2015年12月28日月曜日

大正昭和の電力戦から予測する今後の電力業界

2016年4月から電力の小売全面自由化が始まり、2020年には送配電部門の法的分離が行われる。1951年に始まった発電、送配電、小売の垂直一貫体制による電力会社の地域独占は終わりを迎える。工場、オフィス、商業施設といった高圧需要については既に自由化が始まっているが、これまで本格的な競争は進んでこなかった。新電力の参入は見られるものの、電力会社同士の競争が進まなかったためである。しかし、原子力発電所が稼働停止に追い込まれたことで電力会社の経営状況は悪化している。人口減少による日本経済の縮小も確実である。今後は電力会社も生き残りを賭けて自由競争を戦う必要に迫られる。

ヨーロッパに遅れること20年、日本でも電力業界が自由競争の時代に突入することについて革新的と捉えるような風潮がある。しかし、日本の電力業界は過去に自由競争を経験したことがある。1939年に日本発送電が設立されて電力が国家に管理されるまで、戦前の日本では電力会社が市場をめぐる争奪戦を繰り広げていた。特に1920年代からは電力会社が集約されて、東京電燈、東邦電力、大同電力、日本電力、宇治川電気の五大電力会社による壮絶な電力戦が行われた。100年前に起きた電力戦は今後の電力業界を予想する上で大いに参考になると思われる。

日本最初の電力会社である東京電燈が設立されたのは1883年のことであった。戦前の日本は水主火従の電源構成であったことが知られるが、明治時代は火力発電が中心であった。日本の工業化と都市化が進むにつれて電力需要は増加し、これに応える形で各地で次々と電力会社が勃興した。電力需要の中心である鉄道事業を兼業する電力会社が多く、東京電燈も江ノ島電鉄などの経営を行っていたことがある。大正時代に入ると水力発電所の開発が始まり、大規模電源を獲得したことで電力会社は価格競争による需要獲得を目指すようになる。この過程で資本力の弱い電力会社は破綻あるいは買収されて、先に述べた五大電力会社に集約されるようになった。

五大電力の内、大同電力と日本電力は卸売に特化した電力会社であった。1914年に第一次世界大戦が始まると戦争特需によって日本は好景気に見舞われ、景気の上昇に伴って電力需要も増加したため電力不足が懸念されるようになった。これに対応すべく、山岳地帯での水力電源開発と首都圏、中京圏、関西圏の三大市場に向けた長距離高圧送電線を整備する動きが出る。大同電力は木曽川流域で、日本電力は北陸地方で水力発電所の開発を進め、1920年代には大規模電源が次々と生まれることになった。大同電力と日本電力は自前の供給先をほとんど持たなかったため、各地の電力会社に電力を供給することで経営を成り立たせていた。

しかし、第一次世界大戦の終戦によって1920年代から日本は不況の時代に突入する。1923年には関東大震災が発生し、銀行の破綻も相次いだ。1929年にアメリカ合衆国を震源として世界恐慌が発生すると、1930年には戦前で最も深刻な不況と言われる昭和恐慌が到来する。不景気になったことで電力需要の伸びは鈍化した一方、次々と水力発電所が開発されたために電力市場は供給過剰の状態に陥った。新興の電力会社である大同電力と日本電力は低コストな電源を武器に、既存の電力会社に対して価格競争を挑むことになる。首都圏の東京電燈、中京圏の東邦電力、関西圏の宇治川電気は守勢に立たされることになり、東邦電力は日本電力から、宇治川電気は大同電力から電気の供給を受けることを強いられる。

東邦電力は一時は劣勢に追い込まれたものの、副社長である松永安左エ門の科学的経営と称されるコスト削減によって価格競争力を取り戻す。東邦電力は群馬電力と早川電力を買収して両社を東京電力(現在の東京電力とは異なる)に再編し、首都圏の電力市場をめぐって東京電燈に価格競争を挑むことになる。東邦電力と東京電燈の競争は激しく、採算度外視の価格競争は両社の経営状況を悪化させることになった。最終的に電力事業を所管する逓信省と金融機関の仲裁によって、東京電燈は東京電力と合併することとなった。電力戦は小規模な電力会社を淘汰し、巨大な五大電力を生み出すに至った。しかし、その五大電力でさえも長引く価格競争によって経営状況を悪化させ、最終的に国家統制を受けるようになったというのが電力戦の顛末である。

電力戦は水力発電所の開発と不況による電力の供給過剰が主要な原因であった。現在の状況を見ると、原子力発電所の停止によって電力需給が逼迫し、首都圏を中心に大規模な火力発電所の開発計画が相次いでいる。また、再生可能エネルギーの固定価格買取制度によって太陽光の発電量が急増している。九州電力の川内原子力発電所を皮切りに、今後は停止していた原子力発電所が次々と再稼働に向かう見込みである。火力発電所の新増設、太陽光発電の普及、原子力発電所の戦線復帰、これらによって日本の電力市場は100年前と同じような状況に陥る可能性がある。石炭火力の規制、太陽光発電の買取価格下落など、将来の供給過剰を抑制する動きは出ているが、一歩間違えれば戦前の二の舞になりかねない。電力市場が供給過剰になることは消費者からすると良いことのように思われるが、電力会社の経営が安定しなければ発電所や送電線への投資が減少して、将来的に電力の安定供給が保たれなくなる可能性がある。

電力戦では資本力の強い電力会社が他の電力会社を呑み込む形で供給地域を広げて肥大化していった。電力会社で最も規模の大きな東京電力は福島第一原子力発電所の廃炉と賠償でM&Aに資金を回している余裕はない。また、二番手の関西電力も原子力発電への依存度が高く、他の電力会社が黒字化を果たす中で未だに赤字経営を脱却できていない。こうなると原子力発電への依存度が低く、財務状況が比較的良好な中部電力が台風の目となりそうである。電力戦においても中京圏を拠点とする大同電力と東邦電力は首都圏にも関西圏にも進出できる地の利を活かして、電力戦を仕掛ける立場であった。

北陸電力と中部電力 合併の可能性において予測したように、石炭火力の規制と志賀原子力発電所の活断層問題に苦しむ北陸電力は中部電力の傘下に加わる可能性が高い。北陸電力の水力発電所と石炭火力所は中部電力に安価な余剰電源を与え、同社が首都圏と関西圏に進出する上で大きな武器となる。中部電力と東京電力は燃料調達と火力発電所の新設において事業を統合したが、電力戦は協調と対立の歴史であった。発電部門で協力するからと言って、小売部門で対立しないとは限らない。さらに中部電力は天然ガスの調達やパイプラインの運営で大阪ガスと協力関係にあり、関西圏の電力市場を狙って両社が合併する可能性も大いに有り得ると考える。中部電力の発電所と大阪ガスの顧客網が組み合わされば、原子力発電所の停止によって電気料金が跳ね上がっている関西電力からシェアを奪うことは造作もないだろう。

中部電力と大阪ガスの関係は東北電力と東京ガスにおいても言える。東北電力と東京ガスは北関東の高圧需要家向けに電力を供給するシナジアパワーという新電力を設立したが、これは将来両社が共同で首都圏の電力市場に参入する布石ではないかと思われる。電力戦においては需要家の確保が何よりも重要で勝負の決め手となった。電力会社と同じく地域独占で需要家を持つガス会社は、電力会社が供給先を確保するために是非とも提携したい存在である。隣接する地域の電力会社とガス会社は必然的にペアを組むことになり、電力戦のときのように資本力を増やすため合併に至る可能性も高い。自由競争が始まって10年も経つ頃には、ガス会社を巻き込んで電力会社も複数のグループに集約されているのではないだろうか。

2015年12月27日日曜日

ごちうさメンバーを国に例えるなら

ごちうさメンバーは国に例えるのが簡単で、国がモチーフになっているのではないかと思われるくらいである。まず、主人公のココアはアメリカ合衆国である。明るく社交的で気持ちをストレートに表現する性格はアメリカ人そのものである。ココアはチノを妹のように溺愛しているが、四兄妹の末っ子という生い立ちが妹好きの性格につながっている。アメリカ合衆国も18世紀に誕生した歴史の新しい国であり、今ではイギリスの庇護者としてお姉さん的存在になっている。ココアの実家はパン屋であり、ココアは小麦粉のような匂いがすると千夜に評されているが、これも農業大国で小麦の生産量が多いアメリカ合衆国のイメージと共通している。ココアは将来の夢として、パン屋、バリスタ、小説家などを挙げているが、その中の一つに弁護士というのがある。兄の影響で弁護士に憧れを抱いているらしいが、弁護士といえば司法の力が強いアメリカ合衆国の代表的な職業でもある。ちなみにココアの原料であるカカオもアメリカ大陸原産である。

もう一人の主人公であるチノはイギリスに例えられる。礼儀正しいがシャイで気持ちを素直に伝えられない性格はイギリス人と良く似合ている。イギリスとアメリカ合衆国は姉妹国の関係にあり、これもココアとの関係に一致する。チノの趣味であるチェス、ボトルシップ、パズルはいかにもインドアなイギリス人が好みそうである。チノは家業の喫茶店を継いでバリスタになることを志しているが、これも伝統を重んじるイギリス人のようである。ごちうさはイギリスの児童小説である不思議の国のアリスをエッセンスとして取り入れており、そのエッセンスは主にチノに振り向けられている。

軍人に憧れを抱くリゼは歴史的に軍事国家としてのイメージが強いドイツが似合う。文武両道の秀才で、真面目かつ頑固な性格もドイツ人と同じである。ヨーロッパ人の間ではドイツ女性はワイルドで男勝りなイメージがあるらしく、これもリゼと共通する点である。リゼは豪邸に暮らすお嬢様としての一面も持っており、ヨーロッパ一の富裕国であるドイツが意識されているような気がする。ちなみにラビットハウスのメンバーを国に例えると、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツといずれもゲルマン系の国家になった。

千夜は名前が一人だけ漢字であることからも明らかに日本である。和風喫茶甘兎庵の看板娘であるため基本的に和服を着ており、黒髪の大和撫子といった雰囲気はこれでもかと言うくらい日本っぽさが意識されている。人の影響を受けやすいところ、オカルトや噂話の類が大好きなところも日本人という感じがする。おっとりした性格の千夜は明るく社交的なココアと仲が良く、日本とアメリカ合衆国の関係に似ている。チノと同じく家業の喫茶店を継ぐことを志しており、これも伝統を重んじる日本人のようである。

最後にシャロはフランスである。クールで少し気取ったところのある性格はフランス人に似ていて、お嬢様っぽい華やかな雰囲気もブルボン朝時代の豪華なヴェルサイユ宮殿や洗練されたパリの街が似合いそう。華やかなイメージとは違って実は貧乏なところも、パリの他には農村しかなく、商業でイギリスに負け、工業でドイツに負けたフランスと重なる部分がある。チノのラビットハウスが英語であるのに対して、シャロが働く喫茶店フルール・ド・ラパンもフランス語である。年下であるチノを例外としてシャロはスレンダーなスタイルであることが特徴であるが、実はフランス人も欧米の中ではスレンダーなスタイルで有名である。アメリカ合衆国やイギリスでは3人に1人が肥満であると言われるが、フランスでは10人に1人もいない。

2015年12月25日金曜日

電力比較サイトエネチェンジについて

電力比較サイト エネチェンジがなかなか面白い。契約メニューとアンペア数、毎月の電気料金、住所、世帯人数、オール電化住宅かどうか、電気を使うのは主に昼か夜か、これらの質問に答えると最適な電気料金のプランを提案してくれる。例えば夫婦二人暮らし、共働きで帰宅は夜10時過ぎみたいな家庭であれば、一般的な従量電灯から時間帯別電灯の契約への変更を勧められるといった具合である。ただし、このサイトが本領を発揮するのは2016年4月に控える電力の小売全面自由化以降である。どの電気料金のプランが適しているかだけではなく、どの電力会社のプランが適しているかも教えてくれるためだ。

昨日、新電力の本命である東京ガスが低圧向けの電気料金プランを発表した。東京電力の従量電灯に該当する「ずっとも電気」の契約は使用量の多い世帯にとってメリットのある契約である。ナショナル・ミニマム(国家が国民に保証する最低限の生活水準)と省エネの観点から、電気は使えば使う程に1kWh当たりの単価が高くなる仕組みとなっている。東京ガスのプランは1kWh当たりの単価の上昇を低めに抑えるもので、使用量の多い世帯を東京電力から奪おうとするものである。首都圏に住む使用量の多い世帯がエネチェンジで診断すると、恐らく東京電力から東京ガスへの乗り換えを勧められることだろう。ちなみにWebサービスだけでは不安という人は「でんきコンシェルジュ」というのに相談できるらしい。「でんきコンシェルジュ」というのは何だかセンスのない名前だと思うが、エネチェンジのサービス自体はこれから非常に需要の出てくるものだと思う。

電力会社もエネチェンジのようなWebサービスは既に開始している。東京電力のでんき家計簿、関西電力のはぴeみる電が有名で、膨大な顧客データに裏打ちされたサービスは電力会社の強みである。また、電力会社のコールセンターに電話をすれば最適な契約メニューや電気の使い方について相談することができる。しかし、電力会社が新電力への乗り換えを勧めるわけがないので、新電力への乗り換えを検討している人はエネチェンジの「でんきコンシェルジュ」に問い合わせるのかもしれない。エネチェンジが特定の電力会社と利害関係を持つようになれば問題であるが、中立的な立場を維持する限りは電力会社を選ぶ上で頼りになる存在である。

他にもエネチェンジのサイトには電気料金の節約に役立つ記事が掲載されている。電気料金が高くて悩んでいる人は電力会社を変更する前にこちらを読むべきかもしれない。例えば、冬季の大幅な電気料金上昇を防ぐため、エアコンや電気ストーブといった暖房機器の最適な使い方、電気の使用量を少しでも抑えるための工夫について書かれている。他にも電気製品、オール電化、太陽光発電、エネファームなどについて記事が掲載されており、なかなか充実している。エネチェンジのサイトを訪れる人は電気料金を少しでも安くしたいという人に違いないので、需要に合った記事を掲載しているわけである。

また、電力自由化について夢見がちな人も多いが、エネチェンジの経営陣はなかなか現実的な考え方をしているようである。東京電力の執行役員だった人が何故かエネチェンジの副社長をしており、元東京電力・執行役員がわかりやすく解説!知らなきゃ損する電力自由化という記事で電力自由化について解説している。電力事業は莫大な投資を必要とするため資本力のある大企業しか生き残れないと述べているが、全くその通りだと思う。新規参入組で生き残れるのはガス会社(東京ガス、大阪ガス)、石油会社(JX日鉱日石エネルギー、出光興産)、総合商社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅)、通信会社(ソフトバンク、KDDI、NTT)くらいだろう。小さな電力会社は発電能力を確保できず、ペナルティを受けて市場から撤退を迫られるかもしれない。そのときに困るのは消費者なので電力会社選びは慎重にというアドバイスには納得である。

東京電力の元執行役員がいることにも驚いたが、スタッフ紹介のページを見てさらに驚いた。何というかエリートしか載っていない。会長は電力自由化で先行するイギリスにおいて電力のビッグデータ解析などを行うシステム開発会社を設立した人で、社長はJPモルガン証券とグリーを経て会長と合流したという経歴の持ち主。もちろん外資系の会社などに勤めたことがないので分からないが、外資系出身というだけで優秀な人物のように見える。他のスタッフも若い感じだが、東京大学、京都大学、一橋大学といった一流大学の出身者ばかりである。2015年4月に設立されたばかりのスタートアップであるエネチェンジ、果たして電力自由化後の日本においてイノベーションを起こすことができるだろうか。

2015年12月20日日曜日

日本に必要な移民政策

急増するシリア難民とイスラム国によるパリ同時多発テロにより、ヨーロッパでは移民問題が再燃している。第二次世界大戦後、西欧諸国は不足する労働力を補うために積極的に移民を受け入れた。移民の多くは植民地など経済的なつながりが深い地域の出身で、イギリスはインドやパキスタン、フランスは北アフリカやイベリア半島、ドイツはトルコや東欧から多くの移民を受け入れた。その結果、移民の背景を持つ人口はイギリスとフランスで1割、ドイツでは2割にまで膨れ上がった。今や経済的に貧しい移民は社会の負担となり、宗教や文化の違いによって生じる摩擦は後を絶たない。モスク建設に対する反対運動、ムスリムの暴動、ヨーロッパの街において移民は様々な問題を引き起こしている。日本にとってもヨーロッパの移民問題は他人事ではない。人口減少社会に突入したことで、日本でも1000万人単位での移民受け入れが検討されているためだ。

ヨーロッパの移民問題を考えると移民の受け入れには消極的となってしまうが、移民で成功している国もある。それは世界の覇権国家アメリカ合衆国である。アメリカ合衆国は歴史的に移民の国であるが、現在もアメリカン・ドリームは健在で、優秀な人材はアメリカ合衆国に移住する傾向にある。アメリカ合衆国の経済においてIT産業は重要な地位を占めるようになっているが、インド出身の移民が多くIT産業に従事していることは有名である。グーグル、マイクロソフトのCEOはインド出身の移民であり、優秀な人材を海外から受け入れることがアメリカ合衆国の経済を支えている。日本やドイツといった先進国の多くが人口減少によって経済の縮小を余儀なくされる中、アメリカ合衆国は移民によって人口を年間1%の割合で増加させており、将来も有望な市場として海外から投資を集めることに成功している。

歴史的にも移民で成功した国は多くある。例として近世のプロイセンが挙げられる。ルイ14世がフォンテーヌブローの勅令によってフランスからユグノー(フランスのカルヴァン派)を追放すると、プロイセンは積極的にユグノーを受け入れた。2万人のユグノーがプロイセンに流入し、ベルリンの人口は1/3がフランス人となる程であった。ユグノーの多くは商業や工業に従事していたため、彼らが持っていた資本や工業技術はプロイセンの経済発展に大きく寄与した。プロイセンは宗教に寛容な姿勢を示し、ユグノーの他にも経済的な先進地であるネーデルラントから積極的に移民を受け入れている。プロイセンはやがてオーストリアやフランスとの戦争を経て、ドイツ帝国を築き上げることになるが、積極的な移民の受け入れによる経済発展がその礎となっていた。

日本の移民政策を議論するとき、大抵は日本人が就きたがらない建設業やサービス業に従事する移民を中国や東南アジアといった発展途上国から受け入れることが想定されている。彼らは最初から社会の底辺を補うための道具として考えられており、そのような移民政策ではヨーロッパのように移民が将来の社会問題になることは間違いないだろう。現在でさえ在日の朝鮮人や中国人に充てられる社会保障費が大きいということで社会問題になっている。日本に必要な移民政策は過去のプロイセンやアメリカ合衆国のように優秀な人材を海外から集めることである。つまり数より質の移民政策が求められる。

日本にはアメリカ合衆国や中国のように経済的な勢いはないが、世界トップクラスの暮らしやすさがある。イギリスの情報誌MONOCLEは2015年の住みやすい都市ランキングで東京を1位に選んでおり、世界4大都市(ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京)でTOP10にランクインしているのは東京だけである。福岡と京都もTOP25にランクインしており、東京を中心に日本の都市は海外から人々を集めるだけの実力を有していると思う。日本の治安の良さは世界的にも有名で、移住後の暮らしやすさを武器として日本は積極的に海外から優秀な人材を集めていくべきである。

問題は日本では英語が通用しないことだろう。アメリカ合衆国、イギリス、カナダ、オーストラリアといったアングロサクソン諸国で英語が通用するのは勿論であるが、英語圏ではないフランスやドイツといった国々でも英語はある程度通用する。イギリスの裏側に位置する日本で英語が通用しないのは当然と言えば当然ではあるが、このままでは優秀な移民は他の先進国に奪われてしまう。楽天、ユニクロなどの企業は英語を社内公用語として採用しているが、そうした企業は非常に珍しい。これからは総合商社、メーカーなど海外との関わりが深い企業を中心に英語で仕事ができる環境を整えていく必要がある。また、英語のみで暮らせる移民特区を東京につくるのも良いだろう。生活と仕事の両面で英語環境が整えられた地域があれば、日本への移住の足掛かりになるはずである。

2015年12月19日土曜日

2015年アニメランキング

1位 冴えない彼女の育てかた
美少女クリエイターたちと美少女ゲームをつくるラブコメ作品。桜舞い散る坂の下で出会った加藤恵に運命を感じた安芸倫也は重度のオタクで、彼女をメインヒロインにした美少女ゲームをつくることを決意する。付き合いの良い加藤恵を強引にサークルに引き込んだ倫也は同人イラストレーターの幼馴染である澤村・スペンサー・英梨々、先輩でライトノベル作家の霞ヶ丘詩羽もサークルメンバーに加入させる。倫也は加藤恵の助けを借りながら、癖のあるクリエイターたちとゲーム制作に取り組んでいく。

この作品はキャラクターが魅力的で、美少女クリエイターの二人、金髪ツインテールのツンデレ幼馴染と黒髪ロングの毒舌先輩が素晴らしいのはもちろん、メインヒロインの加藤恵は過去に例のない最高のヒロインとなっている。表情や口調がフラットな加藤恵はどこにでもいそうな普通の女の子で、アニメのメインヒロインになるようなタイプの女の子ではないが、美少女クリエイター二人が個性的すぎる故に安心感のある一番の萌えヒロインとなっている。原作者が美少女ゲームのシナリオライターというだけあってキャラクターの設定が絶妙なバランスで、近年の萌えアニメの中では頭一つ抜けている印象を受ける。ただの萌えアニメというわけでもなく、クリエイターについて結構リアルに描いている作品であると思う。アニメでは原作1巻から4巻までを消費しているが、7巻がシリアス展開で革命的に面白いので是非2期に期待したい。

2位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続
ひねくれぼっちの高校生を描いた学園ラブコメ作品。他人との関係を避けてきた比企谷八幡は強制的に奉仕部に入部させられ、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣と一緒に生徒の問題解決を手助けする部活動に取り組むことになる。文化祭の事件を経て学校中から嫌われるようになった八幡ではあるが、雪乃との間には確かな信頼関係が生まれていた。しかし、八幡の自己犠牲を是とした問題解決方法は奉仕部に亀裂をもたらしていく。さらに三人の関係は友情と恋愛感情が入り混じった複雑なものとなっていく。

このライトノベルがすごい!で三連覇を達成した作品だけあって、ストーリーもキャラクターも秀逸。八幡の自己犠牲による問題解決と奉仕部の三人のギスギスした関係は見ていて胃が痛くなってくるが、ここまで精緻に人間関係を描いたアニメは他になく名作と呼ぶに相応しい。2期から登場した「あざと可愛い後輩」一色いろはもかなり好きなキャラクターである。物語も佳境に入り、奉仕部三人の関係はどうなるのか、今後の展開が非常に気になる作品である。

3位 ご注文はうさぎですか??
木組みの家と石畳の街で繰り広げられる喫茶店を舞台にした日常系作品。高校入学を機に憧れの街に引っ越すことになったココアは喫茶店ラビットハウスに下宿することになる。ココアはラビットハウスの一人娘チノの自称姉として、チノと一緒にラビットハウスで働く。ラビットハウスのもう一人の店員であるリゼ、和風喫茶甘兎庵の看板娘である千夜、千夜の幼馴染であるシャロとの出会いもあり、喫茶店を舞台に5人は楽しい毎日を過ごす。

ごちうさは2期も相変わらず癒しの時間を提供してくれた。日常系作品の代名詞と言えるまでに成長した本作だが、1期に比べてストーリー性も感じるようになった。2期はココアの姉モカがラビットハウスに遊びにやって来るが、モカが実家に帰るシーンはココアもやがてチノの元から去ってしまうことを想起させた。以前はココアがチノに依存しているような感じだったが、現在はチノがココアに依存しており、二人の関係が今後どうなっていくのかも気になるところ。ココアとチノの関係は何だか由比ヶ浜と雪ノ下の関係に似ているような気がする。

2015年12月14日月曜日

SAOプログレッシブ4巻 感想

ソードアート・オンライン プログレッシブ (4) (電撃文庫)
川原礫
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2015-12-10)
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このライトノベルがすごい!の2016年版で作品部門2位に輝いたソードアート・オンラインの番外編。アインクラッド攻略を第1層から詳細に書き直すという試みで、第1層のフロアボス攻略後にキリトとアスナが別れていなかったという衝撃の展開から今回で4巻目。本編のアリシゼーション編は退屈すぎてロニエとティーゼが登場した辺りから読み進めていないが、プログレッシブはアインクラッド編と並ぶ面白さを維持し続けている。やはりソードアート・オンラインの面白さの本質はアインクラッドに凝縮されていると言える。アスナとの仲を深めながら、デスゲームとなったアインクラッドを攻略していく展開はやはり面白い。

3巻はダークエルフのヨフィリス子爵とキズメルの協力を得て、第4層のフロアボスを倒したところで終わった。第4層は水路がテーマの華やかなエリアで、ゴンドラも登場してヴェネチアのような雰囲気を醸し出していた。4巻の舞台となる第5層は遺跡がテーマのエリアで、第4層とは異なって暗く不気味な雰囲気となっている。ベータテストにおいてPK(Player Kill)が横行したフロアで、キリトはモルテとの決闘からPKを狙う殺人者がデスゲームとなったアインクラッドにも現れることを懸念する。対人戦に慣れないアスナは自らデュエルをキリトに申し出るが、キリトにレイピアを向けることに耐えられずにアスナはデュエルを続行できなくなってしまう。

第5層では絶景レストランでのディナータイム、神殿跡での宝探し、地下墓地の幽霊クエストなどを行うキリトとアスナ。デスゲームのはずなのに、相変わらずデートっぽいことをしている二人。情報屋アルゴと連絡が取れなくなったところから4巻のシリアス展開がスタート。アルゴを探しに地下墓地ダンジョンに一人で向かったキリトを追うアスナは落とし穴のトラップによって、ダンジョン最深部へと落下してしまう。運悪く主武器であるシバルリック・レイピアをモンスターに奪われ、絶体絶命の状況に陥るアスナであったが、偶然からDKBとALSの対立を目論む二人の男の会合を盗み聞きすることになる。一人はモルテ、もう一人はALSのジョーで、偶然にモンスターを倒したジョーによってシバルリック・レイピアを奪われてしまう。しかし、ここでキリトが颯爽と登場。機転を利かせたアスナがレイピアを取り戻し、絶体絶命の状況を抜け出す。

地下墓地ダンジョンを脱出したキリトとアスナは結局アルゴが無事であったことを知る。そしてモルテとジョーの会合から、ALSがDKBを出し抜いて単独で第5層フロアボスの攻略を狙っていることを知ったキリトとアスナはその理由を探ることにする。DKBとALSは新年を祝う合同パーティーを企画しており、企画の中心であるDKBのシヴァタとALSのリーテンから事情を聞き出す。ちなみにリーテンのハイクラス防具を作成した鍛冶屋の女性プレイヤーとはリズベットのことだと思われる。以前から鍛冶屋の女性プレイヤーについて触れられることがあり、リズベットは意外にもハイクラスの職人なのかもしれない。キリトのダークリパルサーを作成したのだから当然といえば当然ではあるが。今後アスナはリーテンを通じてリズベットと仲良くなるのかもしれない。

ALSが抜け駆けしてフロアボスを攻略しようとしているのは、第5層のフロアボスが今後の攻略を左右するレアアイテムをドロップするためであった。そのレアアイテムとはギルドフラッグであり、ギルドフラッグの半径15mにいるギルドメンバー全員に支援効果がかかるというものであった。攻略組の二大ギルドであるDKBとALSは勢力において拮抗しており、両ギルドが切磋琢磨することで攻略がスムーズに進んできた。しかし、今後はギルドフラッグを獲得したギルドが圧倒的な優位に立つことになり、もう片方のギルドは崩壊の危険さえある。ギルド崩壊によって攻略が遅延することを恐れたキリトはアスナと共にALSより先にフロアボスを攻略することを決意する。

フロアボスの攻略に協力したのはアルゴ、ネズハ、エギルのチーム4人、DKBのシヴァタとハフナー、ALSのリーテンとオコタンであった。久しぶりにフロアボス攻略シーンに長々とページが割かれたが、今回も死者を出すことなくフロアボスを攻略することに成功する。戦闘後、誰がギルドフラッグを入手したのか分からず疑心暗鬼に陥る一幕もあったが、キリトの機転によってALSのオコタンが名乗り出て、無事にギルドフラッグはキリトが預かることとなった。ラストはキリトとアスナが古城遺跡のテラスからパーティーの花火を見物しながら新年を迎えるところで終わるが、キリトはここで黒ポンチョの男と邂逅する。恐らく後のラフィン・コフィンのリーダーであるPoHであると思われ、PK集団がいよいよ蠢き始めてきたというところで続きは次巻となった。

今回はキリトとアスナの関係がこれまで以上に深まっており、アスナ視点のモノローグから既にキリトにかなり好意を寄せていることが分かった。第74層のフロアボスであるグリムアイズを倒してキリトとアスナは結婚を決意するが、第5層の段階で心情的にはそのレベルにまで達しているような気がする。ここから二人がどのように別れることになるのか展開は読めないが、ALSが壊滅する第25層が一つの転機となるかもしれない。もしかしたら今回登場したリーテンも第25層で死んでしまうのかも。ただし、第27層でキリトが加入していた月夜の黒猫団が壊滅するので、それまでにはアスナと別れていないと辻褄が合わないか…。第22層にキリトとアスナは後に家を購入するが、二人ともこの層で一緒に過ごすのは初めてのようだったので、二人が別れるのは結構早いのかもしれない。第9層まで続くエルフクエストの結末も一つの転機になりそう。アインクラッド本編で登場しないことから、キズメルは死亡フラグが立っているような気も…。

2015年12月13日日曜日

宮城・山形旅行計画

宮城県と山形県を中心に2泊3日の旅行計画を組んでみた。3/11(金)~3/14(月)を予定しているものの、この時期は3連休を取るのがやっとだと思うので自分のいる3日間の計画のみ。

◆1日目
東京→仙台(東北新幹線はやぶさで1時間30分)
仙台市内を散策
牛タンとずんだ餅を食べる
仙台→銀山温泉(車2時間20分)
温泉街を散策
銀山温泉泊

仙台城


銀山温泉

◆2日目
銀山温泉→山形(車1時間20分)
山形市内を散策(かの有名な山形大学も)
山形といえば蕎麦、玉こんにゃく、いも煮とか?
山形→蔵王温泉(車30分)
ロープウェイで樹氷を見学
スキー場で雪遊びをしても良いかもしれない
蔵王温泉泊

文翔館

霞城

蔵王樹氷

蔵王温泉

◆3日目
蔵王温泉→松島(車2時間)
松島を散策
焼き牡蠣を食べる
松島→三井アウトレットパーク仙台港(車30分)
ここのアウトレットは東北のグルメやお土産も扱っている
三井アウトレットパーク仙台港→仙台(車30分)

松島

三井アウトレットパーク仙台港

他に行くとしたら世界遺産の平泉、秘湯で知られる乳頭温泉など。ただし遠い。

2015年12月11日金曜日

ヨーロッパのユニークな政党

ヨーロッパはユニークな政党が多くて面白い。今後のヨーロッパ情勢を左右するかもしれない主要国の政党を挙げてみた。

1.国民戦線(フランス)
反EU、移民排斥を掲げるフランスの極右政党。反EUを掲げているにも関わらず、2014年の欧州議会議員選挙ではフランスにおいて最多議席を獲得して話題となった。今月の地域圏議会選挙でもフランソワ・オランド率いる社会党、二コラ・サルコジ率いる共和党を抜いて第一党の地位を獲得している。イスラム国によるパリ同時多発テロの影響も大きいと思われるが、現在の党首マリーヌ・ル・ペンは穏健派として知られており、国民戦線は極右だけではなく幅広い層から支持を集めるようになっている。特にオランド大統領の自由主義的な政策が左派の社会党離れを引き起こしており、国民戦線はその受け皿となっているようである。フランス国民が国民戦線に政権を委ねる日も近いのではないかと思われる。先進国の中で最も人口問題に力を入れているフランスは2050年代にドイツの人口を超える見込みである。強大化するフランスに極右政党の組み合わせは危険な香りがする。ナチスドイツのユダヤ人排斥と同じようなことが繰り返されることはあるのだろうか。

2.同盟90/緑の党(ドイツ)
ドイツ五大政党の一角を担う環境政党。脱原子力、風力発電の促進といったドイツの環境政策はこの政党によって支えられていると言っても過言ではない。2015年のパーソン・オブ・ザ・イヤーに輝いたキリスト教民主同盟のアンゲラ・メルケルが首相に就くまで、社会民主党と連立政権を組んでいたこともある。日本でも2012年衆院選において日本未来の党という環境政党が立ち上げられたが、脱原発の世論を味方に付けることもできずに悲惨な結果に終わっている。やはり環境政党がこれだけ影響力を有しているドイツは珍しい国だと思う。もっとも電気料金の上昇や厳しい環境規制など、ドイツ産業界は緑の党によってかなり苦しめられているみたいである。環境と経済のバランスをどのようにとるか、日本の環境政策は先行するドイツを教訓にする必要がある。

3.スコットランド国民党(イギリス)
スコットランドの独立を目指す地域政党。イギリスは保守党と労働党による二大政党制で知られているが、2015年の下院選挙でスコットランド国民党は650議席中56議席を獲得して第三党に躍進した。この56議席は全てスコットランドで獲得したものであり、スコットランドに割り当てられた59議席のほぼ全てを獲得している。2014年9月のスコットランド独立をめぐる住民投票は僅差で反対派が勝利したが、敗れた独立派の思いが下院選挙での劇的な勝利につながったのかもしれない。得票率ではEU離脱を訴える独立党、かつて二大政党制の一翼を担っていた自由民主党の方が上回っていたが、小選挙区制というルールでは地域政党が圧倒的に有利である。今後スコットランド国民党はイギリス政界のキャスティングボードを握る存在となるかもしれない。

4.北部同盟(イタリア)
経済的に豊かなイタリア北部の自治拡大を訴える地域政党。イギリスのスコットランド国民党と異なり、独立ではなく連邦制の導入を目標としている。金融都市ミラノ、港湾都市ジェノヴァ、工業都市トリノといったイタリア有数の都市が密集するイタリア北部はイタリア経済の牽引役であり、産業に乏しくマフィアが跋扈するイタリア南部との格差は大きい。イタリア北部の人々は自分たちの経済的成功が南部の穴埋めに使われていることに怒りを感じており、北部同盟への支持は根強いものがある。同じような構図はスペインのカタルーニャ地方、ベルギーのフラマン人地域にも見られる。日本では大阪都構想と共通するものがあるかもしれない。もっとも日本は東京一極集中で、地域色の強い東北、関西、九州、沖縄であっても日本から独立しようという考えは皆無だろう。

2015年12月6日日曜日

2016年の原油価格はどうなるか

2015年の原油価格は低調な傾向が続いた。2014年の夏頃まで原油価格は1バレル100ドル以上で推移していたが、2014年の後半に急落して40ドル台に突入した。これはアメリカ合衆国の住宅バブル崩壊に端を発する2008年の世界金融危機のときに並ぶ低価格である。2015年の前半に60ドルまで復調するも、やはり2015年の後半には再び40ドル台まで下落した。アメリカ合衆国において原油価格の指標となるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物価格は40ドルを割ってしまっている。

原油価格急落の背景にはアメリカ合衆国のシェール革命がある。これまでアメリカ合衆国は中東の原油に依存していたが、自国で産出するシェールオイルが輸入原油を代替するようになった。シェールオイルよりも存在感があるのがシェールガスで、2013年にアメリカ合衆国はロシアを抜いて世界一の天然ガス産出国となった。天然ガスと原油には互換性があり、アメリカ合衆国は化石燃料を自給できるようになったと言っても過言ではない。アメリカ合衆国は世界最大の原油消費国であるため、これまでアメリカ合衆国に輸出されていた世界の原油が余るようになってしまった。こうして供給過剰となった原油の価格は急落した。

1973年のオイルショック以降、世界の原油価格をコントロールしてきたのはOPEC(石油輸出国機構)であった。原油価格急落の原因が供給過剰にあるのであれば、供給量を削減すれば良い。世界の原油生産の半分を占めるOPECにはそれが可能である。しかし、OPECは原油の生産量を据え置くことにした。生産コストの高いシェールオイルを市場から締め出すためと言われており、確かにアメリカ合衆国のシェール事業者が破産に追い込まれる事例が増えているそうである。条件の良い油井も減っており、住友商事がシェールオイルの開発に失敗して巨額の損失を出したことは記憶に新しい。ただし、OPECの戦略はロシアの焦土作戦と同じで、自らも甚大な被害を受けることになる。原油の輸出に依存するOPEC加盟国の経済を根底から揺るがすためである。

12月4日にウィーンで開かれたOPECの総会では減産目標を定めることが議論された。産油国の中でもサウジアラビアを中心とした湾岸諸国は裕福だが、南米のベネズエラとエクアドル、アフリカのアルジェリア、ナイジェリア、アンゴラなどは比較的貧しい。焦土作戦に耐えられなくなったベネズエラは5%の減産を提案したが、サウジアラビアの反対によって減産目標は定められなかった。湾岸諸国は原油安を受け入れてでも原油のシェアを維持したい考えであり、アメリカ合衆国のシェールオイルを駆逐するまでOPECの方針は変わらないと思われる。また、原油埋蔵量世界4位のイランが欧米からの経済制裁を解かれて、原油輸出を増加させる方針である。原油の供給過剰はしばらく解消されそうにない。世界経済の牽引役である中国の景気悪化を原因として原油需要も世界的に落ち込んでおり、原油価格の更なる低迷は避けられないと思われる。

2016年に原油価格が反転する可能性はないのか。反転のシナリオとしてISの勢力拡大が挙げられる。ISの勢力範囲がペルシャ湾に到達して湾岸諸国の原油生産を脅かすような事態となれば、供給不安から原油価格は急反発することだろう。1980年のイラン・イラク戦争、1991年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争では原油価格が高騰しており、ISに関わる戦争がペルシャ湾にまで飛び火すれば原油価格の反転も起こり得るだろう。

ISの勢力拡大以外ではロシアの経済破綻が考えられる。ロシアはOPEC加盟国ではないが、サウジアラビアと並ぶ世界最大の原油生産国である。ロシア経済は原油と天然ガスの輸出に依存しており、現在の原油価格低迷はロシア経済に深刻なダメージを与えているはずである。さらにクリミア半島の併合とウクライナ内戦への介入によって欧米からの経済制裁も受けている。ロシア軍機撃墜事件でトルコとの関係は冷え込んでおり、同盟国の中国も経済が低迷している状況である。まさに四面楚歌のロシアであるが、ウクライナとシリアへの介入によって軍事支出は増加する一方である。ロシアの経済破綻は十分に考えられ、原油の一大供給国が市場から消えることで原油価格が反転する可能性はあり得る。他の産油国も経済状況は日に日に厳しさを増しており、産油国の経済破綻がオイルショックにつながる可能性はある。

2015年12月5日土曜日

もしドイツ帝国が大英帝国と同盟を結んでいたら

大英帝国は1902年に日英同盟を締結し、栄光ある孤立を捨てた。義和団事件を経て、中国大陸への進出を本格化させていたロシア帝国を牽制するためである。しかし、大英帝国が最も同盟を結びたい相手は大日本帝国ではなくドイツ帝国であった。ロシア帝国は極東方面だけではなく、中央アジアとバルカン半島においても南下政策を展開しており、大英帝国の地中海航路と最重要植民地であるインドを脅かす可能性が懸念されていた。ドイツ帝国はヨーロッパにおいてロシア帝国に対抗可能な唯一のランドパワーであり、1894年に締結された露仏同盟を牽制するためにも大英帝国としては同盟を結びたい相手であった。フランス共和国は植民地競争における最大のライバルであり、ドイツ帝国との同盟は大英帝国に多大な利益をもたらすはずであった。ドイツ帝国は露仏同盟との戦争によって二正面作戦を強いられることへの恐怖から、大英帝国との同盟を断り、ロシア帝国との友好関係を維持した。しかし、結局ドイツ帝国は十年後に露仏同盟を相手に第一次世界大戦に突入することになる。新航路政策によって対立する大英帝国も敵に回して、無謀な戦争がドイツ帝国を敗戦国へと追いやった。ロシア帝国とフランス共和国が相性の良いペアであるように、大英帝国とドイツ帝国も利害関係の対立が少ない最適なペアである。もしドイツ帝国が大英帝国との同盟を受け入れていたら歴史はどのように変化しただろうか。

ロシア帝国を仮想敵とするのはドイツ帝国と大英帝国だけではない。オーストリア帝国とスカンディナビア諸国もロシア帝国の脅威に晒されていた。オーストリア帝国は国内にスラブ民族を多く抱えており、バルカン半島においてロシア帝国と利害が対立していた。スカンディナビア諸国はフィンランドのようにロシア帝国に併合されることを恐れていた。スウェーデン王オスカル2世とオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世は汎ゲルマン主義によるスカンディナビア諸国、ドイツ帝国、オーストリア帝国の連合を構想しており、ロシア帝国の脅威に対してゲルマン民族の団結を唱えていた。ドイツ帝国はオーストリア帝国、イタリア王国と三国同盟を結んでいたが、チロル地方において領有権問題を抱えるオーストリア帝国とイタリア王国の協調を図ることができず、三国同盟は実質的に機能しなかった。それよりもドイツ帝国はゲルマン民族の連帯を重視して、スカンディナビア諸国、オーストリア帝国との連合に注力するべきだっただろう。

史実ではバルカン半島におけるロシア帝国とオーストリア帝国の衝突が第一次世界大戦の引き金となった。しかし、大英帝国とドイツ帝国が同盟を結んでいる場合、フランス共和国とロシア帝国がドイツ帝国の強大化を恐れて先制攻撃を仕掛けるというシナリオが考えられる。電撃侵攻したフランス軍はドイツ帝国の重要な工業地帯であるルール地方を占領し、兵器・弾薬の補給を妨げることでドイツ軍を苦しめる。その間にも東方からはロシア軍がベルリン占領を狙って押し寄せ、ドイツ帝国は二正面作戦を強いられるが、機動性に優れたドイツ軍が初戦においてロシア軍を撃退して長期戦に突入する。イタリア王国は露仏同盟側で参戦し、ロシア帝国と挟撃される形になったオーストリア帝国は窮地に陥る。アルプス山脈を越えたイタリア軍とハンガリー平原を突破したロシア軍はウィーンへの総攻撃を開始する。また、ドイツ帝国の工業はスウェーデン王国の鉄鉱石に依存しており、ロシア帝国はスウェーデン王国を占領することでドイツ帝国に致命傷を与えようとする。このためドイツ帝国はオーストリア帝国とスウェーデン王国を防衛するべく、陸軍を派遣して両国軍の指揮権を握ることとなる。

一方、大英帝国は海上輸送による物資の補給でドイツ帝国を支援する。フランス共和国はドイツ帝国への補給を断つためにハンブルクやブレーメンといった港湾を封鎖しようとするが、海軍力では大英帝国に敵わない。そこでフランス共和国は北海を航行する船舶をゲリラ的に襲撃する作戦に出る。フランス共和国の通商破壊作戦はオランダ王国とベルギー王国にも深刻な被害を与え、両国はドイツ帝国寄りとなる。オランダ王国とベルギー王国を経由したドイツ帝国への補給を断つため、フランス共和国は両国を占領する。さらにフランス共和国は中立国であったスイス連邦の領土を経由してドイツ帝国に進撃する戦略を立てる。スイス連邦はフランス共和国の申し出を断り、こちらもフランス軍による占領の憂き目に遭うことになる。

二正面作戦によって優位に立っていた露仏同盟であったが、戦争の長期化によって困窮したロシア帝国では社会主義革命が発生する。革命勢力が首都サンクトペテルブルクを包囲するに至り、ロシア帝国はついに戦線を離脱する。西部戦線に注力できるようになったドイツ帝国は一転して攻勢に出るようになり、オランダ王国とベルギー王国を解放し、パリの包囲に至ったところでフランス共和国は降伏する。大戦によってゲルマン民族のナショナリズムは大いに高揚し、露仏同盟に占領されていたゲルマン諸国では解放軍であるドイツ帝国の威信が高まった。そしてオーストリア帝国、スウェーデン王国、ノルウェー王国、デンマーク王国、オランダ王国、ベルギー王国、スイス連邦の7か国はヴェルサイユ宮殿においてドイツ帝国への合流を宣言する。

終戦後のドイツ帝国は一転してロシア帝国と同盟を締結する。大戦中に発生した社会主義革命によって風前の灯となっていたロシア帝国であったが、ドイツ帝国の支援によって息を吹き返す。社会主義革命を鎮圧することに成功したロシア帝国は命脈を保ち、東欧の支配はドイツ帝国に譲ることとなる。東欧諸民族はナショナリズムを認められるが、ポーランド、チェコ、ハンガリー、セルビア、ルーマニア、ブルガリア、ギリシャの東欧7か国はいずれもドイツ帝国の保護国とされた。

第一次世界大戦が始まるまで、ヨーロッパは大英帝国、フランス共和国、ドイツ帝国、ロシア帝国の四大国が君臨する地域であったが、戦後は大英帝国とドイツ帝国の二強体制となる。ただし、大英帝国は世界最大の面積を有する植民地帝国ではあるが、ヨーロッパ大陸においてはゲルマン民族を統合したドイツ帝国の影響力が圧倒的であり、ドイツ帝国の人口規模は大英帝国の3倍近くにも及んだ。大英帝国にとって誤算となるのはドイツ帝国が宿敵ロシア帝国と同盟を結んだことである。ロシア帝国との同盟によって東方の安全を確保したドイツ帝国はヨーロッパ大陸において敵無しの状況を作り出す。また、ロシア帝国の豊富な資源と巨大な市場を獲得したことで、産業力でも大英帝国を完全に追い抜くようになる。ロシア帝国もドイツ帝国の支援によって近代化を進め、敗戦後に急速な経済成長を遂げる。ロシア帝国とアメリカ合衆国の地理的な類似性においてロシア帝国の地理的なポテンシャルを述べたように、社会主義革命が起こらなければロシア帝国は史実以上の発展を遂げていたと思われ、大英帝国に匹敵する経済力を備えるようになる。

ヨーロッパの覇権をめぐって大英帝国とドイツ帝国の緊張関係は増していくが、戦後しばらくは大きな戦争のない穏やかな時代が続く。しかし、アメリカ合衆国を震源に世界恐慌が発生すると情勢は一変する。アメリカ合衆国、大英帝国、ドイツ帝国の三大国は経済ブロックを構築して大恐慌に対応することができたが、後発の列強であるイタリア王国とスペイン王国は恐慌に対応することができず、植民地拡大によって大恐慌を乗り越えようとする。1930年代にドイツ帝国はイタリア王国とスペイン王国の北アフリカ侵攻を支援する中で両国と同盟を結ぶ。

ドイツ帝国はヨーロッパに留まることなく、中東にも勢力を拡大する。史実と異なり、第一次世界大戦に参戦しなかったオスマン帝国は崩壊を免れたが、アラブ民族の居住地域であるシリアやアラビア半島をめぐってエジプト王国との対立が続いている。ムハンマド・アリーが築いたエジプト王国はアラブ民族主義を掲げ、シリア、イラク、アラビア半島への進出を続けている。スエズ運河を運営する大英帝国はエジプト王国を支援するため、ドイツ帝国は対抗してオスマン帝国を支援する。一方、ベルリンからイスタンブールを経由してバグダードに延びる鉄道を敷設すると、ドイツ帝国の中東支配は強固なものとなっていく。ドイツ帝国は国内のユダヤ人問題を解決するため、シオニズム運動を支援してイスラエルの建国にも尽力する。イスラエルはドイツ帝国の中東植民地としての性格を有するようになる。

大英帝国はフランス共和国が領有していた広大なアフリカ植民地を獲得し、中国からロシア帝国の影響力を排除することにも成功して、世界を覆う植民地帝国を築き上げることに成功する。ドイツ帝国と同様に第一次世界大戦によって大英帝国も国力を大きく上昇させた。しかし、世界中に広げた植民地の経営コストは大英帝国の財政を次第に苦しめていき、経済力でもアメリカ合衆国とドイツ帝国に抜かされて世界第三位の地位にまで転落してしまう。植民地にも独立の動きが見え始め、ドイツ帝国は英領インドにおいてイスラム地域の分離独立を画策する。

中国大陸では袁世凱の死後、軍閥が各地に割拠して内戦状態となる。各軍閥はロシア帝国、大日本帝国、大英帝国といった列強の支援を受けて戦争を行ったため、中国大陸の内戦は列強の代理戦争の様相を呈するようになる。特に世界恐慌によって著しく経済状態が悪化した大日本帝国は中国大陸への侵略を露骨に行うようになっていく。ロシア帝国は奉天派の張作霖と共同で満州から大日本帝国の勢力を排除する計画を企て、1920年代後半に第二次日露戦争が勃発する。青島のドイツ海軍と旅順のロシア海軍は大日本帝国の連合艦隊を撃退し、ロシア帝国はシベリア鉄道によって膨大な兵力を中国大陸に展開する。

一方、ヨーロッパにおいて世界恐慌の影響を受けて最初に破綻したのはフランス共和国であった。第一次世界大戦に敗れて海外植民地を全て大英帝国に奪われたフランス共和国の経済は落ち込みが激しく、パリで社会主義革命が発生するに至る。ドイツ帝国はイタリア王国、スペイン王国と共同で革命鎮圧に乗り出し、瞬く間にパリを占領する。ここに大英帝国はドイツ帝国との戦争を決断し、英仏連合軍によるパリ解放作戦が始まる。極東におけるロシア帝国と大日本帝国の衝突と合わせて、独露同盟と日英同盟の対立は第二次世界大戦へと発展する。

結果としては独露同盟が地政学的優位性を活かして勝利を勝ち取り、大英帝国はヨーロッパ大陸から、大日本帝国は中国大陸から追い出されることになる。しかし、大陸市場が失われることを恐れたアメリカ合衆国はついに孤立主義を捨てて、大英帝国、大日本帝国とシーパワーの同盟を結ぶ。ヨーロッパ大陸ではノルマンディー上陸作戦に失敗するものの、極東では原子爆弾を青島と旅順に投下し、ドイツ海軍とロシア海軍を一掃した。ドイツ帝国は大陸弾道ミサイルを開発してアメリカ合衆国東海岸に報復攻撃を開始し、フィラデルフィアを焦土と化す。互いが互いを殲滅する能力を持っていることが判明し、両陣営は急速に和解へと方針を転換させる。第二次世界大戦の終結後、ドイツ帝国とアメリカ合衆国の冷戦が始まる。