。大崎八幡宮は国宝に指定されている仙台市で一番有名な神社。冬はどんと祭が行われ、極寒の中で裸参りが行われる(追記:2015年1月参加)。





◆秋保(2014年8月)
仙台市には日本三大瀑布の秋保大滝が存在する。東北地方有数の温泉地である秋保温泉から山奥に道を進んでいくと見えてくる。小規模で華やかさに欠けるが、何といっても滝壺まで行けるのが魅力。夏でも水温が低いため川遊びは難しいが、仙台で最も涼を感じることのできるスポットだと思う。流石に日帰りはできなくて秋保温泉で一泊した。秋保温泉は渓谷沿いで眺望は良いが無色透明のシンプルな温泉で、皆がイメージする東北の濁り湯とは異なるので注意。



◆松島(2014年9月)
松島だけサイクリングではないけど記載。松島海岸駅から徒歩30分。四大観と並ぶ松島展望の名所である双観山。松島は三回行っているが、展望の名所だけあって一番良い景色だった。他の展望スポットにも行ってみたい。


◆泉ヶ岳(2014年9月)
泉区は西の根白石と東の七北田、二つの地域から成り立っている。七北田が仙台のベッドタウンとして発展したのに対して、根白石は今も農村的景観を残している。泉中央から根白石を経由して泉ヶ岳に向かった。泉ヶ岳は泉区の由来となった山で、2時間も登れば山頂に到達し、仙台平野と太平洋を一望できる。帰りは三菱地所が開発した高級住宅地である泉パークタウンを経由した。泉パークタウンの中心には三菱地所のプレミアム・アウトレットとタピオが存在する。桂、高森、寺岡、紫山の四地区から成り立っており、開発規模は約1000haと日本最大らしい。緑地が多く、道路の幅も広い素敵な住宅街だったが、最寄の泉中央駅まで距離があるため自動車がないと住むには不便かもしれない。





◆蔵王(2014年10月)
サイクリングでは最長の旅。ダム湖の釜房湖を経由して、蔵王まで行った。体力に自信の無い人は真似しない方が良い。遠刈田温泉の手前にある青根温泉で一泊。翌日に滝見台まで自転車で、御釜まではバスで登った。山頂は森林限界を超えており、荒涼とした景観が見られた。よく晴れているが、山頂は真冬の気温だったので防寒着が欠かせない。帰りに蔵王の卵でつくったオムライスとシュークリームを食べたが、なかなか美味しかった。






2014年12月6日土曜日

東大生の就活 鉄道・不動産・電力

◆鉄道(JR東日本、JR東海、JR西日本、東急電鉄、小田急電鉄)
地理が好きで当初は研究者を目指していたこともあり、就活では地理的な視点を用いるビジネスを展開している企業を受けた。最も興味を持っていたのは鉄道会社である。鉄道を通して、沿線に商業施設や住宅地を開発することで、地域を一からつくりあげる鉄道ビジネスに惹かれた。代表格は東急電鉄だと思うが、小田急電鉄、京王電鉄、京急電鉄、京成電鉄、東武鉄道、西武鉄道といった首都圏の大手私鉄は全て受けた。東急なら渋谷と二子玉川、京急なら品川、東武なら浅草などで街づくりができると思った。目指すは平成の小林一三である。また、都心や郊外での街づくりだけが鉄道会社の仕事ではない。都心から郊外に向かった路線の終点に位置する地域での観光開発にも魅力を感じた。小田急なら箱根、京王なら高尾、西武なら秩父である。街づくりと観光開発は地域の特性を活かして進める事業であるため、まさに地理的要素の詰まった仕事である。

鉄道業界で一番行きたかった企業はJR東日本である。街づくりで先行する私鉄と異なり、JRには遅れていた分だけ大きな開発余地がある。観光開発の対象となるエリアの広さも私鉄とは比べ物にならない。JR東日本は夏のインターンシップに行き、ゆったりとしつつも明るい会社の雰囲気に惹かれた。JRは旅客鉄道6社全てエントリーしている。北海道と四国は他社の面接と日程が重なって受けられなかったが。東京メトロもエントリーしたが、他の鉄道会社と違って街づくりや観光開発には力を入れていない印象で、安定した旅客輸送に全力をつぎ込んでいるようだったのでスルーした。安定した旅客輸送はもちろん鉄道会社最大の使命なのだが、そこに興味があるかと言われると興味はないのであった。旅客輸送ということで関連する航空業界も受けたが、航空ビジネスというのは特定の地域に投資しても見返りを得にくい事業であるため、地域づくりの仕事とは無縁のように感じた。

◆不動産(三菱地所、三井不動産、住友不動産、東急不動産)
鉄道会社の次に興味を持ったのは三菱地所や三井不動産などの不動産会社である。不動産会社も鉄道会社とほぼ同じ理由で受けた。丸の内、日本橋、六本木など東京を代表する街をつくっているのが不動産会社であり、オフィスビルや商業施設に比べると地味だが住宅地の開発も行っている。立地地点の特徴を最大に活かせるのはどのような建物か考えていくのが面白そうだった。三菱地所、三井不動産の他に、住友不動産、東急不動産、野村不動産、森ビル、東京建物を受けている。不動産会社はOB訪問に積極的な会社が多く、鉄道会社に比べてエネルギッシュな雰囲気に圧倒されることが多かった。

◆建設(鹿島、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店)
関連業界ということで、鹿島、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店の建設大手5社も受けている。大成建設はリクルーター面談で三回もお世話になった。ただ、結局ゼネコンは下請けという印象を受けた。建物のデザインや機能性、土木技術に興味がないとつまらないかもしれない。やはり地域のコンセプトを企画するのは自治体や不動産会社であるため、あまり興味は持てなかった。

◆電力(関西電力、中部電力、東北電力、電源開発)
鉄道会社と不動産会社の次に興味を持っていたのが電力会社である。国や地域によって電源構成が異なるというのが興味を持つきっかけだったと思う。ヨーロッパだと、石炭の豊富なドイツは石炭火力発電が、天然ガスの豊富なロシアはガス火力発電が盛んだが、化石燃料に乏しいフランスはエネルギー安全保障と経済性を考えて原子力発電に特化した電源構成となっている。電源構成の背景には地理的条件、政治、歴史、経済状況などがあって面白い。また、電源開発には地域との合意形成が欠かせない。放射線被害のリスクがある原子力発電が代表格だが、クリーンなイメージのある再生可能エネルギーさえ地域との合意形成は難しい。水力発電はダム開発による地域の水没、風力発電は騒音やバードストライクの被害、地熱発電は温泉への悪影響など課題は山積している。この難しい電源開発を地域に受け入れてもらうにはどうすれば良いのか考えるのが面白いと思う。

また、火力発電に用いる化石燃料は国際政治や国際経済の影響を大きく受ける資源であり、安価に安定して調達するためには、世界各地の情勢に目を配る必要がある。北米のシェールガス開発の状況、中国のエネルギー需要の動向、ロシア、中東、中南米といった不安定な地域の政治状況、地球温暖化対策の進展状況、これらを総合して鑑みて、どの燃料をどの地域から調達していくか考えるのは、まさに地理的視点が求められる。スマートグリッド、電気自動車、コージェネレーションなどの登場によって、地域へのエネルギー供給の仕組みも今後大きく変わっていくだろう。エネルギー面から地域づくりに関われる機会もあるのではないかと思い、関西電力、中部電力、東北電力、北海道電力、電源開発を受けた。

◆メーカー(トヨタ自動車、新日鐵住金、JFEスチール、日立製作所、クボタ)
フィールドワークで農業をテーマにしていたこともあって、農機メーカーのクボタも受けた。アジアの新興国では日本と同様に農業就業人口が減少しており、農業の機械化が進んでいる。欧米の農機メーカーと比べて稲作に強みのあるクボタはアジアの農機市場を席巻できる可能性を秘めている。クボタはインターンシップにも行った。残念ながらインターンシップでは第二の主力商品である小型建機について企画する班に入れられてしまったので、あまり楽しめなかったが。農業の機械化によって農業の課題を解決していくのは面白いと思ったが、そうした仕事は農協や総合商社の仕事であるということが分かり、インターンシップに行ったことで逆に興味が薄れてしまった。メーカーはやはり技術系が一番楽しめる会社だと思う。

工場立地への興味から出発して、大規模メーカーであるトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、新日鉄住金、JFEスチール、日立製作所もエントリーした。ただし、工場の立地展開を考える仕事はメーカーの仕事の中ではほんの一部であり、工場立地への興味だけで面接を突破するのは難しかった。日立の都市×ITというコンセプトや電気自動車のインフラ整備にも興味はあったが、自動車のデザインや機能性、工場の生産ラインなどに興味がなかったのは痛かった。

◆総合商社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅)
幅広い事業を手掛ける総合商社にも興味を持った。総合商社はアメリカの穀物メジャーであるガビロンを買収した丸紅のように、農地経営、穀物流通などの事業に携わり、大規模な農業開発を行うことができる。資源開発、電源開発、不動産開発などの事業も行っており、興味は尽きない。三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、双日、豊田通商の7大商社にエントリーした。ただ、総合商社の事業は幅が広過ぎて、興味のある事業部門に配属されるかは不明なことがリスキーだった。何よりハードな体育会系という社風が自分に絶対合わないと思い、途中で受けるのを辞めてしまった。関連する海運業界も日本郵船、商船三井、川崎汽船の大手3社にエントリーしたが結局受けなかった。

◆マスコミ(読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞、NHK)
調査をして文章を書くことが好きだったのでジャーナリストにも興味を持っていた。新聞社やテレビ局もエントリーはしてみたが、倍率が高すぎて流石に無理だった。

2014年11月14日金曜日

10年後の電力業界・ガス業界

東京電力と中部電力が燃料調達と火力発電所の新設事業を統合する。東京電力は福島第一原子力発電所の廃炉と地域住民への賠償という重い課題を抱えているものの、業界1位と3位の連合は他社にとって大きな脅威である。さらに中部電力と天然ガスの調達で協力関係にある大阪ガスもこの連合に加わる可能性が高い。中部電力は買収した新電力ダイヤモンドパワーを通じて首都圏で電力販売を始め、東京電力も子会社テプコカスタマーサービスを通じて中京圏と関西圏で電力販売を行う。小売面において両社はライバル関係にあるものの、今後提携の幅を拡大していく可能性がある。エネルギー業界において東京電力の実力は突出しているため、東京電力、中部電力、大阪ガスの3社がアライアンスを組めば、三大都市圏の電力・ガス事業を制覇することも夢ではない。東京電力の廃炉と賠償の問題が解決するまで3社が合併にまで及ぶことは考えにくいが、企業グループを形成していく可能性は十分あり得る。

これに危機感を強めるのは、ガス業界首位の東京ガスと電力業界2位の関西電力だろう。東京ガスは燃料調達において東京電力と協力関係にあり、東京電力はLNG販売における最大の顧客でもある。ただし、送配電部門とガス導管部門の法的分離が確実視され、小売の全面自由化へと進む昨今の状況を鑑みると、首都圏の電力・ガス市場を巡って両社は今後対立を深めていくと思われる。以前は合併の話もあるほど深い間柄であったが、燃料調達の包括提携協議では物別れに終わった。東京ガスは東京電力と中部電力への対抗軸を模索せざるを得ない立場にある。

◆電力・ガス各社の規模(売上高)
東京電力6兆6000億円
関西電力3兆3000億円
中部電力2兆8000億円
東京ガス2兆1000億円
東北電力2兆円
九州電力1兆8000億円
大阪ガス1兆5000億円
中国電力1兆2000億円
電源開発7000億円
四国電力6000億円
北海道電力6000億円
東邦ガス5000億円
北陸電力5000億円

東京ガスの提携先として考えられるのは関西電力と東北電力である。特にエリアが隣接する東北電力は有力な提携相手である。東北地方の電力需要は人口減少を原因として今後右肩下がりとなる。東北電力が首都圏への電力販売に乗り出すことは必至である。東北電力は同じ周波数である首都圏に電力を供給することが可能であり、東京ガスは東北電力の電気を首都圏の販売網を使って売ることができる。また、東京ガスが首都圏で発電・小売の事業を行う上で、東北電力のバックアップがあることは安定供給に大いに資することになる。燃料調達や火力発電所の運営においても両社は協力することができる。

東北電力と東京ガスは以前に共同で仙台市ガス局を買収しようとしたことがあり、東北地方には規模の小さいガス事業者しか存在しないため、両社が協力すれば東北地方のガス事業を制覇することがも可能である。この買収案に参加していた石油資源開発はパイプラインの運営で東北電力と協力関係にあり、東京ガスと東北電力の連合に加わる可能性がある。さらに北海道電力も売上高が東北電力の3分の1ほどの小規模な電力会社であり、この連合に加わる可能性がある。一定のガス需要を得ることで、いずれはサハリンと日本を結ぶパイプライン建設に乗り出すかもしれない。

東京ガスと関西電力は東京電力への対抗上、燃料調達などで協力していくと思われるが、エリアが離れているためアライアンスの度合いはそれほど深いものにはならないと思われる。関西電力は周辺の電力会社である北陸電力と四国電力を傘下に加えて、東京電力の連合に対抗していくだろう。中堅の電力会社である中国電力は西日本全域での電力販売に積極的であり、摩擦の小さい東京電力と中部電力の連合に加わる可能性がある。一方、九州電力は首都圏での電力販売を打ち出しており、関西電力の連合に加わるだろう。東邦ガスは規模が小さく、提携する中部電力の連合に加わるだろう。以上から、自由化後の電力業界とガス業界は次の3つの連合に集約されていくと思われる。

1.東京電力・中部電力・大阪ガス・中国電力・東邦ガスのグループ
業界首位。スケールメリットを活かした燃料調達が強み。業界のガリバー的存在。全国で電力・ガスの販売を行う。海外の電力事業やガス田開発にも積極的に投資している。福島第一原子力発電所の廃炉と賠償を抱える東京電力の財務不安が課題。

2.東京ガス・東北電力・北海道電力・石油資源開発のグループ
東日本を中心に電力・ガスの販売を行う。サハリンからのパイプラインを建設し、他社よりも安価な天然ガスの調達に成功。首都圏の電力市場では2番手のシェアを誇る。

3.関西電力・北陸電力・四国電力・九州電力のグループ
西日本を中心に電力・ガスの販売を行う。再稼働した原子力発電所を多く抱えており、安価な電力供給を行っている。中部電力と大阪ガスの連合に奪われた関西圏の電力市場でシェアを取り戻すことが課題。