2015年10月31日土曜日

BRICsの次に発展する四か国

20世紀後半はG7の時代であった。G7はアメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの七か国を指す。G7が世界のGDPの半分以上を占める時代が長らく続き、国際社会はG7を中心とした主要先進国によって動かされてきた。2000年代からは経済成長の著しい大国としてBRICsが注目されるようになる。BRICsはブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字で、いずれも巨大な人口と広大な国土を抱えている。21世紀の経済大国として有望であり、アメリカ合衆国を除いて先進国はいずれもBRICsに経済力で敵わなくなる時代が来ることが予想される。既に中国は日本とドイツをGDPで抜かしている。

BRICsに次いで今後の経済成長が期待される新興国として、よくNEXT11が挙げられることが多い。NEXT11は韓国、ベトナム、フィリピン、インドネシア、バングラデシュ、パキスタン、イラン、トルコ、エジプト、ナイジェリア、メキシコの十一か国である。しかし、中進国である韓国、トルコ、メキシコと最貧国であるバングラデシュ、パキスタン、ナイジェリアが同じグループに属しているのは違和感がある。NEXT11には共通点がなく、NEXT11の全てが経済成長を遂げるとは考えにくい。特にバングラデシュ、パキスタン、ナイジェリアは人口大国ではあるが、教育水準が低いため急速な発展は望めないだろう。

地政学的な観点から予測すると、BRICsの次に発展する国として四つの国が挙げられると思う。それは韓国、ベトナム、トルコ、ポーランドである。人口規模は韓国が5000万人、ベトナムが9000万人、トルコが8000万人、ポーランドが4000万人と地域大国のレベルにはあるが、世界的な大国と呼べるほど大きい規模ではない。ちなみにGDPは2014年時点で韓国が13位、トルコが18位、ポーランドが23位、ベトナムが56位である。

これら四か国に共通するのは中国かロシアに隣接する地域大国という点である。アメリカ合衆国の最大の仮想敵は中国とロシアであり、現在も中国とは南シナ海、ロシアとはクリミア半島の領有権問題で争っている。シーパワーであるアメリカ合衆国が最も恐れることは、ユーラシア大陸が強大なランドパワーによって支配されることである。かつてはナチスドイツ、ソビエト連邦、現在は中国とロシアを危険な存在として認識している。そのようなアメリカ合衆国にとって、中国とロシアに隣接する地域大国は両国を牽制する上で非常に重要な存在である。韓国は現在もアメリカ合衆国の同盟国であるが、中国との戦争の際に最前線となるのが韓国である。また、ベトナムは陸路においても海路においても、中国がアジアに進出する際の玄関口となる。トルコもロシアが黒海から地中海へ、あるいは中東へ進出する上での要衝である。ポーランドはロシアの侵攻からヨーロッパを守る防波堤であり、歴史的にもドイツとロシアが争ってきた国である。

アメリカ合衆国は中国とロシアへの抑止力として、今後四か国を積極的に自陣営に繋ぎとめようとするはずである。中国は経済的支援によって発展途上国を自陣営に取り込み始めているが、アメリカ合衆国はそれを上回る規模の経済的支援を四か国に行っていくだろう。見返りはアメリカ合衆国に対する軍事的な協力、中国とロシアの監視である。BRICsが台頭する一方で、まだまだ世界経済を支配しているのはアメリカ合衆国であるため、そのアメリカ合衆国の支援を受ける四か国は経済的な発展が約束されていると言える。日本が経済大国になった一因もここにある。戦前はロシア帝国の抑止力となることを期待されて、大英帝国の支援を受けて列強の一角に上り詰めた。戦後は極東を共産主義から守る最後の砦として、アメリカ合衆国から強力な支援を受けた。ベトナムは社会主義国家でアメリカ合衆国の仇敵でもあるが、地政学的には非常に相性が良い。第二次世界大戦後の日米関係のように、米越関係も今後急速に近しいものとなっていくだろう。

かつて中国の好敵手は日本、ロシアの好敵手はドイツであった。しかし、日本とドイツは人口減少による内需の減少が見込まれており、両国の企業は海外市場への進出が避けられない。両国の企業が狙うのは地理的に近く、経済成長が著しい中国とロシアの市場であり、経済的な事情によって日本とドイツは正面から中国とロシアを敵に回すことができない。現在は韓国の中国依存が指摘されているが、韓国程度の規模であれば中国への抑止力としての期待から、アメリカ合衆国は韓国企業に自国の市場を提供するだろう。これが韓国ではなく日本になると、市場を全て食い尽くされかねないため、アメリカ合衆国は韓国にしかこのような優遇は行わない。そのため、日本とドイツはアメリカ合衆国とも、中国やロシアとも微妙な距離を保ち続けていくことになると思われる。その中で、韓国、ベトナム、トルコ、ポーランドはBRICsに次ぐ経済発展を遂げていくのではないかと予想する。

2015年10月30日金曜日

21世紀の中国が20世紀ドイツの歴史を歩むなら

安全保障関連法で一人負けする日本において、中国が直接的な武力行使に出ることは考えにくいと述べたが、20世紀初頭には国際社会を敵に回して戦争に突入した国が存在した。ヴィルヘルム2世率いるドイツ帝国である。当時のドイツ帝国と現在の中国は似通った点が多い。もし21世紀の中国が20世紀ドイツの歴史を歩むとしたらどうなるか、今後の展開を予想してみた。

ドイツ帝国は遅れて登場した列強である。大英帝国とフランス帝国が早くも17世紀には統一された国家を形成し、18世紀から植民地獲得競争を繰り広げる中、神聖ローマ帝国は三十年戦争によって分権化が進み、統一された国家の誕生は18世紀まで待たなければならなかった。ロシア帝国を除いて、ドイツ帝国はヨーロッパにおいて最大の人口を誇る。巨大な人口と豊富な石炭資源によって、ドイツ帝国は18世紀後半から産業革命による急速な工業化によって国力を上昇させていった。しかし、海外の利権は既に大英帝国とフランス帝国によって牛耳られ、ドイツ帝国は国際社会において国力に見合うだけの地位を与えられていなかった。ドイツ帝国は当時の覇権国家である大英帝国に匹敵する国力を有するようになっていたが、国民一人当たりの経済水準、民主化の程度などにおいて、先行する列強からは遅れをとっていた。

これは中国とも重なる点が多い。アヘン戦争以降、中国は清朝という形式上の国家によって統一されてはいたものの、実態は軍閥が割拠する分権的な政治体制となっていた。日中戦争、国共内戦を終えて、中国はようやく統一された国家となり、鄧小平によって計画経済から市場経済へと移行したことで急速な経済成長も成し遂げた。GDPは日本を上回って世界第二位に上り詰め、購買力に関してはアメリカ合衆国に匹敵するレベルに至っている。しかし、国際社会はアメリカ合衆国を中心とする先進国によって動かされており、共産主義という政治体制も影響して、中国は国際社会では一流国とは見なされていない状態にある。

中国が20世紀のドイツ帝国と同じ状況に置かれているとすれば、次に中国が目指すのは軍事力によって自らの地位を国際社会に認めさせることである。ドイツ帝国は典型的なランドパワーであるが、大英帝国との建艦競争に乗り出して積極的な海洋進出を図った。大英帝国の経済力の源泉は海軍力によって自由貿易をコントロールすることにあり、これは現在の覇権国家であるアメリカ合衆国にも共通する。中国もランドパワーでありながら、かつてのドイツ帝国と同じように海軍力の増強に力を入れている。南シナ海の領有権問題は21世紀のモロッコ事件となるかもしれない。

中国がドイツ帝国と同じように国際社会を敵に回して戦争に突入するとすれば、仮想敵国の筆頭とされている日本や台湾よりも、まずは朝鮮半島を軍事的に制圧するだろう。朝鮮半島を制圧することでアメリカ合衆国は中国大陸に容易に手出しをできなくなる。大陸の安全を確保してから、日本や台湾への空爆を開始するだろう。第一次世界大戦と異なり、中国は同じランドパワーであるロシアを同盟に引き込んでいる。陸路から中国を攻めることが難しいため、中国との戦争は長期化する可能性が高い。しかし、キール軍港の水兵反乱がドイツ帝国の崩壊を招いたように、中国は市民の反乱によって自壊するだろう。中国は国際社会において確かに政治的に異質であるが、市民レベルでは既に国際社会の仲間入りを果たしている。政治的な自由に加えて、経済的な利益の追求さえも政府に邪魔されるようになれば、中国で市民革命が起きるのは時間の問題である。

ただし、敗戦後の中国はさらに厄介なことになる。帝政ドイツ崩壊後にナチスが台頭したことを考えれば、敗戦によって屈辱を味わった愛国心の強い中国人が次に何を仕出かすかは分からない。これまでは良くも悪くも共産党によるコントロールが効いていたが、民主化によって中国のナショナリズムは暴走する可能性がある。敗戦後も相変わらず巨大な人口を抱える中国は更なる経済成長を遂げて、短期間に戦後復興を成し遂げることだろう。国際社会を相手に再度戦争へ突入することも可能である。アメリカ合衆国は民主主義を崇拝しているようだが、民主主義とナショナリズムが結びつくと独裁政治よりも危険な場合があることを理解する必要がある。長期的に見れば、共産党が中国の暴走を抑える可能性もある。

中国が本気で武力行使を図った場合、日本はどうするべきか。まずはアメリカ合衆国と連携して中国の侵攻に抵抗する必要があるが、負け戦が濃厚な場合はフランスのような立ち回りをするのも一つの手である。第二次世界大戦において、パリを占領されたフランスはナチスドイツに降伏した。以降、フィリップ・ペタンを首班とするヴィシー政府はナチスドイツに進んで協力することで、フランスの更なる荒廃を防いだ。そして東方でソビエト連邦が巻き返しを図り、連合軍によるノルマンディー上陸作戦も成功すると、フランス国民はすぐに手のひらを返してナチスドイツを追放した。そして現在は戦勝国として国際連合の五大国の一員の地位を占めている。被占領国としての苦難は並大抵のものではないが、核兵器や生物兵器を使われて将来の復興さえも望めなくなるような事態よりはマシだろう。アメリカ合衆国と中国の超大国に挟まれた日本はフランスのような強かさが必要である。

2015年10月27日火曜日

「東京大学 人文地理」で検索したら

「東京大学 人文地理」で検索したら、4年前に書いた進振りの記事が上位に出てきて驚いた。UT-Lifeの文三→養・広域科学科人文地理分科の記事。東大入学時に希望していた進学先…教養学部総合社会科学科国際関係論分科、教養学部地域文化研究学科、教養学部広域科学科人文地理分科、法学部政治コース、文学部歴史文化学科西洋史学専修って、今と全く興味が変わっていないのが面白い。結局、国際政治、ヨーロッパ、地理、近現代史なんかが好きなのは今後も変わらないのだろう。アニメ趣味も含めて、麻布で人生のいろいろなものが決まってしまったようである。

麻布高校といえば、南北線麻布十番駅から麻布高校に向かう通学路には長い坂があり、その坂は仙台坂という名前であった。江戸時代に仙台藩の下屋敷があったことが由縁だそうであるが、就職して仙台に住むようになるとは奇妙な縁である。江戸時代の参勤交代と違って、この先はずっと仙台住まいかもしれないが。仙台との縁は他にもあって、母方が伊達政宗の参謀片倉景綱で有名な片倉姓であり、父方の祖父の実家が神奈川県小田原市であるが、小田原という地名が何故か仙台市にも存在する。ちなみに小田原征伐における伊達政宗の遅参とは関係が無いらしい。20年以上住んできた川口市が東北自動車道の起点であるのも面白い。

麻布高校に話を戻すと、就職活動で鉄道会社に興味を持ったのも、地歴部の活動でJRを使い尽くして旅行したことと関係があるかもしれない。麻布学園地歴部ホームページには今も過去の旅行先が記載されているが、熊本、鹿児島、福岡、大分、下関、長崎など地歴部で行ったときのイメージが今に至るまで西日本のイメージとして残っている。住んだこともないのに、西日本というと何故か懐かしい気持ちになるのはそのせいか。

また、不動産ディベロッパーに興味を持つようになったのも、高校のすぐ近くに六本木ヒルズがあって、再開発というものに親しみを感じていたためかもしれない。そういえば地歴部の先生は再開発の研究に熱心で、旅行先の都市でも近年の開発状況について語っていたような気がする。東京というと、浅草のような下町でもなく、池袋や渋谷のような繁華街でもなく、新宿や丸の内のようなオフィス街でもなく、港区の武家屋敷跡地に立ち並ぶ大使館、麻布十番商店街と善福寺のような古い寺、森ビルによって再開発されたビルやマンションが一番に想起される。

最後に地理の話に振り返ると、大学の卒業論文は地熱発電開発における地域の合意形成というテーマであった。当初はサイクルシェアリングによって都市の交通がどのように変化するのか考察してみようと考えていたが、就職先に合わせてテーマを変更したものであった。立地自治体の規模によって自治体の姿勢が変わり、それに応じて温泉事業者を含めた地域の利害関係者の姿勢も変わってくる。つまり有名な温泉地が必ずしも地熱発電に反対するわけではないという結論に至ったが、突き詰めるとミクロな地域政治の話で地理の分野からはやや逸れていたような気もする。もう少し違う研究ができれば良かった。

2015年10月25日日曜日

農業+観光+再生可能エネルギーの3事業による農村経営モデル

TPP(Trans Pacific Partnership)によって日本の農業が衰退することが懸念されている。野菜と魚は全ての関税が撤廃され、聖域とされていた米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の五品目についても影響が及ぶことが判明した。アメリカ合衆国など海外の安価な農産物が大量に日本に流入して、日本の農業はこれまで以上に衰退に向かうだろう。しかし、日本の農家のほとんどは高齢者であり、TPPの影響がなくても日本の農業は崩壊の一途を辿るだろう。農村の人口は激減しており、今後ほとんどの農村が消滅することになる。

個性ある各地の農村を消滅させてしまうことは惜しい。人口減少の進む日本では今後更なる都市化が進み、9割以上の人は首都圏のような大都市圏か、効率的に運営される地方のコンパクトシティで暮らすことになるだろう。そのこと自体は誤りではないと思う。都市化と一人当たりGDPの増加には明確な相関性が見られ、都市化が進むことは先進国の証でもある。ただし、日本はこれだけ多様性に富んだ歴史ある国土を有しているのだから、シンガポールのような新興の都市国家には真似できない、地域資源を活用した発展の仕方があっても良いのではないかと思う。農村の活性化はきっと日本経済を良くする。

農村の主要な産業は農業である。あるいは山村であれば林業、漁村であれば水産業となる。これらは収益性を改善する必要はあるが、今後も主要な産業として維持していくべきだろう。ただし、農業だけで農村を経営していくことは難しい。そこで農村の第二の事業として観光、さらに第三の事業として再生可能エネルギーに取り組むことを提案する。農業、観光、再生可能エネルギーの3事業によって、農村が有する地域資源をフルに活用し、持続的な農村経営が可能になる。

まず、農業については量を捨てて質で勝負していくべきである。量を諦めるということは食料自給率にこだわらないということであるが、そもそもTPP交渉からも分かるように農産物は需要に対して供給が過剰である。日本の経済力が維持される限り、食の安全保障が脅かされる事態は想定できない。TPPは日本の農業が変化する良い機会でもある。農産物の輸入自由化が進むことで、農業にも競争が持ち込まれて収益性が改善する可能性がある。

広島県尾道市瀬戸田町はレモンの国内生産量の半分を占める農村であり、かつてはレモンの輸入自由化で危機に直面した。しかし、瀬戸田町は安全で品質の高いレモンの栽培に特化し、輸入レモンが入り込む余地のない市場を確保した。農薬の使用を抑えて、防腐剤を使わないことで、瀬戸田町のレモンは飲料や食事への付け合わせとして重宝されている。また、飲料や菓子などへの加工と販売で6次産業化も果たした。瀬戸田町の農業改革は主に農協が中心となって行われ、競争に晒されることで瀬戸田町のレモン農業は発展を遂げた。TPPを契機に、他の農村も個性ある特産品の生産に集中するべきだと思う。そのためには稲作から果樹栽培や酪農といった収益性の高い農業への転換が必要になるだろう。

また、農村は第二の事業として観光に力を入れるべきである。ヨーロッパでは農村における体験型の観光がメジャーである。農業体験や農村での生活は新しいタイプの観光で、実は出会いの場として若者にも人気である。もちろん風光明美な景観を必要とするため、水田、畑、民家、道路などが入り混じった汚い景観の農村ではできない。北海道の美瑛町のような綺麗な農村であることが望まれる。そのため、山岳や海浜といった恵まれた景観を有する地域であることが条件で、組織的に農村の景観を整えていく必要がある。また、古い民家を改装して農家レストランや宿泊施設を整備し、都市から観光客を受け入れるための準備もしなければならない。星野リゾートが経営危機に陥ったホテルを再生するように、農村観光のプロフェッショナルがこうした農村の改革を進めていく必要がある。

農業、観光に加えて、再生可能エネルギーが農村の第三の事業となる。バイオマス、地熱、風力、中小水力といった再生可能エネルギーは農村の数少ない資源である。国は農村新興の側面から地域活性化に役立つ再生可能エネルギー事業をもっと支援していくべきだろう。発電所の経営は農村の貴重な収益となるが、再生可能エネルギー事業には初期投資がそれなりに必要となる。これについては農村の外部、即ち都市の住民から出資を求めるべきである。市民風車という市民セクターによる発電所開発モデルが既に存在しており、環境保護やエネルギー問題に関心のある比較的富裕な層から支援を得られる場合が多い。さらに新電力を立ち上げて、再生可能エネルギーで発電した電気を都市住民を中心に販売すると収益力がより向上する。都市住民には地域の農産物をプレゼントし、農村観光に招待することで、他の電力会社との差別化を図る。電気は商品として価格以外に差別化を図ることが難しいとされているが、高い電気であっても消費者に特別な価値を見出させることで購買意欲を引き出すことができるだろう。

農業、観光、再生可能エネルギーの3事業はそれぞれがシナジー効果をもたらす。例えば特産品の農産物や農業体験は観光資源となる一方で、観光客への物販や農家レストランなどで農産物の需要を押し上げてくれる。バイオマス発電や地熱発電で得られる余熱はハウス栽培に役立ち、実際に北海道森町は地熱発電の余熱を利用したハウス栽培でトマトの一大産地に成長した。山村であれば間伐材がバイオマス発電の燃料となり、本業以上の収益を生み出す可能性がある。福島県郡山市の布引高原には日本最大級の風力発電所があるが、猪苗代湖を望む布引高原は風車群によって一躍有名な観光地となった。

これらのシナジー効果を総合的な視点からコントロールするためにも、これら3事業を束ねて農村経営をリードする組織が必要となるだろう。食品流通、農村観光、電気事業といった分野の専門家、さらにこれらの事業を外部にPRするための広報活動に長けた人材も必要となる。一つの農村でこれほどの人材を揃えることは難しいため、農村コンサルタントのような組織が全国の農村をプロデュースしていくことが望ましい。農業は農林水産省、観光は国土交通省の観光庁、再生可能エネルギーは経済産業省の資源エネルギー庁というように各事業を管轄する省庁は異なるが、農村問題解決のために政府は分野横断的に農村を支援していくべきであると思う。

2015年10月24日土曜日

原作から予想する冴えカノ2期の構成

富士見書房の11月新刊欄に「冴えない彼女の育てかた9」の表示が…!冴えない彼女の育てかた9巻は11月20日発売で、9巻の表紙は小学生時代の英梨々となる予定。8巻は加藤と英梨々の関係がギクシャクする中、倫也が仲直りの場を設けることに成功したが、ラストでフィールズ・クロニクルのPV配信を見た加藤が英梨々との距離感を再び感じてしまったところで終わった。表紙を見る限りだと9巻の主役は英梨々で、英梨々の過去についても語られそうな気配。冴えない彼女の育てかた8巻 感想で予想したように、8巻でサークルを立て直したところで、いよいよ9巻は倫也、加藤、英梨々の三角関係が始まりそう。やはり第2部から加藤と英梨々のダブルヒロイン体制に本格的に入ったと考えられ、そうするとストーリーの連続性から考えて、アニメ2期は5巻~7巻とGirs Sideで構成されそう。以下、アニメ2期の構成を予想。

1話~3話
1期ラストで美智留が音楽担当として加入し、メンバーの揃った同人ゲームサークルblessing softwareは冬コミに向けて本格始動する。まずは詩羽先輩がシナリオを完成させるが、密かに第二のシナリオ(瑠璃ルート)を作成していた。自分とキャラ設定の似た瑠璃ルートを倫也に突き付け、巡璃ルートと瑠璃ルートのどちらのシナリオを採用するのか迫る。

一方、倫也がライバル視する伊織の同人サークルrouge en rougeもblessing softwareと同じく伝奇ゲームを製作することが判明。さらにrouge en rougeのイラストは出海が担当することとなり、英梨々と出海の対決が早くも冬コミで実現することとなった。伊織から詩羽先輩のシナリオではrouge en rougeに勝てないと宣戦布告を受け、倫也はどちらのシナリオを選ぶべきか悩むことになる。悩む倫也に対して、加藤は詩羽先輩が書き上げた二つのシナリオを一度ゲームにしてみることを勧める。

加藤の協力を得て倫也は試作品を完成させるが、小説家である詩羽先輩のシナリオはゲームとしてプレイするには致命的な欠陥を抱えていることが判明する。小説とゲームシナリオの違いを認識した倫也は詩羽先輩に問題点を告げ、論戦の末に詩羽先輩も自分のシナリオの問題点を認める。倫也は詩羽先輩と共に連日の徹夜に及ぶ修正作業を行い、二つのシナリオをゲームに組み込むだけではなく、自らが望む第三のシナリオの執筆まで手掛けることになる。シナリオを完成させた倫也はシナリオライターとしてクリエイターの仲間入りを果たす。

4話~6話
シナリオの完成に続いて、美智留の音楽も完成。美智留が製作したエンディング曲は英梨々と詩羽先輩も黙らざるを得ない素晴らしい出来であった。そして次はイラストを担当する英梨々のターンであるが、シナリオの完成が遅れた上に分量が増加したことで英梨々は重い負担を抱えることになる。イラストに集中するため那須の別荘に籠る英梨々は最初こそ倫也と連絡を取っていたものの、途中からスランプに陥って遂に倫也との連絡も途絶えてしまう。

締切を間近に控え、極限状態でイラストと向き合った英梨々は才能の殻を破ることに成功する。描画手法を一新させた英梨々は後に倫也も認めることになる凄いイラストを仕上げる。しかし、英梨々は倫也にイラストを送る前に病気で倒れてしまう。伊織の助けを得て英梨々の別荘に向かった倫也は倒れている英梨々を発見する。作品納入の締切が近づく中、倫也は英梨々の看病を優先して冬コミ参加を諦める。

作品納入に間に合わなかったことを知った英梨々は憤慨するが、倫也から才能を認めてもらったことに素直に喜びを見せる。英梨々の看病をしていた倫也も風邪に倒れ、倫也と英梨々はクリスマスを二人きりで別荘で過ごすことになる。倫也は英梨々が自分にとって特別な存在であることを認め、二人は八年ぶりに仲直りを果たす。

7話~9話
blessing softwareは出店規模こそ大幅に縮小させたものの、何とか冬コミでcherry blessingを頒布することに漕ぎ着ける。詩羽先輩のシナリオと英梨々のイラストが話題となり、高い評価を得たcherry blessingは委託販売において大成功を収める。一方、英梨々が倒れたときに倫也から何も相談をしてもらえなかったことで、加藤は倫也と距離を置くようになる。

加藤は冬コミを最後にサークルに顔を出さなくなっていた。英梨々は倫也と再び仲良くなれたことに嬉しさを感じる一方、現状に満足してしまったことで、倫也と一緒にいると最早クリエイターとして成長できないことに気付いてしまった。さらに詩羽先輩の卒業を控え、冬コミが終わった後のblessing softwareはギクシャクした雰囲気に包まれていた。加藤のことを気がかりに思う倫也は街で偶然加藤を見かけ、サークルのミーティングに誘うメールを加藤に送る。そこで倫也が目にしたのは三十分以上も倫也からのメールを見つめている加藤の姿であった。

加藤との仲直りを目指す倫也は加藤をメインヒロインにしたゲームをもう一度つくることを決心し、新作「冴えない彼女の育てかた(仮)」の企画書を書き上げる。倫也は強引に加藤を視聴覚室に連れ込み、新しい企画のプレゼンを披露する。英梨々と仲良くしていることに加藤は腹を立てているのではないかという倫也の勘違いは見事に否定されることになるが、倫也は加藤がどれだけサークルを大切に思っていたのか知ることになる。ようやく加藤と仲直りを果たした倫也だが、詩羽先輩から驚愕の告白を突き付けられることになる。それは英梨々と詩羽先輩のサークル脱退であった。

10話~12話
英梨々と詩羽先輩の出会いについて語られる。恋するメトロノームをきっかけに詩羽先輩は倫也と仲を深めるが、図書室で仲睦まじくする二人を見て快く思わない英梨々であった。しかし、英梨々も恋するメトロノームを読んで、霞詩子のファンになってしまう。一方、詩羽先輩もインターネットで見付けた柏木エリのイラストに魅了され、美術部のエースである英梨々が柏木エリであることに気付いてしまう。倫也を巡っては仲の悪い二人であるが、クリエイターとしては互いを尊敬して認め合う間柄となっていた。

大物クリエイター紅坂朱音はcherry blessingで見せた英梨々の才能に目を付けて、詩羽先輩と合わせてblessing softwareからの引き抜きを図る。英梨々と詩羽先輩は当初こそオファーを断るつもりであったが、紅坂朱音と対面してその凄まじい才能に惹きつけられてしまう。紅坂朱音からビッグプロジェクトに誘われた英梨々はクリエイターとして成長するため、倫也から離れてサークルを脱退することを決める。英梨々の才能に惹かれる詩羽先輩も英梨々と共にサークルを脱退することを決め、二人は紅坂朱音に立ち向かっていく。

二人のサークル脱退を知って茫然自失となった倫也は引きこもる。一方、親友だと思っていた英梨々のサークル離脱にショックを受けた加藤は英梨々の家を訪れるが、英梨々のサークル脱退を理解できないまま二人の関係は断絶してしまう。倫也は二人のサークル脱退に心の整理をできないでいたが、1年前と同じ桜の舞う坂道で加藤と再会し、倫也は加藤をもう一度メインヒロインにすべく再びサークルを立ち上げることを決める。大阪に出発する英梨々と詩羽先輩を見送りに来た倫也はblessing softwareを大きなサークルに育て上げて、いつか紅坂朱音から二人を奪い返すことを宣言する。英梨々は倫也と加藤、二人の思い出として加藤が選んだ倫也のメガネを貰い、詩羽先輩は倫也のファーストキスを奪う。詩羽先輩からシナリオライターとしての才能を認められた倫也は自身でクリエイターの道を進むことを決意する。新学期、倫也と加藤は新入生として入学した出海と出会う。新生blessing softwareの幕開けである。

以上がアニメ2期の構成予想である。Girls Sideは本編の補足という位置づけであるが、本筋に大きく関わっているのでアニメにも取り入れられるのではないかと予想した。1期はメインヒロインの加藤と負け組ヒロインの英梨々と詩羽先輩という構図ができていたが、原作6巻を境に英梨々はヒロインとして急成長を遂げ、加藤と英梨々のダブルヒロイン体制が構築されていく。倫也も英梨々に特別な感情を抱いていることが示唆されており、英梨々の物語における立ち位置が1期とは大きく変わってくることだろう。

英梨々は恋愛か仕事かという究極の選択を迫られ、最終的に仕事を選ぶことになる。そして詩羽先輩もクリエイターとしての決断を迫られる。ただの萌え作品ではない、クリエイターの生き様を見せつけられるシリアスな展開が待っている。さらに倫也と加藤の関係が冷え込んだり、親友であったはずの加藤と英梨々は仲違いをすることになり、後半はシリアス展開が続くことになる。あざといまでのキャラクターの魅力は間違いなく冴えカノの長所であるが、キャラ萌えだけが冴えカノではない。加藤とのすれ違い、英梨々と詩羽先輩のサークル脱退、こうしたシリアス展開こそ丸戸史明の真骨頂であり、上手くアニメ化できたら間違いなく1期を超える神作品になると思う。

また、英梨々が活躍することで出番の減る加藤だが、2期の加藤は1期よりも存在感が増すことになるだろう。倫也と加藤の仲直りのシーンは感動必至であり、加藤が人並み外れて付き合いが良いだけの、ただのフラットな女の子ではないことが明らかになる。1期の加藤は何となく浮世離れした印象があったが、2期ではリアルな女の子の姿が描かれることになるだろう。

冴えカノ1巻~7巻までの軌跡(神MAD)
【MAD】introductory chapter【冴えカノ】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm26592564

2015年10月23日金曜日

映画ソードアート・オンラインのオリジナルエピソードについて

ソードアート・オンラインの映画化が決定した。時期や内容は未定だが、原作者である川原礫の書き下ろしでオリジナルエピソードとなるらしい。アニメ2期の続きであるアリシゼーションは原作の半分以上を占める大長編のため尺が足りないし、オリジナルエピソードは妥当なところだろう。ただし、エクストラエディションとかキャリバー編みたいな、とりあえず主要人物を全員登場させました的なありきたりエピソードだったら残念。ソードアート・オンラインはアインクラッド編が一番面白いと思うので(ほとんどの人はこの意見に同意してくれると思う)、アインクラッド編の番外編が見たいと思う。ただし、一番好きなキャラクターはリーファなので(この意見には同意しない人も多いかもしれない)、アインクラッド編だとリーファの出番がない…という葛藤に悩まされていた。

しかし、書き下ろしのオリジナルエピソードなら、アインクラッド編のIFという形でこの葛藤は乗り越えられるのではないかと閃いた。もしリーファがアインクラッド編から登場していたらというIFである。ソードアート・オンライン プログレッシブで原作者がほとんどIFみたいな話を書いているので、もしかするとリーファがアインクラッド編から登場するIFも、ひょっとすればアリなのではないかと思う。

もしリーファをアインクラッド編から登場させるのであれば、アインクラッド編はアスナとリーファのダブルヒロイン制にすることが望ましい。このIFは川原礫が書けば間違いなく面白くなる。ソードアート・オンラインの良くないところは、アインクラッド編でキリトとアスナが結ばれる流れが単調すぎることにある。アスナしかヒロインがいないからアスナを選んだと言われても仕方がない(シリカとリズベットはただのサブキャラである)。また、アインクラッド編でキリトがアスナと結ばれているにも関わらず、後からリーファ、シノン、アリスといった負け組ヒロインを次々と出していることも解せない。リーファ編もシノン編も完成度は高いのであるが、キリトとアスナが既に結ばれていることが分かっているから、新しい恋愛について書かれても気持ちが追い付かない。

ソードアート・オンラインは徐々に話がつまらなくなっているように思うが(ネットでもそのような風潮はある)、その原因は恋愛面で既に決着が着いていることにある。「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」では桐乃と黒猫のどちらが勝利するのか最後まで分からない熱い展開が繰り広げられたし(ネットでも第三勢力あやせ派を含めて大論戦となったし)、今だと「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」で雪ノ下エンドになるのか、由比ヶ浜エンドになるのか、喧々諤々の議論が交わされて大いに盛り上がっている。ライトノベルでラブコメがメインの作品というのは、三角関係でどちらのヒロインが選ばれるのか最後まで分からない作品(とらドラ!、俺妹、青春ラブコメなど)、あるいはメインヒロインは一人でも最後まで結ばれない作品(涼宮ハルヒ、文学少女、狼と香辛料など)の二種類に大まかに分類できる。そしてラストに向かって盛り上がっていくのが一般的である。しかし、ソードアート・オンラインは原作2巻目、アニメ1期1クール目にしてアスナと結ばれてしまっている。フェアリーダンス編以降、キャラクターやストーリーは相変わらず魅力的であるにも関わらず、ドキドキ感に欠けて面白くないのは、これが原因である。ミステリー作品などであれば話は別だが、ソードアート・オンラインはやはりラブコメ作品だと思うので、キリトとアスナがすぐに結ばれてしまったのは失敗だと思う。キリトがリーファとくっつく可能性を残しておくことで、より面白いストーリーになったと思う。中二病でも恋がしたい!も同じ原因で話がつまらなくなっており、七宮が一人で失恋するだけのアニメ2期の失速感は残念だった。

そこでリーファをアインクラッド編から登場させて、アスナとリーファのダブルヒロイン制にする。キリトが惹かれているVRMMOへの興味から、キリトに内緒で直葉もSAOの世界にログインしていたという設定が良いだろう。ALOのキャラクターデザインが優れているので、オリジナルスキルという設定で、外見はALOのリーファのままにしたい。リーファはキリトが兄であることに当然気付くが、キリトはリーファの外見がリアルと異なるため直葉であることに気付かないという、原作とは少し異なる設定にする。アインクラッド第1層のフロアボスを倒してキリトがアスナと別れた後、第2層からリーファを登場させる。紆余曲折を経て、キリトとリーファをコンビにする。リーファはキリトにあえて自分の正体を明かさない。キリトはリーファといる時間の方が長いが、ボス攻略やイベントなどでアスナも毎回キリトに絡んできて、リーファがやきもきするような展開が見られるだろう。やはり最終的にはキリトに妹であることがバレてしまい、リーファが逃げ出すような展開が面白そう。恋愛面ならアスナ編よりリーファ編の方が格段に面白いと思うので、リーファを登場させてアインクラッド編を再構成して欲しい。

2015年10月19日月曜日

安全保障関連法で一人負けする日本

第二次世界大戦後、日本とドイツは敗戦国であるにも関わらず急速な経済発展を遂げた。フランスの人口学者 エマニュエル・トッドについてで述べたように、日本とドイツの経済的成功は民族的な側面が強い。教育熱心で組織力が強い直系家族の特徴が日本とドイツを先進国でもトップレベルの工業国に押し上げた。しかし、日本とドイツは敗戦国であったが故に経済発展に成功したという側面もある。アメリカ合衆国やソビエト連邦といった戦勝国は第二次世界大戦後も多額の予算を軍事費に当てた。冷戦の主役ではなかったイギリスやフランスも同様である。敗戦国である日本とドイツは軍備の増強が認められず、僅かに自衛のための戦力を保持することしかできなかったが、自国の安全保障に要する費用をほとんどアメリカ合衆国に押し付けて、余った予算を道路や港湾といったインフラ整備などに注ぎ込んで経済発展に専念することができた。現在でもGDPに占める軍事費は日本とドイツでは1%程度なのに対して、イギリスとフランスは2%、アメリカ合衆国は3%を超えている。

安全保障関連法は上記のような日本に有利な構図を崩しかねないものである。集団的自衛権を行使して、アメリカ合衆国と共に戦うということは、これまで押し付けていた軍事費を今後は日本が負担していくということである。シェール革命以降、アメリカ合衆国にとって中東の重要性は低下しているため、ホルムズ海峡などのシーレーン防衛は今後日本に押し付けられる可能性もある。今後の日本は人口減少による経済力の低下と高齢化による社会保障費の増加によって、財政面でダブルパンチを食らう。軍事費などは真っ先に削減したい項目であるにも関わらず、軍事費を増やす方向に進んでいるのは問題である。

軍事費の増加以上に問題なのが日本のイメージ悪化である。表向きは軍事力を持たず、第二次世界大戦後は一切戦争に参加していない日本の姿勢というのは、一般的に海外では好意的に評価されている。アメリカ合衆国がイラク戦争によって国際的な評価を大いに下げたのとは大違いであり、憲法9条をノーベル平和賞に推薦する動きまである。安全保障関連法は戦後日本のこれまでの経歴に傷を付けるものであり、国際的な評価を下げるだけではなく、テロの標的になる可能性まで高めてしまう。中国や韓国は安全保障関連法を軍国主義日本の復活と宣伝して、反日攻勢を強めており、まさに敵に塩を送る形にもなってしまった。

これまで日本は自国の安全保障にアメリカ合衆国の金を使った上、戦争をしない国ということで国際的にも良い顔をすることができた。金を使わされた上に世界中で嫌われるアメリカ合衆国にとっては本当に災難なことだが、歴史的な経緯もあって日本は恵まれた環境に甘え続けてきた。これほど恵まれた環境を自ら捨てる必要はないように思う。もっとズル賢くアメリカ合衆国を利用し続ける道はなかったのか。安全保障関連法の成立をアメリカ合衆国は大いに喜んでいるだろう。

安全保障関連法の背景には中国脅威論がある。中国は海軍力を強化しており、尖閣諸島、台湾、南シナ海といった領有権問題を抱える地域では、近い将来に紛争が発生することが危惧されている。また、マラッカ海峡、ホルムズ海峡を経由してペルシャ湾に至る日本のシーレーンを中国に遮断されてしまうことも恐れられている。中国は既にアジアの海を支配しつつあり、これは真珠の首飾り戦略として知られる。カンボジア、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、モルディブ、パキスタン、スーダン、これらは中国の海軍基地が立地する国々であり、経済的支援と引き換えに実質的な中国の勢力圏となっている。シーレーンを遮断されると、食糧やエネルギーといった資源を海外に依存する日本の状況はかなり厳しいものとなる。

しかし、中国が直接的な武力行使に出ることは考えにくい。アメリカ合衆国はもちろん、近年中国に融和的な姿勢を示しているイギリスやドイツなどの先進国も、中国の武力行使は決して認めないだろう。国際社会で孤立したナチスドイツの二の舞は中国としても避けたいはずである。恐らく日本は中国の軍事力ではなく、経済力と外交手腕によって苦しめられることになる。中国はインフラ投資や金融支援を通じて、発展途上国に多大な影響力を及ぼすようになっている。日本企業の海外での経済活動を邪魔することなど造作もないだろう。中国の息のかかった現地の政治家によって、日本企業のガス田開発が突然凍結されるといった事態は大いに考えられることである。また、真珠の首飾り戦略において中国の勢力圏となっている国々は将来的に日本の商船の停泊を認めなくなるかもしれない。軍事力はあくまでもアメリカ合衆国や日本に文句を言わせないようにするための脅しにすぎない。

つまり中国の脅威は軍事的なものではなく、外交的なものであり、経済的なものである。日本は集団的自衛権を議論するよりも、中国以上にアジアの国々に対する影響力を強めていくことを考えた方が良い。南シナ海問題で中国と対立するベトナムとフィリピン、真珠の首飾りに包囲される形となったインド、まずはこれらの国々との関係を深化させていくべきだろう。そして何よりも強い経済が日本の最大の武器となる。ドイツはその経済力によって実質的にヨーロッパを支配している。経済力が軍事力を打ち負かすことは冷戦の結末からも明らかであり、外交や経済よりも軍事を優先した安全保障関連法は日本の国益にはならない。それどころか、アメリカ合衆国と中国という二つの超大国を利するだけで終わってしまうだろう。安全保障関連法は日本が一人負けする未来しか見えない。

2015年10月18日日曜日

もし毛利家の九州移封が実現していたら

徳川家が小田原征伐後の関東に移封させられたように、毛利家も九州征伐後の九州への移封が検討されていた。東の大勢力である徳川家を都から遠ざけようとして関東に国替えしたのだとすれば、同じく西の大勢力である毛利家を都から遠ざけようとしても不思議ではない。毛利家は大坂に通じる瀬戸内海の制海権を握っており、豊臣政権から見て本来は徳川家よりも危険な存在である。小早川隆景が毛利家の九州移封を回避するために奔走したという話もあるが、徳川家が関東移封によって勢力を強めたことを考えれば、九州移封は毛利家にとってチャンスになっていた可能性がある。

毛利家は九州征伐の段階で、山陽山陰に120万石、四国征伐後に小早川家に与えられた伊予も含めれば160万石にも達する石高を有していた。しかし、毛利家は当時の多くの大名と同様に地方領主の独立性が高く、信長や秀吉のような集権的な政治体制は築けていなかった。国替えは毛利家が集権的な政治体制を築き上げる絶好の機会であった。独立性の高かった地方領主も見ず知らずの土地に移れば、大名の支援なくしては領地を治めることさえできない弱い存在となってしまう。豊臣政権という大きな権威の下で、毛利家は政治体制を改革することができたはずである。

また、信長や秀吉が戦争に滅法強かったのは、兵農分離によって機動力のある常備軍を編成したためであった。九州移封は毛利家にとって兵農分離を図る機会でもあった。当時の武士の多くは戦争がない期間は農民として土地を耕す者がほとんどであった。上杉家の軍事行動が秋の収穫を終えて、春の種蒔きが始まるまでの半年間に限定されていることはよく知られている。しかし、国替えはそうした半分農民、半分武士といった多くの人々に武士になって移住するか、農民として土地に残るかという究極の選択を突き付ける。

徳川家は実際に関東移封によって石高を倍増させただけではなく、集権体制を築き上げ、兵農分離による常備軍の設立にも成功している。国替えによって近代的な大名へと変化を遂げたことが、秀吉死後の家康による天下取りを可能にした。毛利家の九州移封が実現していれば、秀吉死後の権力闘争において毛利家は史実よりも積極的に動くことができていたに違いない。毛利家が西日本の諸大名を味方に付けて、徳川陣営を破っていた可能性もある。その場合、徳川家が関東から京都に至る広大な地域を治めたように、毛利家も九州から京都に至る地域を治めて、西日本に毛利幕府なるものを築き上げていただろう。

毛利幕府の拠点は豊臣政権と同じく大坂になる。大坂は既に日本経済の中心地であり、瀬戸内海と山陽道を通じて毛利家の新たな本拠地となった九州からもアクセスしやすい。史実においても、江戸時代を通じて大坂は商業の中心地としての地位を保ち続けた。もし政権が東日本に移っていなければ、大坂は史実以上の発展を遂げただろう。そして大坂と博多をつなぐ山陽道は史実における東海道のような発展を遂げていたに違いない。毛利家の一門が西日本の要所に配置され、備前岡山、肥後熊本、伊勢津などが御三家の城下町となっていたかもしれない。徳川幕府が東国を独占しようとしたように、毛利幕府も西国を独占しようとする。日本を分断する敦賀-桑名のラインを最前線として、主要な外様大名を東日本に押し込める。海外との貿易を神戸と博多の港に限定し、西日本を中心とした貨幣経済を確立すれば、経済力において毛利家の右に出るものはいなくなるだろう。

19世紀後半から日本の近代化が始まるが、関西の金融業と繊維産業、北九州の石炭産業と鉄鋼業に代表されるように西日本は近代明治の中心であった。毛利幕府が成立していたとすると、西日本のみが発展する歴史を辿ることになる。東日本には日本の外貨獲得の手段となった生糸の産地が多く存在するが、西日本の財界が流通を独占していれば、富は東日本ではなく西日本に流れ込むことになる。ドイツが東西で経済水準に差があるように、日本経済も東西で大きな隔たりができていたかもしれない。

2015年10月17日土曜日

超大国ドイツが生まれた可能性

超大国の核となりうる地域はアメリカ東海岸、ヨーロッパ北西部、中国東海岸、日本の四地域しかない。人の居住に適した温帯で、外洋に面した港を有する地域がこの四地域しかないためである。この四地域は貿易港を中心に巨大な都市圏を形成し、世界経済の中心地としての地位を築く。ニューヨーク、ロンドン、パリ、上海、香港、東京といった世界都市は全てこの地域に集中している。人、物、金が集積するこれら四地域は潜在的に超大国を生み出す可能性を秘めている。しかし、これら四地域だけでは超大国に成長することはできない。周辺の地域を支配し、広大な農地、森林、鉱物資源、化石燃料を手に入れることが肝要である。第1次産業があって初めて第2次産業は生まれ、第1次産業と第2次産業があって初めて第3次産業は生まれる。

アメリカ合衆国はこの点において、全ての条件を満たしている。アメリカ中央平原は小麦、トウモロコシ、大豆など主要農産物の世界的大産地であり、鉄鉱石、石炭、原油といったあらゆる天然資源に恵まれている。過去の超大国である大英帝国も世界中に植民地を有することで、この条件を満たしていた。超大国を目指したドイツ帝国と大日本帝国はそれぞれヨーロッパ、中国を支配することでこの条件を満たそうとしていた。しかし、フランス革命以降の民族主義の時代においては、他民族の居住地域を長期的に支配することは難しく、これらの試みは頓挫した。アメリカ合衆国が超大国として現在も安定しているのは、その住民が人種や宗教は異なるといえども文化的に同質なためである。同じ条件を満たす中国も超大国となることは確実である。

アメリカ合衆国、中国の他に超大国となりえた国が一つだけある。それはドイツである。もしグスタフ2世アドルフが戦死しなければでは、スウェーデン王国によるドイツ統一のシナリオを検討した。ドイツを統一したプロイセンは小国から出発したため、統一ドイツの領域は自然と小さいものになった。異なる歴史を辿っていれば史実よりも規模の大きなドイツ帝国が誕生していたのではないかと思われる。超大国ドイツの最大版図は現在のドイツ、オーストリア、スイス、ネーデルラント3国(オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)、北欧5国(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランド)、中欧6国(ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、クロアチア)によって構成される。ドイツ、オーストリア、スイスは同じ民族であり、ネーデルラントと北欧もドイツとは同じゲルマン系で文化的に非常に近く、隣接するイギリス、フランス、ロシアとは全く異なる文化圏を形成している。中欧はドイツとは民族的に異なるが、近代以降プロイセンやオーストリアに併合されて同じ歴史を辿ってきた。経済的な繋がりは非常に密接であり、ドイツ人の入植も活発だった。18世紀後半から19世紀にかけてアメリカ合衆国に入植するドイツ人が多かったが、彼らが中欧に入植していれば中欧は完全にドイツと同化していただろう。中世におけるエルベ川以東へのドイツ人の入植が示すように、ドイツは潜在的に東方の空白地帯に進出しようとする傾向がある。

もし上記のような超大国ドイツ帝国が成立していれば、現在の人口は2億2000万人、GDPは10兆ドルに迫る。金融と商業に強いネーデルラントとスイスを加えることで、製造業に特化したドイツの弱点を補うこともできる。もちろん中欧はドイツ企業の工場が多く立地するドイツ製造業の後背地であり、北欧も小国でありながら世界規模のメーカーが密集するため、ドイツの製造業はこれまで以上に強化される。製造業の分野ではドイツ帝国はアメリカ合衆国を超えるだろう。総合的な国力としてはアメリカ合衆国の2/3程度の規模となり、アメリカ合衆国と十分に覇権を争うことができる。

超大国ドイツは空想の産物ではない。ドイツ帝国、ナチスドイツがイギリス、フランス、ロシア、アメリカ合衆国といった世界の大国全てを敵に回して世界大戦に突入したのは、自国に並々ならぬ自信を持っていたからであろう。ドイツに大局的な外交センスさえあれば、超大国ドイツ帝国は現実のものになっていたはずである。ヨーロッパ随一の知性であるエマニュエル・トッドも著書「ドイツ帝国が世界を破滅させる」において、EUシステムによって今後ドイツが超大国になる可能性を指摘している。史実では失敗に失敗を重ねたドイツであるが、少しでも歴史が変わっていれば現在は間違いなく超大国の地位に就いていたはずである。

ドイツが世界大戦で敗れた最大の要因は、ロシアとゼロサムの全面戦争に突入して国力を疲弊させたことであった。ドイツとロシアは東欧において利害関係が対立しやすいが、両国が同盟を結ぶメリットは非常に大きい。もしランドパワーの二大勢力であるドイツ帝国とロシア帝国がお互いに同盟を結んでいたら、両国はこれ以上ないほどの安全保障を得ることができただろう。ドイツ帝国はヨーロッパと中東、ロシア帝国は極東と中央アジアにおいて勢力の拡大に勤しむことができるようになる。また、ドイツの製造業とロシアの資源産業は補完関係にあるため、両国は経済的パートナーとしても相性が良い。ヨーロッパ大陸におけるゲルマン民族の統合、中欧への積極的な入植に加えて、ロシア帝国との同盟がドイツ帝国を超大国に飛躍させる鍵となるだろう。

2015年10月14日水曜日

岩手旅行記録

今年は何故か岩手県に四回も旅行している。東北自動車道を北上するのにも大分慣れたような気がする。関東と違って東北の高速道路は視界が開けており、運転するだけでも楽しめるのが良い。岩手県は宮城県の陰に隠れて地味なイメージがあるが、三陸のリアス式海岸、奥羽山脈の活火山と風光明美な土地が多い。

◆岩手山
最初に行ったのは7月の岩手山であった。岩手県の最高峰で2000mの高さがある。岩手山というと、壬生義士伝の主人公である南部藩出身の吉村貫一郎の言葉を思い出す。南部盛岡、それは美しいところでござんす、南に遠く早池峰山、西は南昌山に東根山、北の御山は岩手山、姫神山、ぐるりを高い山々に囲まれて、城下を流るる中津川は桜の馬場の下で北上川と合流いたしやす、いやあこんたな絵に描いたような土地はこの日の本に二つとなござんす。

南部富士の名称通り、富士山のように綺麗な形をした山である。江戸時代に溶岩流が発生し、現在も焼走り溶岩流として黒い岩原が残っている。本来の山道を外れて、何故か途中この溶岩流を登った。山頂まで5時間くらいかかったが、途中で水がなくなり死ぬかと思った。でも、山頂付近から見えた小さな碧い湖は綺麗だった。クリスタルガイザーやエヴィアンのCMに出てきそう。




◆盛岡
8月は盛岡さんさ踊りに行った。さんさ踊りは南部藩の時代から続く和太鼓を用いた踊りであり、東北夏祭りの一つである。盛岡城の堀の近くから見学した。踊り手が次々と道路に繰り出す形式で、企業や学校などいろいろな団体が参加していた。わんこ兄弟もいる。やはり祭りの衣装は赤い色が一番似合う。





さんさ踊りと合わせて、盛岡市の北西に位置する小岩井農場にも行った。観光エリアはまきば園として開放されている。馬には乗ったが、できれば羊とか山羊とも触れ合いたかった。今年の夏は何故か盛岡競馬場に二回も行き、馬と触れ合う機会が多かった。


◆浄土ヶ浜
8月は三陸海岸随一の景勝地である浄土ヶ浜にも行った。坂の上から見下ろした浄土ヶ浜が一番綺麗だったが、写真がないので近くから撮った浄土ヶ浜を一枚。以前訪れたときは海水浴客は一人もいなかったが、この日は完全な海水浴場と化していた。しかし、寒流の千島海流が流れる岩手の海は寒かった。


◆栗駒山
ラストは10月の栗駒山である。栗駒山は紅葉で有名な山で、岩手県、宮城県、秋田県と三県の県境に位置する。山道の入口には須川温泉があり、須川高原温泉と栗駒山荘の二軒の温泉宿が存在する。どちらも眺めの良い露天風呂が有名なので、是非入ってみたい。紅葉も綺麗だが、寂しげな雰囲気の漂う湿原も良い。




2015年10月4日日曜日

独占禁止法から考える電力業界の再編

独占禁止法に抵触する市場占有率の目安は5割とされている。スケールメリットによる競争力向上を求めるのであれば、各業界の企業はいずれ2社もしくは3社に収斂していくと考えられる。航空業界は日本航空と全日本空輸の2社体制、通信業界はNTT、KDDI、ソフトバンクの3社体制が既に確立されている。経済産業省が業界再編に躍起になっていることもあり、今後の日本では大企業の合併による業界再編が加速していくと思われる。

鉄鋼業界は2012年に新日鐵住金が誕生したことで、2002年に誕生したJFEホールディングスとの2強体制が出来上がった。ただし、2社で完全にシェアを独占できているわけではない。新日鐵住金が3割強、JFEホールディングスが2割強、複数の鉄鋼メーカーが残りのシェアを少しずつ持ち合っている。それでも新日本製鐵と住友金属が合併するときに、シェアの高い一部製品の事業を別会社に譲渡せざるを得なかった。今後は業界3位で1割強のシェアを有する神戸製鋼所が既に新日鐵住金と提携しているため、更なる合併へと進む可能性が噂されているが、次は独占禁止法に抵触する恐れもある。

鉄鋼業界と並んでスケールメリットの発揮しやすい石油業界も再編が進む。2010年に誕生したJXホールディングスが3割のシェアを有し、業界2位の出光興産が2割弱、業界3位~5位のコスモ石油、東燃ゼネラル石油、昭和シェル石油がそれぞれ1割強のシェアを有する。国内の原油精製能力は過剰な状態が続いており、各社がジリ貧に陥る前に経済産業省は製油所の統廃合を進めたい考えである。今回、出光興産が昭和シェル石油を吸収合併することでJXホールディングスと並ぶ3割のシェアを有することになる。残るコスモ石油と東燃ゼネラル石油は千葉県の製油所を統合する方針で、更に提携を加速させて第3極を構築する可能性がある。あるいは、各社がJXホールディングスか出光興産の陣営に加わり、2強体制が確立されると思われる。

鉄鋼業界、石油業界と並ぶ重厚長大型の産業である電力業界とガス業界は効率性の観点から地域独占が認められており、先の二つの業界とは状況がやや異なる。電力大手は卸電気事業者である電源開発も含めて11社、ガス業界は大手こそ東京ガスと大阪ガスの2社に絞られるものの、中小のガス会社が無数に乱立した状態にある。送電網とガス導管網が電力大手とガス大手のコントロールから離れ、一般家庭まで小売りの全面自由化が進むことで、鉄鋼業界と石油業界の後に続いて今後は電力業界とガス業界でも業界再編が進むだろう。これはヨーロッパの電力会社・ガス会社BEST10で述べたように、2000年代に電力システム改革を成し遂げたヨーロッパ諸国で見られる現象である。最大で2社、多くても5社程度までには集約が進むのではないか。10年後の電力業界・ガス業界では東京電力と中部電力を中心としたグループ、関西電力を中心としたグループ、東京ガスを中心としたグループの3社に業界が集約されると予想した。電力業界とガス業界については、全国レベルでの市場占有率を気にする必要は今のところない。

しかし、地域レベルでの市場占有率には注意する必要がある。燃料や資材の調達、販売拠点の共通化などでスケールメリットを発揮しやすいが、同じ地域内で電力会社とガス会社が合併することは難しいだろう。例えば東京電力と東京ガスの合併、関西電力と大阪ガスの合併などである。電力会社とガス会社は電化とガス化でエネルギー需要を奪い合う関係にあり、同じ地域の電力会社とガス会社が合併した場合はこのエネルギー需要をめぐる競争が働かなくなってしまう。隣接する地域の電力会社が合併するのも難しいだろう。例えば関西電力と中部電力はトヨタ自動車の工場への電力供給をめぐって争ったことがあるが、両社が合併してしまうとこのような競争が起こりにくくなる。そのため独占禁止法に抵触する恐れがある。

公正取引委員会に認められると思われるのは、隣接する地域の電力会社とガス会社が合併することである。例えば、中部電力と大阪ガスの合併である。関西電力と大阪ガスは関西圏のエネルギー需要をめぐって熾烈な争いを繰り広げているが、中部電力の電源が大阪ガスに備わることで両社の争いは一層苛烈なものとなるだろう。大阪ガスの営業網を使って中部電力が電気を関西圏に供給する。電気とガスのセット販売もあり得るだろう。同じことは首都圏にも言える。東京ガスと東北電力が合併すれば、首都圏の電力市場をめぐる競争が促進される。

また、地域が離れた電力会社同士の合併は、電気の越境販売を阻害せずに、むしろ促進すると考えられる。東京電力が関西圏の電力市場を狙うとき、中国電力や北陸電力と手を組むことは効果的である。首都圏の発電所から関西圏に電気を供給するより、中国電力や北陸電力の発電所から電気を供給する方が送電コストがかからない。また、関西圏に発電所や営業所を設けるときも、共同で運営することで効率化を図ることができる。関西電力と中部電力が首都圏の電力市場を狙う時も同じことが言える。東北電力と手を組むことで、効率的に首都圏の電力市場を攻めることができる。このことから電力会社同士の合併についても、地域が隣接していなければ起こりうる可能性はある。