2015年11月8日日曜日

酒類業界の再編 キリンサントリーVSサッポロアサヒの二強体制になるか

酒類業界の世界的再編が進んでいる。ビール業界1位のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)は業界2位のSABミラー(イギリス)を買収する予定であり、合併後の世界シェアは3割に達する。ベルギーのインターブリューが2004年にブラジルのアンベブと合併し、2008年にアメリカ合衆国のアンハイザー・ブッシュを買収して、業界1位のアンハイザー・ブッシュ・インベブは誕生した。2000年代に入ってから、世界のビール業界は急激な再編期を迎えている。SABミラーは業界3位のハイネケン(オランダ)を買収してアンハイザー・ブッシュ・インベブに対抗しようとしたが、ハイネケンの買収に失敗して自らが飲みこまれる形となった。業界2位の大企業だけあって、SABミラーの買収額は12兆9000億円という聞いたこともないような金額になる。

日本の種類業界も国内市場の成長が見込めないため、近年は海外メーカーを積極的に買収している。海外進出に最も積極的なキリンは2009年にオーストラリアのビール業界2位ライオンネイサン、2011年にブラジルのビール業界2位スキンカリオールを買収している。飲料メーカーの売上は小売店や飲食店との関係に左右されるため、海外市場に進出するためには現地メーカーの買収が欠かせない。サントリーも2014年にアメリカ合衆国の蒸留酒市場において2番手のビームを1兆6500億円で買収した。アサヒは中国市場への進出に強みがあり、中国のビール業界2位の青島ビールと提携関係にある。サッポロも上位3社に遅れてはいるが、ベトナムにビール工場を建設して東南アジアへの進出を図っている。

しかし、国内における業界再編は世界に比べて遅れており、日本の種類業界は長らくキリン、アサヒ、サントリー、サッポロの四強体制が続いている。ビールに関してはスーパードライという化物ブランドを持つアサヒがトップを走り続け、酒類全体の売上ではキリンがトップの座を維持してきた。近年はサントリーが好調で、2000年代後半からサントリーの快進撃が見られるようになる。サントリーはウイスキーで有名な会社で、ビール事業は1963年の開始から常に赤字が続いていた。そんなサントリーのビール事業を救ったのが、ヨーロッパのモンドセレクションで最高金賞を3年連続で受賞したザ・プレミアム・モルツであった。ザ・プレミアム・モルツはサッポロのヱビスビールを抜いて、プレミアムビールにおいてトップの地位を築き上げた。ビーム買収によって売上高を伸ばしたサントリーは2014年度の売上高でキリンを超え、ついに国内の酒類業界1位の座に躍り出た。キリンは純利益においてサントリーとアサヒの後塵を拝するようになり、業界の構図は一変した。
 
サントリーとキリンは2000年代後半に経営統合交渉を行っていたことが知られている。酒類業界の世界的再編が進む中で、海外メーカーからの買収を防ぐため、また海外市場に進出するため、統合による規模の拡大は欠かせない。しかし、サントリーは創業家の資産管理会社である寿不動産が株式の9割を有する大企業としては特殊な会社で、創業家の鳥井家と佐治家が経営を独占している。統合の比率によってはサントリーの創業家がキリンを乗っ取ることになるため、この統合交渉は破談に終わった。キリンはサントリーの価値を自社の半分と見積もって統合交渉に臨んだが、これはサントリーとしては受け入れられるものではなかった。

現在、サントリーはキリンを抜かして国内トップの地位に立った。佐治信忠が外部より招聘した新社長の新浪剛史はローソンの社長を務めていたが、元は三菱商事の出身である。キリンは三菱グループの代表的企業であり、新浪剛史の社長就任によってサントリーはキリンと三菱という絆で結ばれることになった。前回の統合交渉破綻は三菱グループがキリンの流出を恐れたことが一因とされている。新浪剛史の社長就任はサントリーの三菱グループ入りと引き換えに、サントリーによるキリンの統合が内々に認められたことを意味すると思われる。

サントリーとキリンの統合に対して、アサヒとサッポロはどう立ち向かうか。実は両社は戦前は大日本麦酒という同じ会社に属していた。アサヒの前身である大阪麦酒、サッポロの前身である札幌麦酒、ヱビスビールを製造する日本麦酒が1906年に合併して誕生した会社で、市場占有率の高さから戦後にアサヒとサッポロに分割されることになった。キリンサントリーが誕生すれば、対抗してサッポロアサヒが生まれる可能性は十分にあるだろう。キリンサントリーとサッポロアサヒで国内ビール市場のシェアを半分ずつ占める形となるため、国内での競争促進の観点から両社の合併は認められるものと思われる。酒類業界は二強体制に再編されるかもしれない。

また、酒類業界の再編は流通業界との関係を変える可能性がある。流通業界はセブン&アイとイオンの二強体制となっているが、近年はコンビニ業界におけるセブンイレブンの圧倒的優位性からセブン&アイが利益面でイオンを大きくリードするようになっている。セブン&アイという共通の敵を持つイオンとコンビニ業界2位のローソンはどちらも三菱商事を筆頭株主とする三菱グループの一員であり、三菱商事によって両社の合併が主導される可能性がある。メーカーが多くの小売店に自社商品を売って欲しいと思うように、小売店も客を増やすために多くのメーカーの商品を揃えたいと思う。そのためメーカーと小売店が特別に強固な関係を結ぶことはあまりなかった。しかし、キリンとサントリーの統合、イオンとローソンの統合が状況を変えるかもしれない。キリンサントリーは圧倒的な商品の種類、イオンローソンは多様な販売ルートを持つようになる。そのため三菱グループの関係を活かして、キリンサントリーはイオンローソンに優先的に商品を提供、イオンローソンもキリンサントリーの商品を優先的に取り扱うという禁断の関係に足を踏み入れることができるようになるかもしれない。その場合はセブン&アイがサッポロアサヒと提携するようになるだろう。メーカーにとっても小売店にとってもリスクのある選択だが、可能性は十分に考えられる。

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