2015年11月24日火曜日

冴えない彼女の育てかた9巻 感想

冴えない彼女の育てかた (9) (ファンタジア文庫)
丸戸 史明
KADOKAWA/富士見書房 (2015-11-20)
売り上げランキング: 10,646

このライトノベルがすごい!2016の作品部門で冴えない彼女の育てかたが9位に入賞。7巻で丸戸史明の本領が発揮されて大化けしたのと、アニメ効果が大きいと思われる。アニメは続編制作も決まっているので、原作が失速しなければ来年も良い結果が期待できそう。さらにキャラクター部門ではソードアート・オンライン、とある魔術の禁書目録、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。の3作品が圧倒的な強さを見せる中で、御坂美琴、雪ノ下雪乃、一色いろは、由比ヶ浜結衣、アスナに次ぐ6位に加藤恵が入賞。加藤は2015年のアニメ業界で最も人気の出たヒロインと言っても過言ではないかもしれない。

そんな加藤は9巻では出番がほとんどなし。物語としては英梨々と並んで今回も重要な人物ではあったが、最初と最後しか見せ場がなかった。8巻の最後で英梨々が天才イラストレーターとして覚醒したことを見せつけられて、仲直りに近付いていた加藤と英梨々の関係は再び振り出しに戻ってしまい、9巻のプロローグは不機嫌そうな加藤からスタート。倫也の部屋でサークル会議をしているが、加藤の意向で伊織のみ部屋に呼ばれず。8巻での経緯から伊織は加藤から睨まれてしまったようである。そして「早く食べないと料理が冷めちゃうよ」の一言で、伊織とのビデオ通話を無言で強制遮断する加藤。挿絵でも禍々しいオーラを放っており、サークルでの役職が黒幕になりつつある…。

一方、倫也と同じクラスになった英梨々はそのような事情も知らず、倫也と上手くやっている模様。教室で一緒にランチタイムと、二人の仲は完全に修復されたようである。小学生のときの裏切りに加えて、サークル脱退まであったのに普通に英梨々と仲良くしている倫也が意外。倫也は英梨々に対して甘い気がする。英梨々は加藤と仲直りができていないことに不安な様子。

黒いオーラを放つ加藤によってギスギスした雰囲気の新生blessing software。英梨々の才能を目の当たりにして、出海もイラストレーターとしての自信を失ってしまっている様子。伊織の提案で出海は倫也の家でギャルゲー合宿を行うことに。伊織の提案には理由があって、出海が無意識に英梨々の絵に似せようとしており、ギャルゲーのプレイを通して求められている絵が別のものであることを分からせたかったみたい。

合宿は失敗に終わるが、出海と入れ替わりにやって来た美智留が久々に良い働きをする。倫也がブラック加藤と出海のスランプに悩んでいることを見抜いて、倫也を助けてあげられそうな人がいることについて言及する。そして美智留の手回しによって、雨の中ずぶ濡れで倫也を待つ詩羽先輩が登場。詩羽先輩のアドバイスは倫也がシナリオを書くこと。そして倫也は英梨々をモデルにしたヒロインのシナリオを書くことに。いつもなら加藤のアドバイスで倫也が動いて問題解決に向かうが、今回は当の加藤自身が問題となっているため出番はなし。まぁ、美智留と詩羽先輩の出番がなさすぎて、無理に登場させた感も否めない。

倫也は英梨々と徹夜で過去の記憶を共有していき、英梨々には内緒で実体験に基づいた英梨々ルートのシナリオを書く。これが帯にあった「俺は英梨々を裏切って、そして英梨々に告白する」のことかと思われるが、どのような告白をしたのかは書かれていない。ただ、倫也が書いた英梨々ルートのシナリオは内容がいろいろとおかしい。初めは物語で出てきた話を踏襲したものだったが、途中から有り得ない展開に。倫也って英梨々でそんな妄想をするキャラだったっけ…。そして英梨々ルートのラストでは英梨々がblessing softwareに戻って来たような描写がある。

【主人公】「いや、思い切り過ぎだろお前……色んなこと、犠牲にするかもしれないぞ?」
【英梨々】「違うよ……全部を犠牲にしないために、こうするの」
【英梨々】「自分の夢も、友情も……そして、あんたもね?」

倫也はやっぱり英梨々に戻って来て欲しいみたいである。英梨々とどんな話をしたのかは分からないが、これを今後の展開に対する伏線と考えるのであれば、英梨々を受け入れられるくらい価値のあるサークルにblessing softwareを育てあげることが倫也の今後の目標になりそう。その目標は親友である英梨々を取り戻したい加藤とも一致するところである。そして英梨々ルートを読んだ加藤は「どんだけ英梨々のこと好きなの安芸くん」と一言。紛うこと無く倫也が英梨々に恋愛感情を持っていることが明らかになった巻であった。

そして倫也が書いた英梨々シナリオはサークルの問題を解決することに。澤村英梨々(仮)と叶巡璃のギスギスしたシーンまで書いた倫也のシナリオはドロドロすぎて、シナリオを挽回するため出海はコテコテの萌え絵を描かざるを得ない状況に追い込まれて吹っ切れた様子。そして英梨々に無許可でシナリオのネタ集めをした倫也に代わって、加藤は直接英梨々に謝りに行くと言い出す。そして自分が英梨々と巡璃の仲直りシナリオを紡ぐことを宣言。物語とゲームのシナリオが完全にリンクし始めた。現実に進行する物語がゲームのシナリオに影響を与え、一方で加藤、英梨々、倫也の三角関係の行方が、倫也自身が書くシナリオによって左右されるというのは斬新で非常に面白い展開。丸戸史明はメタな話が好きだと思っていたが、物語の内部にまでメタ構造を取り入れてしまうとは。

ラストは加藤の一言。

「だから、わたしの……メインヒロインのシナリオも、すごく期待してるからね?倫也くん」

加藤は倫也に対して恋愛感情は抱いていないことになっているが、これってほとんど告白のような気がする。この一言でラストは全て加藤が持っていった感まである。現実世界で倫也と加藤はどんな物語を紡いでいくのか。次は加藤メインの話が来そうな予感。あとがきによると次巻はGirls Sideの第二弾になる予定とのこと。今回の物語の裏で美智留と詩羽先輩はどのような話をしていたのか、加藤と英梨々の仲直りはどのように決着するのかなど、倫也のいない場面のことが書かれるらしい。Girls Sideは番外編的な扱いであるが、本編以上に物語において重要だったりするので待ち遠しい。

0 件のコメント:

コメントを投稿