2015年11月3日火曜日

北陸電力と中部電力 合併の可能性

北陸電力は電力業界の優等生である。震災後、全国の原子力発電所が停止して、多くの電力会社は電気料金の値上げに追い込まれた。北海道電力と関西電力に至っては、既に二回も値上げを行っている。その一方、原子力発電所の停止に苦しみながらも、電気料金の値上げを一度も行っていない電力会社が存在する。それは北陸電力と中国電力である。特に北陸電力は発電コストの低い水力発電所を多く有しており、北陸地方は全国で最も電気料金の安い地域となっている。北陸電力は電力業界の優等生と言えるだろう。

しかし、北陸電力は将来苦境に陥る可能性がある。まず、一つ目の要因として志賀原子力発電所の再稼働が困難なことが挙げられる。志賀原子力発電所は能登半島西部に位置し、1993年に運転を開始した比較的新しい発電所である。震災前は北陸電力の電源構成の三割を担い、中部電力や関西電力にも電力を供給していた。ただし、原子力規制委員会から原子炉建屋直下に活断層が存在する可能性が指摘されている。東北電力の東通原子力発電所も発電所構内に活断層が存在する可能性が指摘されているが、志賀原子力発電所の場合は原子炉建屋の直下であるため、クロと判断されれば大規模な改修工事が必要となり、経営判断として廃炉になる可能性も否めない。原子力規制委員会は活断層が存在しないことを証明するように求めているが、これはそもそも悪魔の証明で電力会社にはどうすることもできない問題である。社会がどこまでリスクを許容できるのかというリスク論の問題として議論しなければ意味がないはずなのだが、なし崩し的に廃炉まで追い込まれそうな状況である。福島第一原子力発電所と同じ沸騰水型の原子炉であることも再稼働の障害となるだろう。

さらに石炭火力の規制が北陸電力に致命傷を与える可能性がある。震災後、発電コストの低い石炭火力発電所の新増設計画が次々と浮上しているが、石炭火力は二酸化炭素排出量が多く、政府の環境政策とは逆行する動きである。そのため経済産業省は2016年度から火力発電に占める石炭火力の割合を5割までとするように電力会社に求める方針である。北陸電力は現時点でLNG火力発電所を有していない。富山新港火力発電所の石炭火力をLNG火力(42.47万kW)にリプレースする計画ではあるが、既存の石炭火力を次々とLNG火力にリプレースしていかなければ、北陸電力が石炭火力を5割に抑えることは難しい。東京電力や関西電力といった規模の大きな電力会社ほどLNG火力の導入が進んでおり、北陸電力のような地方電力は今後石炭火力の規制に苦しめられるだろう。発電コストの低い石炭火力は水力発電と並んで、北陸電力の競争力の源となっていたため、今回の石炭火力の規制は北陸電力の屋台骨を揺るがす事態である。

志賀原発の活断層と石炭火力の規制で苦境に陥る北陸電力は今後どうなるのか。北陸電力は北海道電力、四国電力と並んで規模の小さな電力会社である。志賀原子力発電所の大規模改修、最悪の場合は廃炉に耐えるだけの経営体力があるのか。一歩間違えれば、北陸電力も北海道電力のような財務状況に陥りかねない。そのため北陸電力は意外にも、電力会社の合併第一号となる可能性がある。10年後の電力業界・ガス業界では電力業界とガス業界がいずれ3グループに集約していく可能性について論じ、北陸電力は関西電力と同じグループを形成していくのではないかと予想した。北陸電力は競争力の強い電力会社であるため、あくまでも対等な関係で緩やかに関西電力とグループを形成していくと考えていたのである。しかし、石炭火力の規制によって状況は変わった。北陸電力は直ちに他社との合併に追い込まれる可能性がある。

北陸電力の合併相手として想定されるのは関西電力ではなく中部電力である。関西電力は原子力発電への依存度が高いために財務状況が芳しくなく、志賀原子力発電所の面倒まで見る余力はない。一方、中部電力も浜岡原子力発電所の停止によって赤字に追い込まれたが、原子力発電への依存度が低いために大手電力の中では比較的良好な財務状況である。志賀原子力発電所の再稼働を支援できるのは中部電力をおいて他にない。中部電力は東京電力、関西電力と並んでLNG火力の比率が高いため、北陸電力は中部電力と合併することで石炭火力5割の規制をクリアすることもできる。中部電力にとっても北陸電力の持つ水力発電所と石炭火力発電所はコスト競争力を高める上で魅力的であり、首都圏や関西圏に進出する上で強力な武器になるだろう。ウィンウィンの関係を築ける北陸電力と中部電力の合併、その可能性は決して低くはないと思われる。

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