2015年6月6日土曜日

鉄道会社によるサイクルシェアリング事業の可能性

サイクルシェアリング、バイクシェアリング、シティサイクル、コミュニティサイクルなどと称される自転車利用の新しい形態について注目している。レンタサイクルが観光目的で使用されるのに対して、サイクルシェアリングは日常生活での使用が想定されている。サイクルシェアリングは街中にサイクルポートを多数設置し、利用者は借りた自転車をどこのサイクルポートでも返却することができる。例えば、駅前のサイクルポートで自転車を借りて、会社近くのコンビニまで自転車に乗って通勤し、コンビニに設置されたサイクルポートで返却をするといった使用ができる。数十分単位での使用が可能で、都市内でのちょっとした移動をバスや徒歩から自転車に切り替えることができる。サイクルシェアリングの先進地パリではヴェリブという名称のサイクルシェアリングが普及している。およそ300m毎にポートが設置されており、パリ市民で知らない者はいない。

地方に比べて都市の生活は体力を必要とする。地方ではどこに行くにも自動車での移動が基本であり、日常的に徒歩で移動する距離は短い。しかし、都市では自宅から駅まで、駅から目的地まで徒歩での移動が基本である。この徒歩移動は都市住民にとって地味に辛いポイントである。サイクルシェアリングの導入は都市生活の利便性を向上させる。日本でも横浜市のbaybike、仙台市のDATE BIKE、札幌市のポロクルなど、近年は導入事例が増えており、中心市街地を活性化させる効果が期待されている。ただし、サイクルシェアリングは公益事業に共通する課題として、採算を取ることが難しい。自治体が税金を使ってサイクルシェアリングを行う場合が多いが、基本的に赤字となっている。海外では自転車に広告を載せて、広告費によって事業を運営している事例もあるが、民間企業がサイクルシェアリング事業に乗り出すことは一般的に難しいようである。
 
しかし、サイクルシェアリング事業に進出する可能性のある民間会社がある。それは鉄道会社である。鉄道会社に入社した暁には鉄道駅を拠点としたサイクルシェアリングの企画をしたいと考えていた。鉄道は長距離輸送では航空機、短距離輸送では自動車と競合する関係にある。鉄道の自動車に対する弱みはdoor to doorではないこと、つまり鉄道駅から目的地まで徒歩移動を強いられることであるが、自転車と組み合わせることで鉄道の利便性は格段に増す。サイクルシェアリングが普及すれば、通勤通学をマイカーやバスから鉄道に切り替える人がそれなりに出るだろう。また、休日の人の移動も郊外から中心市街地に移行する。サイクルシェアリングの普及は鉄道利用者を増加させるため、サイクルシェアリング単体で採算を取ることは難しくても、本業の収益が向上する鉄道会社であれば事業として実行できる可能性がある。人口減少によって利用客の減少が見込まれる鉄道会社がサイクルシェアリング事業に挑戦する価値は大いにあると思う。また、鉄道会社にとって悩みの種である駅前の放置自転車問題が解決される可能性もある。
 
鉄道会社はサイクルポート網の核となる鉄道駅を所有しており、沿線地域の自治体や施設とも深い繋がりを有しているため、サイクルシェアリングの旗振り役として申し分ない。地域の交通利便性が向上するため、相当な問題がなければ自治体の協力は得られるだろう。役所、学校、図書館、病院、公園といった公共施設にサイクルポートを設置することは難しくない。また、スーパーやコンビニなどの商業施設もサイクルポート設置に協力するだろう。サイクルポートの利用者を客として店に呼び込むことができる。中心市街地が空洞化した沿線地域を持つ鉄道会社はぜひサイクルシェアリング事業に取り組んでみてはいかがだろうか。人口減少社会に突入し、鉄道各社は他社の沿線地域にはない魅力をアピールすることで、いかに人を呼び込むかが課題となっている。サイクルシェアリングは他社と差別化を図る上でも良い武器となるだろう。

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