2016年11月20日日曜日

冴えない彼女の育てかた11巻 感想

冴えない彼女の育てかた 11 (ファンタジア文庫)
丸戸 史明
KADOKAWA (2016-11-19)
売り上げランキング: 24

11巻の内容はいよいよ倫也がメインヒロイン叶巡璃ルートの執筆を始めるというもの。9巻で英梨々、10巻で詩羽先輩のシナリオが完成しているため、これは読み通りの展開。ただし、夏休みの間に美智留ルートと出海ルートが完成していたのには驚いた。何のドラマもなくシナリオが完成してるとか、これは英梨々もびっくりの負け組ヒロインぶり。第二部になってもメインヒロインには昇格できないことが明らかになった瞬間であった。ただし、出海はイラストで、美智留は音楽で才能を伸ばしており、彼女たちの急成長に倫也も驚きを隠せない。あとは倫也のシナリオ次第というところまで来た感じ。

しかし、倫也は肝心の叶巡璃ルートが書けずにいた。共通ルートから個別ルートに入るイベント番号:巡璃15は巡璃が主人公を意識するようになる最重要イベントであるが、シナリオライターとしての実力がついたことで、どの展開もイマイチだと感じてしまう倫也。まぁ、恵が倫也を意識するようになったシーンがそもそも作品内で描かれていないから、実体験を元にシナリオを作成している倫也に書けないのも無理はない。そして伊織や紅坂朱音にも相談した挙句、倫也が頼ったのはメインヒロイン張本人であった。

深夜いきなり恵に電話して協力を求める倫也も大概だと思うが、何だかんだ言いながら乗り気な恵も大概だと思う。個別ルートに分岐する前に共通ルートから見直すことになった二人であったが、これまでの出来事について倫也は恵から壮絶なダメ出しを食らう。

「そもそもこれ、主人公の造形に無理があるよね。こんな語りたがりで自分の主張を押しつけまくってウザい主人公、好きになる女の子なんていないんじゃないかな?」

「じゃ、じゃあ、どうすればいいのか、教えてくれないか……?」

「そうだなぁ……とりあえず、今までの主人公の行動とかセリフをチェックして、もうちょっと好感持てる主人公に直していかない?」

「こ、これまでの主人公……変えちゃうの?」

フラットでブラックな恵にタジタジになる倫也。最初のゲーム合宿に始まり、六天馬モールでのデートと、恵のダメ出しは止まるところを知らない。そして共通ルートの見直しをしていく中で、これまでの倫也について恵がどう思っていたかが明らかにされていく。倫也は去年の冬コミの時点で巡璃(恵)が少しくらいは主人公(自分)に好意を持っていたのではないかと持論を述べるが、恵は「あ~、それはないね。うん、この時点では絶対ない」と一刀両断。そして倫也の英梨々に対する気持ちを逆に問い詰めていく恵。まぁ、倫也は一度英梨々のことを選んでるし、恵が英梨々を必要以上に警戒するのも無理はない。ただし、共通シナリオのダメ出しを終えて、いよいよ個別ルートに分岐するところから、この巻の本番が始まる。どんな主人公なら良いのかと倫也に問いかけられた恵はこう答える。

「あ、でも、少しでいいから、嬉しいことや、ドキっとすること言ってくれたり、わたしを大切に思ってる気持ちを伝えてくれたら、それでいいかな?」

「ただ、ほんのちょっとだけ、足りなかったんだよ。下げて、下げて、下げた後の、たまに上げてくれる、一言が……」

「別に、告白なんていらない。ただ、ほんのちょっと、好きになるきっかけでいい。何気ない言葉が、欲しいの。え?そんなんで好きになっちゃうんだ……って、そんな言葉が、欲しいの」

この言葉がもはや告白じゃないかというレベル。ここから二人の間の空気感は劇的に変化する。恵に対する倫也の回答は、恵の顔が見たいというものであった。これ以降の倫也は本気モード。ヘタレ主人公の仮面を脱ぎ捨てた彼は、とても倫理くんとは呼べないくらい強引に恵に迫る。「なんか、顔、見たい」という倫也の要望に対して恵の回答は少し間が空く。初めこそ倫也の申し出をやんわりと拒絶したものの、いつもと違う雰囲気で迫ってくる倫也に対して、ついに恵は「……なんだかなぁ」という言葉とともに倫也の要望を受け入れる。スカイプの画面に映った恵の表情に倫也の意識は吸い寄せられた。彼女の表情は…。

このシーンは間違いなく冴えカノにおける一つのクライマックスだ。表紙の恵は倫也に顔が見たいと言われたシーンに間違いない。結局、恵は目立たない自分をメインヒロインとして特別に思ってくれた倫也のことを最初から意識していたのだろう。ただし、その気持ちを恋愛感情に変化させるきっかけがなかった。恵も言ってるように、ほんのちょっとだけ足りなかったのである。7巻における倫也と恵の和解シーンも一つの転機であったが、ついに11巻にして倫也の短くも核心を突いた言葉によって恵は完全に倫也を好きになってしまった。まぁ、倫也を本気にさせたのはそもそも恵の言葉がきっかけなので確信犯という感じではあるが。その後の二人はまるで今にも付き合いそうな雰囲気。公園のシーンとかキスするんじゃないかと思って冷や汗かいた。しかし、その後のスカイプのシーンでそれ以上の悶絶を味わわされることになった。

そしてエピローグ。倫也を意識するようになってしまった恵は深夜の本読みを中断したいと言い出す。この辺りが意外と初心な感じで、またしても悶絶する。恵の申し出を了承した倫也であったが、やはり今回の倫也は一筋縄ではいかない。9月23日は恵の誕生日。誕生日のお祝いを口実に倫也は恵をデートに誘う。どうにかフラットを装っていた恵もついに降伏してデレ始める。あれ、これ付き合うの確定した?「俺と黒猫は恋人になった」のシーン再来かと身構えたが、さらに予想の斜め上を行く展開に。9月23日の12時。待ち合わせ時間の少し前。雑音のせいでなかなか声が聞き取れない一本の電話によって、物語は起承転結の転を迎えたことが告げられた。

これは冴えカノ史上最も先が気になる終わり方…。まぁ、このまま恵と上手くいくっていうのは、筆者が丸戸史明なので有り得ないとは思っていたが。ヒロインが事故で死んじゃったりとか、病気で死んじゃったりとか、とにかく死んじゃったりとか、不吉なフラグが立っていたから恐ろしすぎる。流石に恵死亡はないと思うけど、恵に何かアクシデントがあってデートに行けなくなったというのが一番ありそうな展開か。恵本人に何かあったのか、恵の家族に何かあったのか、それとも親友の英梨々に…。ただし、英梨々は6巻で一度倒れているから、今回も英梨々関連というのは考えにくいところ。そもそも誰から誰への電話なのかもはっきりしていない。恵から倫也への電話というのはミスリードで、倫也から恵への電話、あるいは英梨々から恵への電話という可能性も有り得る。

0 件のコメント:

コメントを投稿