2016年11月23日水曜日

冴えカノ12巻の展望と加藤恵の謎に関する考察

11巻後半からの急展開で物語も佳境に入った感のある、冴えない彼女の育てかた。7巻で「加藤恵……もう一度、俺のメインヒロインになってくれ」と言った割には、英梨々に未練残してる感じだし、相変わらず詩羽先輩の信者だし、本当に倫也は加藤をメインヒロインにする気があるのかと疑っていたが、これまで倫也と加藤が積み重ねてきたものが11巻で一気に恋愛方面に結実した感じ。とりあえず、詩羽先輩や美智留には反応しない倫也が加藤を相手にすると豹変することが分かった。完全に相思相愛で、シナリオ作成が関係を発展させる口実になっているし、もはやゲームつくらなくて良いんじゃないかというレベル。このまま誕生日デートに突入していたら、間違いなく加藤エンドで終わっていたが…。

「……っ、……っ!」

「え?何だって?ごめん、よく聞こえないんだけど……」

「…………」

「な……ちょっと待って!誰、が……」

内容は全く不明だけど、やたらと不安を煽る電話。最初読んだときは加藤から倫也への電話だと思っていたけど、倫也から加藤への電話のようにも思えるし、他の人物からの電話の可能性もある。とりあえず何かのトラブルで誕生日のデートが中止、そこからシリアス展開という流れは間違いなさそう。最初に思い浮かんだのは倫也か加藤が交通事故に遭ったんじゃないかというもの。電話をかけてきたのは英梨々で、倫也が事故に遭ったことを加藤に知らせる内容とか。倫也記憶喪失からの英梨々を含めた三角関係展開とか、倫也が三年後に目覚めたとき加藤は既に…とか。しかし、このシチュエーションは君が望む永遠のパロディだということが分かり、候補から消えた。内容まで交通事故で重ねてくるとは思えないし、何より展開が安直で雑すぎる。

そして、他に思い浮かんだのは英梨々関係。冴えない彼女の育てかた考察 タイトルのダブルミーニングと英梨々エンドの可能性冴えない彼女の育てかた考察 WHITE ALBUM2との比較からで書いたように、この作品は最終的に倫也、加藤、英梨々の三角関係になるのではないかというのが持論である。7巻のシリアス展開は突き詰めると、倫也が英梨々と加藤のどちらを選ぶのかという話なわけで。結局のところ、倫也は英梨々に裏切られるんだけど。再び三角関係に突入するのであれば、11巻のラストは最後の分岐点だろう。11巻は何かと加藤が英梨々を気にする描写が多かった。

「だって……今のわたしたち、ちょっと、彼女には見られたくないなって」

「だって、何だか、言い訳しにくくって……」

一泊二日の修復で仲直りを果たした加藤と英梨々だが、今回の加藤は何というか完全に抜け駆けだった。加藤が英梨々に後ろめたいという気持ちを抱くのも当然だと思う。英梨々に知られてしまったのか、加藤から英梨々に話したのか分からないが、英梨々に絡む問題で加藤がデートに行けなくなってしまったという展開は有り得そう。ただし、この展開は間違いなく英梨々にヘイトが向かうのが難点。そもそも誕生日に加藤が倫也とデートするくらいは英梨々も普通に許しそうな気がする。

英梨々関係で他に有り得るのは、英梨々が再び倒れて倫也が英梨々の元に向かうという展開。フィールズクロニクルの素材提出期限が9月末で死にそうになっているという話が出ていたので、時期的に英梨々が倒れるという展開は有り得ないこともない。ただし、この展開は6巻そのままだし、英梨々が相変わらず成長していないという話にもなりかねない。そして、この展開もやはり英梨々にヘイトが向かうのが難点。というか、キャラクター人気的に英梨々との三角関係に持ち込むのは現実的に難しいかもしれない。

そして最終的に行き着いたのは、作品の根幹にも関わる加藤自身の問題という展開である。今までにない加藤恵という新しいタイプのヒロイン、その魅力を描くことが丸戸史明の本作における一番の目的だと思うが、どうして加藤がこのようなキャラクターになったのかという点について、いわば作品の根幹といえる点については今まで明らかにされてこなかった。彼女が元々フラットな性格をしていて、付き合いが人並み外れて良く、容姿の割に目立たない人物なのだと言えばそれまでだが、それだけで説明できるキャラクターではないように思われるのだ。加藤はなぜ最初から付き合いが良かったのか、なぜサークル活動に没頭していったのか、なぜメインヒロインを目指したのか、なぜ倫也を好きになったのか。

加藤恵の謎を考えて思い至ったのは、彼女が家庭環境に何らかの問題を抱えているのではないかということだ。家庭環境は人格形成に重要な影響を及ぼす要素の一つである。特殊な家庭の事情が彼女の無個性という個性をつくりあげたのではないか。このように考えたのは加藤の家族があまりにも彼女に対して無関心というか不干渉のように思えるからだ。週末になれば倫也の家に入り浸り、平気で外泊してくるにも関わらず加藤を咎めるような気配がない。特に驚いたのは1巻で加藤が家族旅行をすっぽかして倫也のためにメインヒロインを演じたシーンである。このとき加藤は北海道に一週間の家族旅行に来ていたが、その旅行は結婚を予定する加藤の姉が発案した最後の家族旅行であった。あまりにも家族の優先度が低いので、ひょっとして加藤は家族と不仲なのかと疑ってしまうのも無理はない。実際に倫也も同じ発想に至っている。

玄関口で普通に母娘仲良く会話してた!家庭崩壊してなかった!(8巻 P.198)

8巻で加藤の家に立ち寄るシーンの倫也。加藤の家が家庭崩壊しているんじゃないかと冗談半分で少し疑っていた倫也が安心する場面。しかし、娘が朝帰りしてきたのに、しかも帰ってすぐまた出かけるというのに笑顔で見送る母親には違和感を覚える。このような母娘関係に至った背景は分からないが、加藤は家族との間に何となく距離感があるように思える。加藤が家庭環境に問題を抱えているとすると、先に述べた加藤に関する謎も理解できてくる。11巻において倫也は、とてもとても共依存という単語が頭をよぎった、と加藤を評しているが、まさにその通りなのだと思う。これまで倫也は加藤を付き合いの良い女子だと思っていたが、その実態は果たして…。

「ところで加藤、お前さ、あの時どうして朝早くからにあんなとこにいたんだ?お前んちから全然遠いだろ?」

「さあ、もう覚えてないけど……」

8巻において最初に出会ったときのことを話す倫也と加藤のシーン。この物語の始まりにして、最も重要な出会いのイベント。加藤は覚えていないと軽く流したが、新聞配達の時間に自宅から離れた住宅街をオシャレして歩いているというのは、どう考えても特別な用事があったからだろう。それを覚えていないというのは嘘であり、加藤があの時間にあの場所にいたのは何か大きな理由があったのではないか。その理由こそ加藤恵の謎を解き明かす重要な鍵となるのではないか。繰り返し登場している最初のシーンが物語の根幹につながる重要なフラグだったというのは実に丸戸史明らしいと思う。

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