2014年11月14日金曜日

10年後の電力業界・ガス業界

東京電力と中部電力が燃料調達と火力発電所の新設事業を統合する。東京電力は福島第一原子力発電所の廃炉と地域住民への賠償という重い課題を抱えているものの、業界1位と3位の連合は他社にとって大きな脅威である。さらに中部電力と天然ガスの調達で協力関係にある大阪ガスもこの連合に加わる可能性が高い。中部電力は買収した新電力ダイヤモンドパワーを通じて首都圏で電力販売を始め、東京電力も子会社テプコカスタマーサービスを通じて中京圏と関西圏で電力販売を行う。小売面において両社はライバル関係にあるものの、今後提携の幅を拡大していく可能性がある。エネルギー業界において東京電力の実力は突出しているため、東京電力、中部電力、大阪ガスの3社がアライアンスを組めば、三大都市圏の電力・ガス事業を制覇することも夢ではない。東京電力の廃炉と賠償の問題が解決するまで3社が合併にまで及ぶことは考えにくいが、企業グループを形成していく可能性は十分あり得る。

これに危機感を強めるのは、ガス業界首位の東京ガスと電力業界2位の関西電力だろう。東京ガスは燃料調達において東京電力と協力関係にあり、東京電力はLNG販売における最大の顧客でもある。ただし、送配電部門とガス導管部門の法的分離が確実視され、小売の全面自由化へと進む昨今の状況を鑑みると、首都圏の電力・ガス市場を巡って両社は今後対立を深めていくと思われる。以前は合併の話もあるほど深い間柄であったが、燃料調達の包括提携協議では物別れに終わった。東京ガスは東京電力と中部電力への対抗軸を模索せざるを得ない立場にある。

◆電力・ガス各社の規模(売上高)
東京電力6兆6000億円
関西電力3兆3000億円
中部電力2兆8000億円
東京ガス2兆1000億円
東北電力2兆円
九州電力1兆8000億円
大阪ガス1兆5000億円
中国電力1兆2000億円
電源開発7000億円
四国電力6000億円
北海道電力6000億円
東邦ガス5000億円
北陸電力5000億円

東京ガスの提携先として考えられるのは関西電力と東北電力である。特にエリアが隣接する東北電力は有力な提携相手である。東北地方の電力需要は人口減少を原因として今後右肩下がりとなる。東北電力が首都圏への電力販売に乗り出すことは必至である。東北電力は同じ周波数である首都圏に電力を供給することが可能であり、東京ガスは東北電力の電気を首都圏の販売網を使って売ることができる。また、東京ガスが首都圏で発電・小売の事業を行う上で、東北電力のバックアップがあることは安定供給に大いに資することになる。燃料調達や火力発電所の運営においても両社は協力することができる。

東北電力と東京ガスは以前に共同で仙台市ガス局を買収しようとしたことがあり、東北地方には規模の小さいガス事業者しか存在しないため、両社が協力すれば東北地方のガス事業を制覇することがも可能である。この買収案に参加していた石油資源開発はパイプラインの運営で東北電力と協力関係にあり、東京ガスと東北電力の連合に加わる可能性がある。さらに北海道電力も売上高が東北電力の3分の1ほどの小規模な電力会社であり、この連合に加わる可能性がある。一定のガス需要を得ることで、いずれはサハリンと日本を結ぶパイプライン建設に乗り出すかもしれない。

東京ガスと関西電力は東京電力への対抗上、燃料調達などで協力していくと思われるが、エリアが離れているためアライアンスの度合いはそれほど深いものにはならないと思われる。関西電力は周辺の電力会社である北陸電力と四国電力を傘下に加えて、東京電力の連合に対抗していくだろう。中堅の電力会社である中国電力は西日本全域での電力販売に積極的であり、摩擦の小さい東京電力と中部電力の連合に加わる可能性がある。一方、九州電力は首都圏での電力販売を打ち出しており、関西電力の連合に加わるだろう。東邦ガスは規模が小さく、提携する中部電力の連合に加わるだろう。以上から、自由化後の電力業界とガス業界は次の3つの連合に集約されていくと思われる。

1.東京電力・中部電力・大阪ガス・中国電力・東邦ガスのグループ
業界首位。スケールメリットを活かした燃料調達が強み。業界のガリバー的存在。全国で電力・ガスの販売を行う。海外の電力事業やガス田開発にも積極的に投資している。福島第一原子力発電所の廃炉と賠償を抱える東京電力の財務不安が課題。

2.東京ガス・東北電力・北海道電力・石油資源開発のグループ
東日本を中心に電力・ガスの販売を行う。サハリンからのパイプラインを建設し、他社よりも安価な天然ガスの調達に成功。首都圏の電力市場では2番手のシェアを誇る。

3.関西電力・北陸電力・四国電力・九州電力のグループ
西日本を中心に電力・ガスの販売を行う。再稼働した原子力発電所を多く抱えており、安価な電力供給を行っている。中部電力と大阪ガスの連合に奪われた関西圏の電力市場でシェアを取り戻すことが課題。